こんにちは!
ポータブル吸引器の選びかたの2回目です。

小児在宅医療の人工呼吸管理には、ポータブル吸引器がとても重要ということを第1回目でお話しさせていただきました。
今回は、吸引圧について説明しましょう。

みなさんの施設では子どもの気管吸引の際、どのくらいの吸引圧に設定していますか?
そして、その圧を設定している理由を知っているでしょうか?

まず、吸引圧という単位について理解しておきましょう。



吸引圧の単位は、kPa(キロパスカル)を使用します。
そして、吸引とは吸い上げる力(陰圧)なので、-(マイナス)〇〇kPaと表現するのが正しいのですが、医療系の書物には-(マイナス)を省いてしまっていることが増えているように感じています。

新生児蘇生法のテキストやヘルパーさんが吸引できるようになるための研修(第三号研修の喀痰吸引等指導者マニュアル)には、-(マイナス)がついていません。
でも、このメディカライブラリーの連載では、正確な-(マイナス)をつけて書かせていただきます。

では、-20kPaと-50kPaでは、どちらの吸引圧が“低い”のでしょうか?

-20kPaと答える方が多いのではと思いますが・・・
では、気温が-20℃と-50℃だったらどうでしょう?
-50℃のほうが“低い”と答える方がほとんどではないでしょうか?

吸引圧の単位も気温と同じで、-50kPaのほうが吸引圧は“低い”のです
そして、ややこしいのが、吸引力としては“強い”ことになります
逆に、-20kPaは“高い”吸引圧で、“弱い”吸引力を指します

もし、あなたが「吸引圧、上げて~」と言われて、-20kPaから-30kPaに変更したら、これは吸引圧を“低く”していることになります。

ちょっと、ややこしい話をしてしまったかもしれません。
単位って難しいですね!

では、-10kPaってどのくらいの力を持っているのでしょうか?
これは水を約1m吸い上げる力になります。

ということは、-20kPaでは、水を約2m吸い上げることになります。
分泌物は水よりもドロドロしているので水ほどは吸い上げられませんが、分泌物がサラサラしているほうが吸引しやすいですから、分泌物の状態をいかに柔らかく管理することが大事になるかがわかりますね。



では、ここからやっと本題に入ります(長い前置き、すみません)。

子どもの気管吸引の安全吸引圧は、
新生児が-8~-10kPa
小児が-10~16kPa
とされています。

この吸引圧が決められている理由としては、小さい子どもほど気管粘膜が弱く、傷つきやすいからです。
気管吸引チューブが気管に張り付いてしまうと、気管粘膜を傷つけてしまうので“弱い”吸引力に決められているのです。

新生児蘇生法では-10~-13kPaと決められています。
第三号研修の喀痰吸引等指導者マニュアルでは-20~-26kPaと決められています。
(上記の2つともテキストには-〈マイナス〉は書かれていません)

病院では、大体このくらいの吸引圧で使用していて、特に分泌物が引けないという感覚はないと思います。

在宅医療における吸引圧では、第三号研修の喀痰吸引等指導者マニュアルの数値である「ー20kPaで吸引しなさい!」と決められているのですが、この設定をしっかりと守っている学校の看護師さんたちは「引けない、引けない」と困っています
ご家族も学校に行くと、分泌物が引けなくて体調が悪くなると困っています。

そして、ご家族はというと、自宅ではポータブル吸引器の吸引力を一番強くして使っていますという声を多く聞きます。

なぜ、病院の吸引器と同じ程度の吸引圧なのに、在宅の吸引器だと、吸引できないのでしょうか?

次回はこの理由について説明していきたいと思います。

新型コロナ病棟ナース戦記

松井 晃
KIDS CE ADVISORY代表。小児専門病院で35年間働き、出産から新生児、急性期、 慢性期、在宅、ターミナル期すべての子どもに関わった経験をもつ臨床工学技 士。メディカ出版のセミナー講師も務め『完全版 新生児・小児のME機器サポー トブック』などの著書がある。KIDS CE ADVISORYのHPは▶医療コンサルタント | Kids Ce Advisory

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刊行:2022年8月
ISBN:978-4-8404-7888-5

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