# 心カテ中、何に気をつければいいかわからない
# 心カテ前の患者さまを安心させたい
# 患者さまからの心カテについての質問に答えられない
# この患者さまはカテ室でどのようなことをされてきたのか?
# カテ終わり 術後合併症?!
みなさんこんにちは!
今回も前回に引き続き冠動脈造影(CAG:coronary angiography)で冠動脈を見るコツについてお話しさせていただこうと思います。
今回のお話にお付き合いいただくと、
・カテスタッフから病棟スタッフへ冠動脈造影の結果を申し送るべきこと。
・申し送り受けた病棟スタッフであれば、カテスタッフが何を伝えたいのか。
・施行医が治療する必要があるかどうか悩んでいる理由。
・冠動脈造影の注目すべきポイント。
などがわかることを目標に下記の順にお話を進めていきたいと思います。
「冠動脈造影ココがポイント!1・2・3」
1.よく見えるビュー(角度)を探せ!(前回の#028参照)
2.3本の冠動脈どれが大きくてどれが小さい?(今回はコチラ!)
3.狭窄の度合いはどれくらい?
おまけ:冠動脈の特徴を見極めろ!
・糖尿病患者さんの冠動脈
・透析患者さんの冠動脈
・痙攣する冠動脈
冠動脈造影ココがポイント2「3本の冠動脈どれが大きくてどれが小さい?」
3本の冠動脈の大きさは人それぞれ。右冠動脈が大きい人もいれば左冠動脈回旋枝が大きい人もいる。ラグビーボールの形をした心臓を360°ぐるりと一周余すところなく、いずれかの冠動脈が心筋を養います(#004「心臓を栄養する冠動脈~小ネタを挟みながら~」参照)。どの血管が大きくて、どの血管が小さいのか? それってとても重要なことなんです。
みなさんは「ここに狭窄があるのになぜPCIしないんだろう?」とか、「この狭窄はあっちより大したことないのに、なぜこっちの狭窄をPCIするんだろう?」なんて思ったことありませんか? それは冠動脈の大きさ(栄養範囲)が関係していることが多いんです。
では、具体的にはどのようなシチュエーションが考えられるのか?
冠動脈と回旋枝の場合
右冠動脈の末梢側と回旋枝の末梢側は、心臓の下側である「下壁」を栄養します。実際に下壁と呼ばれる一部分は、右冠動脈が栄養している場合もあれば、回旋枝が栄養している場合もあります。これは、それぞれの冠動脈の大きさによって異なります。
例えば、右冠動脈と回旋枝にそれぞれ同じような狭窄があったとします。右冠動脈が小さく回旋枝が大きい場合、下壁まで末梢が伸びているのは回旋枝になります。それぞれにある狭窄は回旋枝にある狭窄のほうが影響力が大きいと言えます。そのためPCIは回旋枝から行うということになります。どちらからPCIするかはその大きさによって変わるのです。
これは私たちの仕事にも大きく関わってきます。カテスタッフはバイタルサインモニターのモニタリングはとても重要な仕事の一つです。バイタルサインモニターのなかには心電図変化・血圧の変動などがあります。PCI中にバイタルが変動するかどうか? これはいまPCIを行なっている冠動脈の栄養範囲にも関わってきます(図)。
先ほどお話しした右冠動脈・回旋枝のどちらが大きいか問題で考えると、右冠動脈が閉塞して虚血になると心電図はⅡ・Ⅲ・aVF誘導が変化するってよくいいますよね(#013「大変です!ACSかも!!~占い師か? 予言者か? それともクイズ王?~」参照)。でも回旋枝が大きくて下璧を回旋枝が栄養していれば、その部分がPCIの風船によって閉塞させると、心電図Ⅱ・Ⅲ・aVF誘導でSTが下がったり上がったりするのです。PCIの前に右冠動脈・回旋枝どちらが大きいかCAGで確認しておかなくてはなりませんね。
前下行枝の場合
もう一つ。前下行枝のPCIの際には心電図変化などが比較的起きやすいです。これはもともと前下行枝の栄養範囲が大きいことから影響を受けやすいのですが、前下行枝の中枢側(根本)を治療するのか末梢側を治療しているのかによって変わってきます。中枢側を風船で膨らませると虚血になる範囲は広くなるので、心電図変化を受けやすくなり、場合によっては血圧低下などを起こすような虚血が起こることがあります。よりモニタリングに注目しなくてはなりませんね。
これも、前下行枝が大きいのか? 小さいのか? 前下行枝から出ている側枝が大きいのか? 小さいのか? また、大きな側枝の手前(中枢側:proximal)なのか? 奥(末梢側:distal)なのか? いろんな要因によって変わってきます。
やっぱりPCIの前にはCAGをよく確認しておかなくてはなりませんね。
モニタリングの観点からも、冠動脈の大きさっていうのは大切なんです。っていうお話を今回はさせていただきました。みなさんも改めてCAGをじっくり見てみましょう!
今回もお付き合いありがとうございました。
新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人
メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。