この連載は、英語の先生でも医師でもない、看護業務を知り尽くした現役看護師が医療現場で本当に使える英会話を紹介します。
検温、点滴、清拭、おむつ交換など医療現場で頻度の高い看護業務に焦点を当て、使えるフレーズを丁寧に解説します。
【看護師の看護師による看護師のための英会話:Episode3】は、「検温:脈拍編」です。
今日は外国人患者さんを受け持っています。
日本人の受け持ち患者さんの検温を終え、残るは外国人患者さんの検温です。
こんな普段の会話を英語にしてみましょう。
(血圧を測り終わったあと)
①「脈を測りますね」
②「手首で脈を測りますね」
③「脈は62回です。問題ないですよ」
Knock, knock.
①Let me take your pulse.
②Can I place my fingers on your wrist to check your pulse?
③Your pulse is 62. It is normal.
今日は、検温で使えるフレーズ②【脈拍編】「手首で脈を測りますね」を深掘り解説します。
医療現場では、状況に応じて患者さんの手首に直接触れて脈の実測を行います。その際、黙って患者さんの手首に触れて脈を測り始めるのは、ちょっと気まずいですよね。
そんなときに、さらっとこのフレーズが言えると脈の実測がしやすくなります。
「手首で脈を測りますね」は、「can I place my fingers on your wrist to check your pulse?」を使いました。
「can I~」は、「~してもいいかな?」という少しカジュアルな表現です。
日本語の語尾に使われる「~かな?」の感じに似ています。
もっと丁寧な言い方がふさわしい場面には、「~させていただけますか?」という意味の「Could I~」や「May I~」に置き換えましょう。
次に、「どうやって」という方法を伝えます。
「place my fingers on your wrist」は、「(私の)指を(あなたの)手首に置く」という意味です。
「だれの」という所有格を忘れないようにしましょう。
「place」は、動詞として使うと「~を置く」という意味です。
「place」は、「put」に置き換えてもいいでしょう。
脈を測るときは、人差し指・中指・薬指の3本を平行にそろえて置きながら測るので「fingers」と複数形にしています。
指を手首に置く目的は、脈を測るためなので「to check your pulse」を最後に加えました。
さて、“「手首で脈を測りますね」と言うだけなのに、どうして指のことまで伝えないといけないの?”と思いませんでしたか?
日本人は「手首で脈を測る」と言われたら、脈の触れるところに指を置いて実測することをイメージできます。だから、いちいち手順を説明しなくてもいいたいことが伝わります。
一方、外国の患者さんは「言わなくてもわかるよね」「イメージできるよね」という感覚はあまり通用しないケースが多いです。
「どうやって手首で脈を測るのか」という実測の手順は、省略せずに伝えたほうがいいでしょう。
ちなみに、こうしたコミュニケーションの文化的な違いを、「ハイコンテクスト文化」と「ローコンテクスト文化」といいます。
「ハイコンテクスト文化」とは、場の空気を読んだり相手の気持ちを察したり言わなくてもわかることを推奨する文化です。
「ローテクスト文化」は、すべて言葉にしないと伝わらず、ことばの通りに相手に伝わる文化です。
日本は世界一ハイテクストな国と言われています。
裏を返すと、日本人にとって外国の患者さんはすべてローコンテクストな側面を持っています。
外国の患者さんは、日本人の患者さんよりもより詳しく言葉で説明する必要が文化的にあることを覚えておくといいでしょう。
いかがでしたか?
次回は、脈の値を伝えてみましょう。
では、Let’s wrap it up for today. Have a good one. (今日はこのへんで、またね~)
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