第一線で活躍する医師や看護師、医療従事者などが講師として登場し、わかりやすく解説する「メディカのセミナー」。そのセミナーのプログラムのうちチャプター①をメディカLIBRARYだけで特別配信します。

※上部のサムネイルをクリックして視聴できます。
※視聴にはメディカIDが必要です。メディカIDをお持ちの方はログインしてそのままご視聴ください。




講師:菊田健一郎
福井大学医学部脳神経外科学 教授
2013年より、メディカの会場セミナーで全国で講義を続ける人気講師。日常生活の身近なものに例える解説、実際の手術動画による解説が受講生に好評です。


<菊田先生からのメッセージ>
脳外科病棟に勤務しているスタッフナースから最も希望の多かった5つのケース(疾患)をテーマとして取り上げました。講義は、具体例を挙げて症例別に見ていきます。最初に、その疾患の治療においてトラブルを生じていない、正常の経過を提示します。次いで、トラブルが生じた症例について提示し、そのトラブルがなぜ生じたのか?どうしたら避けられたのか?ナースは何を観察しておくべきであったのか?を反省します。最後に、その疾患についての観察ポイントを復習する形にして各テーマをまとめます。配付するセミナーテキストは、みなさまの臨床現場ですぐに役立つモノ(充実の約150ページ)になるよう工夫しました。


配信|CHAPTER 1:ケース1「慢性硬膜下血腫」


ではケース1の「慢性硬膜下血腫」についてお話していきたいと思います。

本日の講義の内容です。

脳外術後の正常経過と異常発見-1

まず最初に、慢性硬膜下血腫の治療法と正常経過について説明します。症例はこちらです。

脳外術後の正常経過と異常発見-2

心臓の弁膜症で弁置換の手術を受けておられて、心房細動があるためワーファリンを飲んでいます。INRが1.2です。INRの正常値は通常は2~3にのばしますね。しかしこの方は高齢ですか普通は1.7くらいまででいいのですが、少し弱めのコントロールになっています。

入院時の現症はこちらです。意識レベルはジャパンコーマスケール(JCS)が3で見当識がある状態です。

脳外術後の正常経過と異常発見-3

そしてMMSEが15点、HDS-Rが18点ですが、これらはみなさんご存じでしょうか? MMSE、HDS-Rというのは認知症のスケールでして、必ず知っておかなければなりません。

左の片麻痺があります。CTをよく見ますと、右のところに三日月型のたまったものがありますが、これが慢性硬膜下血腫とよばれるものです。

脳外術後の正常経過と異常発見-4

慢性硬膜下血腫の症状とは何か?ということですが、よく認知症がメインのように言われるのですが、実はいちばん大事なのは歩行障害です。

歩行障害がなくて認知症だけの場合は、もしかしたらアルツハイマー病を合併している可能性があります。

そしていちばん目立たないのが尿失禁で、これが3大症状です。

脳外術後の正常経過と異常発見-5

それでは、慢性硬膜下血腫に対する手術、穿頭血腫洗浄術プラス血腫腔ドレナージという標準的な術式について説明していきます。

まず、切開する場所は、今回は右ですが側頭部です。頭の横のいちばん出っ張っている部分、ここに一カ所穿頭します。3cmくらいの皮膚切開が必要ですので、この部分だけバリカンで剃毛しています。そして鎮静をするのですが、基本的には部分麻酔です。

脳外術後の正常経過と異常発見-6

続いて布掛けをします。布掛けをすると患者さんがどのような状態になっているわからないため、布を掛ける前に患者さんの態勢をよく見ておくことが大事です。

脳外術後の正常経過と異常発見-7

そして1%入りキシロカイン、これは止血剤ですが、これで局所麻酔をします。このとき、患者さんは痛いですので動く可能性がありますので、事前に「痛いですよ」とということを説明します。

脳外術後の正常経過と異常発見-8

局所麻酔の後、3cmほどの場所を切開します。切開して、開創器を入れると頭蓋骨が見えます。

手回しドリルというものでここの穴を一カ所あけます。このとき患者さんが動くと危ないですので、助手は頭を押さえて、術者が穿頭します。

先ほども言いましたが、局所麻酔で患者さんに意識がありますので、「ちょっと頭がごりごりしますよ」と説明します。

脳外術後の正常経過と異常発見-9

ここから先も術式の説明が続いていきますが、続きはぜひログインして上の動画でご覧ください。



プログラム


<ケース1> 慢性硬膜下血腫
●慢性硬膜下血腫の正常経過、手術の流れも知っておこう!
●慢性硬膜下出血の術後再発がおきやすいケースと反対側血腫
●術後よくなるどころか麻痺、失語の悪化~どうして?
●再発を繰り返すと思っていたら高熱が出てきた~どうして?
●意識レベルが低い慢性硬膜下血腫~急性増悪はとてもコワイ!

<ケース2> 脳出血
●被殻出血の手術と正常経過~どんな症状が残って、なにが治るの?
●小脳出血の手術と正常経過~失調とはどんな症状なの?
●若年者の被殻出血~血圧が下がらず低カリウム、何かおかしい?
●手術中に大出血~若年者の皮質下出血がキケンなワケ!
●高齢者の皮質下出血~いったい何回出血するのか?「血腫残酷物語」

<ケース3> くも膜下出血
●くも膜下出血クリッピング術の正常経過、ドレーン管理、脳槽灌流
●重症くも膜下出血でなにをすべきか? 脳血管攣縮への対応とは?
●正常圧水頭症に対するシャント術~シャンタブルってどんな状態?
●コイル塞栓術の正常経過、術後管理~コイルってやっぱり予後がいい?
●コイル塞栓失敗例とは?

<ケース4> 脳梗塞
●ラクナ梗塞の正常経過と合併症とは?
●アテローム血栓性脳梗塞と脳血管バイパス術~正常経過と合併症
●心原性脳塞栓はノックアウト病、t-PAの適応、NIHSSを覚えよう!
●メルシーとペナンブラ~血管内治療の正常経過とは?
●BADって何?~入院しているのにどうして悪くなるんだ!と怒鳴られないために

<ケース5> 頸動脈狭窄症
●頸動脈狭窄症による脳梗塞~A to A ってなぁに?
●CEAの正常経過と合併症~鼻出血、頸部腫脹、嚥下障害
●CEAの術後急に片麻痺がおこってきた、なにがおこっているのか?
●CASの正常経過と合併症~脳塞栓、低血圧
●術前に何度も一過性の脱力がおこってきた、早く外科治療すべきなのか?




講師・菊田健一郎先生の本


Dr.菊田のキラリと見逃さない!脳外術後の正常経過と異常発見

メディカのセミナー濃縮ライブシリーズ
Dr.菊田のキラリと見逃さない!脳外術後の正常経過と異常発見
難しい術後のケアポイントがきっちりおさえられる!
大人気看護セミナーのエッセンスを凝縮!「何か変」に気づくためのポイントが話し言葉でスッと入ってくる!

事例ベースで術後ケアのポイントが学べる!

本書は「術後の正常経過と異常」として事例ベースで脳神経外科ナースが絶対に知っておきたいポイントを術後の内容に絞って解説。脳神経外科ナースがかかわる頻度の高い主要5疾患を取り上げ、「何か変」に気づくための観察・アセスメント力UPに必須の知識をわかりやすく紹介する。

3,520円(税込)
発行:2023年2月
サイズ:A5判 200頁
ISBN-13:978-4-8404-8139-7