第一線で活躍する医師や看護師、医療従事者などが講師として登場し、わかりやすく解説する「メディカのセミナー」。そのセミナーのプログラムのうちチャプターの1つをメディカLIBRARYだけで特別配信します。

※上部のサムネイルをクリックして視聴できます。
※視聴にはメディカIDが必要です。メディカIDをお持ちの方はログインしてそのままご視聴ください。




講師
讃岐美智義
独立行政法人国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター 中央手術部長・麻酔科科長

<セミナーを受講するとこんなことが学べます>
◆おさえておくべき手術操作と麻酔の影響
◆術後の観察ポイントを知り、急変に気づけるようになる!
◆申し送りや引き継ぎのときに必ず確認してほしいこと


配信|CHAPTER 4:要点4 意識レベルと区域麻酔効果の評価


では要点4の「意識レベルと区域麻酔効果の評価」です。

麻酔薬・筋弛緩薬の残存は?ということですが、意識レベルが低いということは、麻酔薬や筋弛緩薬が残っていたりして患者さんの反応が悪いということです。

術後全身管理10の要点01


次のスライドのように抜管の条件というものがあります。

④の「筋力が十分に回復」ですが、筋弛緩薬を使ったときは必ず筋弛緩モニターでTOF比が0.9よりも回復しているかを確かめなければなりません。これがきちんとできていれば筋弛緩薬に関しては通常は大丈夫です。

⑤の「肺容量」は、肺活量が十分あることを確認して抜管しなければなりません。息が小さいのに抜管してはいけません。

術後全身管理10の要点02


筋弛緩モニターですが、4回刺激して何回反応が出るかということと、1回目の反応に対する4回目の反応の高さの割合であるTOF%が90%を超えている必要があります

術後全身管理10の要点03


抜管時には、次のスライドのように、4回刺激して4回反応が出て、さらにTOF%が90%を超えている必要があるわけですが、一つ前のスライドではTOF%が34%と表示されており、これでは抜管はできません。

患者さんを覚醒させる前に筋弛緩を拮抗するということが大切です。

術後全身管理10の要点04


次のスライドにはいろいろ書いてあるのですが、「1回換気量正常」だと受容体占拠率が80%というのは、80%の受容体が筋弛緩薬で埋まっていても目を開けたり呼吸できるということです。

このなかでいちばん厳しい条件である「筋弛緩モニターでTOF比>0.9」だと、受容体占拠率が70~75%以下くらいまで下がれば筋力が保たれるということになります。

術後全身管理10の要点05


ここまで説明したことを観察していくときに、患者さんが眠いといった状態もあると思いますが、観察のときは声をかけてください。見て、聞いて、感じてはできていることが多いですが、声をかけるということができていない場合があるので、声をかけて、どんな反応が返ってくるのか、反応が返ってこないのか、確かめることが大事です。

術後全身管理10の要点06


次のスライドは患者さんの悪くなった状態をみるときの説明ですが、まず「脳機能」のところを見てください。

患者さんの視線が定まらない、興奮している、無関心であるということがありますが、これはせん妄の可能性がありますね。そういうことも含めて、声をかけたときにどうなるのか、患者さん自身が何もしないときにどういう状態なのかということをきちんと観察してください

術後全身管理10の要点07


続いて「覚醒遅延(意識レベル低下)」ですが、ここまで何度も出てきていますが麻酔・筋弛緩作用の残存、または麻酔薬は切れているけど術後鎮痛薬の過量投与になっているといったこともあります。

また一生懸命に換気した後、過換気後は「はぁ~」といった感じでボーっとなっている可能性もあります。

循環不全というのは、しっかり血が巡っていないと頭に血が行かないので低血圧とか、心不全のある患者さんも意識レベルが下がっている可能性があります。

そして、他の要因はすべて解決されたんだけど危険だというときには頭蓋内疾患を考えます。例えば脳出血を起こしていたり、術中に脳梗塞を起こした可能性があるので、専門医に相談する必要はありますが、手術室から出る前にCTを撮影することも必要です。

たとえ脳梗塞でもCTを撮影してすぐには出てこなくて12時間後に出てくるといったこともあるので、原因がすべて解決されていたらCTを撮影しておく必要があります

術後全身管理10の要点08


次は「興奮状態」についてですが、いちばん多いのは低酸素です。

また膀胱内に尿が溜まっていたり、尿道カテーテルがうまく入っていなかったり、尿がうまく出ていない状態だと患者さんは暴れますし、尿道カテーテルが嫌で暴れていることもあります。

また、痛いから暴れるということもありますし、不自然な術後体位にしていると患者さんが我慢できなくなって暴れるということもあります。

こうした原因に一つずつ対応していく必要があります

低酸素に対しては必ず酸素吸入が必要ですし、膀胱内尿蓄積に対しては導尿が必要です。

術後全身管理10の要点09


そしてもう一つ、「局所麻酔薬中毒」について説明をしたいと思います……



ログインして動画でご覧いただくと、「局所麻酔薬中毒」の解説まで視聴することができます。また、ご購入いただくと本セミナーで取り上げる要因①~⑩のすべての解説と質問コーナーや講義のまとめまでご覧いただけますのでぜひご検討ください。

術後全身管理10の要点00







プログラム

■要点 1 アルドレートスコアとバイタルサイン
「改変アルドレートスコアってなんじゃ?」と思った方、これは術後患者管理に必須知識です! 意識レベル、身体活動、血行動態、呼吸状態、酸素飽和度に、プラス疼痛と嘔気の7項目で手術室での患者さんの最終状態をざっくり評価します。何が減点されていたか? それが術後の観察項目になります。
◇申し送りの第一歩はアルドレートスコア
◇バイタルサインを忘れずに
◇なにを聞き出す? なにが大事?
◇必ず確認しておきたいこと

■要点 2 低酸素・低血圧
術後の低酸素・低血圧は放置してはいけません! 低酸素・低血圧が起きたとき、その原因が頭の中にいくつ思い浮かびますか? いつ頃どんなことが起こりやすいか知っていますか? 原因と対応を整理します。
◇見逃してない?
◇原因は?
◇モニターからどう気づく?
◇バイタルサインとフィジカルアセスメントも重要

■要点 3 気道閉塞・呼吸状態
声門下浮腫・気道狭窄の原因はわかりますか? 遷延性無呼吸・呼吸抑制の原因はわかりますか? 気管挿管困難・マスク換気困難のリスクが高い症例をまとめます。
◇変化に気づいていますか?
◇挿管・抜管時に問題はなかった?
◇呼吸には落とし穴がいっぱい

■要点 4 意識レベルと区域麻酔効果の評価
「見て、聞いて、感じて」はよくできていますが、「声をかける」までできていますか? どんな反応がかえって来るのか、あるいはかえって来ないのか、確かめることが大事です! 覚醒遅延の原因や、興奮状態の原因・対策についても解説します。
◇麻酔薬、筋弛緩の残存は?
◇反応が鈍いのは眠いだけ?
◇意識レベルの評価は?
◇区域麻酔の残存は?

■要点 5 四肢の動き・痛みと体表の観察
術中、患者さんの体位変換、ベッド移動時に注意が必要な点とその理由を解説します。また、手術体位ごとにどんなことに注意が必要かまとめます。わたしたちの観察で患者さんを守ります!
◇四肢末梢はチェックしてる? 何がわかる?
◇術中体位は? 何の手術?
◇発汗・発熱は? 何が起きてる?

■要点 6 輸液・輸血(インアウトバランス)と術後出血
輸液が多すぎれば(wet)縫合不全や心不全・呼吸不全を引き起こします。一方、輸液が少ないと(dry)術後の悪心・嘔吐、心筋虚血、腎不全の原因になったりします。適切なインアウトバランス管理について考えます。術後出血・術後無尿の原因・対策についても解説します。
◇イン・オーバーになってない?
◇術後への影響は?
◇術中の出血量は?
◇輸血量はどうみる?
◇ドレーンからの情報だけでいい?
◇バイタルサインが大切(血圧・脈拍・尿量や色)

■要点 7 低体温と高体温
麻酔がかかっている患者さんは、自分で体温を上げる能力がないため、外から熱を加えないと危険です。では、どういう方法で加温するのがよいでしょうか? 温風加温装置の注意点・正しい使い方も覚えておきましょう。
◇患者さんが寒いことに気づかない? なんで?
◇体温のセットポイントを理解しよう! ◇体温は、どこの温度か? 1点だけでいいのか?
◇高体温は何を考える? 対応は?

■要点 8 シバリング
しっかりと体温を戻さず、覚醒させるとシバリングの危険があります。また侵襲の大きい術後は炎症性サイトカインにより体温のセットポイントが上昇します。末梢温と中枢温の温度格差をなくす努力が必要です!
◇原因はなに?
◇予防できるの?
◇対応方法は酸素投与だけでいい?

■要点 9 術後痛
術後鎮痛がうまくいかないと、離床が遅れます。離床が遅れると。さまざまな合併症が出てきます。しっかり痛みをとってあげて、早く離床できるように痛みをコントロールしましょう。術後鎮痛の薬剤について使用上の特長、注意点も解説します。
◇痛がる患者さん、どう対応する?
◇PCAと術後鎮痛の薬剤
◇疼痛評価法
◇意識レベルの低下や呼吸抑制に要注意!

■要点 10 悪心・嘔吐
PONVがあると飲めない、食べられない…どんどん身体が弱っていき、早期離床とは程遠い状態になります。PONVは手術の種類でもおきますし、患者さんが元からもっている素因でおきるとも言われています。PONV対策について勉強します。
◇4つの因子から起こることを予想しておこう! 酸素不足もPONVの原因?
◇PONVはいつおきる?

■質問コーナー/講義のまとめ
・術後の眠気が夜まで持続しているときは、どう考えればいいのでしょうか?
・帰室後、何時間以上だと覚醒遅延と評価になりますか?

講師が執筆された書籍の紹介


術中・術後合併症 実践マスター

オペナーシング2023年春季増刊
あした担当する患者さんに備える!

術中・術後合併症 実践マスター
全70症例で対応をイメージできる!/イラストでしくみがわかる!/術前の情報収集のヒントになる!


2023年3月
B5判 296頁
4,400円(税込)
ISBN: 978-4-8404-7948-6
▼詳しくはこちらから


ねころんで読める周術期管理のすべて
やさしい周術期入門
ねころんで読める周術期管理のすべて
ナースと多職種でおさえる術前・術中・術後のキホン


発行:2023年7月
A5判 152頁
2,200円(税込)
ISBN:978-4-8404-8188-5
▼詳しくはこちらから