しゅがー
手術室5年目のオペナース。左側頭葉神経膠腫(グレード3)の治療中。2021年11月に覚醒下開頭腫瘍摘出術を受けました。術後、職場復帰を目指して失語症のリハビリ中です。
インスタグラム @sugar.openurse


「突然なんですが、MRIを撮ったら脳腫瘍が見つかりました。入院して手術になるので、しばらくお休みをいただきます」

勤務先の朝のミーティングで休職の挨拶をしました。私の頭のなかでは、“しばらく”は、2~3カ月くらいだと思っていました。手術が終わったら、普段通りの生活が戻ってくる! スタッフには「手術が終わったらすぐ帰ってきますね!」と冗談交じりに伝えていました。

手術から約1年半が経過、いまだに手術室に職場復帰ができていません。1年間の抗がん剤治療や、失語症へのリハビリ、復帰への道のりがこんなにも厳しいなんて知りませんでした。「今もちゃんと喋れてるよ! リハビリを続けたら、きっともっと良くなるよ! 大丈夫!」そんな優しい言葉も、鼓舞する言葉も、今はすべて焦る要因の一つになってしまいました。

もしかしたら手術を受ける患者さんの気持ちって、そうなのかもしれません。「この手術が終わったら、普段通りの生活が戻ってくる! がんばろう!」「次は放射線治療と抗がん剤……でも、これを乗り越えたら、いつものおいしいご飯が食べられる! がんばろう!」「髪の毛が抜けた……でも、治療をがんばったらまた生えてくる! がんばろう!」「次はリハビリかぁ……でも、続けたらきっと良くなるからがんばろう!」次から次へと“がんばらなくてはいけないもの”が増えていきます。一つ一つが重すぎて、積み重ねると心も身体もぺちゃんこになってしまいそうです。手術を受ける患者さんは疾患や病状が重くとも軽くとも、そんな気持ちがあるのではないかと思いました。

もし、私がオペナースとして職場復帰できたらこう伝えたいです。

「一緒に私たちが支えるからね。安心してね」



オペナースしゅがーの脳腫瘍日記#012

現在も失語症のリハビリ中です。少しずつですが改善していることが実感できて、だんだん喋るのが楽しくなってきました。100%じゃなくても、スタッフからのフォローがあれば職場復帰できるのではないかとアドバイスをいただき、相談中です。

本連載は今回が最終回です。
これまでのバックナンバーは
こちらからご覧ください。



本コラムは『OPE NURSING(オペナーシング)』2023年8月号からの再掲載です。



OPE NURSING(オペナーシング)2023年8月号
[特集]
患者さんの見逃せない情報に最短でたどり着く!
エキスパートオペナースが教える
術前訪問 時短テク集


■1 術前訪問にはこんないいことがある!
■2 事前の情報収集 ―見逃せないポイントを素早く見つける①

①既往歴/②内服薬/③麻酔のリスク
■3 事前の情報収集 ―見逃せないポイントを素早く見つける②
①アレルギー情報/②手術体位確保に関する情報/③褥瘡リスク/④日常生活(運動、喫煙歴、飲酒歴)/⑤認知機能
■4 患者さんとの関わり方のポイント ―短時間で距離を縮める
■5 収集した情報のまとめ方・伝え方 ―漏れなく簡潔に行うには?
■6 私のメモ帳


▼詳しくはこちらから