みなさん、こんにちは。
今回からのテーマは、吸入療法装置の選びかたについて説明していきます。

吸入療法装置は、一般的な医療機器として発売され、多くの方が使用されている医療機器です。
ネブライザー療法とも呼ばれる治療法で、液剤をエアロゾルと呼ばれる霧状にして気道に噴霧します。

吸入療法は、気管や肺への直接的作用が望めることと、全身に対しての副作用が少ないというメリットがあります。

一般的には喘息治療に対する薬剤投与(抗アレルギー剤やステロイド)に使用されていることが多いのではないでしょうか。
また、気管切開を行っている患者さんや人工呼吸管理を行っている患者さんでは、分泌物管理、排痰目的で使用されることが多いと思います。

●吸入療法には下記のような目的があります。
1.気管の拡張(気管の攣縮を抑える、浮腫を取る)
2.分泌物の排痰効果(加湿、分泌物をやわらかくする、線毛運動を良くする)
3.気管の炎症を抑える(ステロイド投与)

●上記の目的を果たすためにさまざまな吸入療法装置があり、それぞれの装置でエアロゾルの粒子の大きさが違います。
1.ジェット加圧式ネブライザー:1~10μm
2.超音波ネブライザー(卓上型・ハンディ型):1~5μm
3.メッシュ式ネブライザー:2.1μm
4.定量噴霧式吸入器(MDI):3μm(懸濁液)、1μm(液体)



図1に、気道から肺胞に沈着するエアロゾルの大きさを示します。
エアロゾルの大きさが小さいほど肺胞に到達し、沈着しやすくなります。
肺胞に届くほうが効果的だと考える方も多いかと思いますが、どこの部位に効果を発揮させたいかを考えて機種を選ぶ必要があります。
喘息の患者さんの、気道の攣縮を抑えたいと考える場合には、気管や気管支に沈着する機種を選ぶのが良いということになります。
また、エアロゾルが小さい(軽い)と、沈着しないまま吐き出されてしまうこともあります。

図1(文献1より引用改変)


図2に、ジェット加圧式ネブライザーと超音波ネブライザーの沈着率を示します。
ジェット加圧式ネブライザーは、50%が沈着せず大気に排気され、残りの50%が気道から肺胞に沈着しますが、肺胞に沈着するのは1%と非常に少なく、気管や気管支に沈着させる目的で使用される装置であると考えられます。
超音波ネブライザーの沈着率は高く、上気道から気管支、肺胞まで到達、沈着します。
メッシュ式ネブライザーの沈着率は、超音波ネブライザーよりすぐれているといわれています。
また、定量噴霧式吸入器(MDI)の肺胞の沈着率は、懸濁液が10~30%、液体が30~40%といわれています。

図2(文献1より引用改変)



今回は、吸入療法装置を選ぶ上での、基本的な知識について説明しました。
次回は、ジェット加圧式ネブライザーについて説明します。

<参考文献>
1)深澤伸慈ほか.ネブライザー療法 効果と手技の根拠.Expert Nurse.23(3),2007,34-62.



新型コロナ病棟ナース戦記

松井 晃
KIDS CE ADVISORY代表。小児専門病院で35年間働き、出産から新生児、急性期、 慢性期、在宅、ターミナル期すべての子どもに関わった経験をもつ臨床工学技 士。メディカ出版のセミナー講師も務め『完全版 新生児・小児のME機器サポー トブック』などの著書がある。KIDS CE ADVISORYのHPは▶医療コンサルタント | Kids Ce Advisory

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