今回はパルスオキシメータの選びかたの10回目になります。
前回は、在宅医療におけるパルスオキシメータを使用するためのレンタルシステムや助成金、診療報酬などについて説明しました。

今回は、パルスオキシメータの最終回として、在宅医療におけるパルスオキシメータの選びかたをまとめてみます。

小児在宅医療に使用できるパルスオキシメータをどのように選ぶのかについて、9回にわたって説明してきました。
回数を重ねるなかで、どこをゴールにすべきかわからずに、思い付いたテーマで書き進めてきました。
常に、頭に描いていたのは、どのメーカーの何という機種が小児在宅医療にとって最適なのかを伝えることが、皆さんの知りたいところではないかということです。
そして、きっと皆さんが知りたいのは、性能が良くて、警報が作動し、遠くからでも数値が見やすいこと。小型かつ長時間バッテリーで使え、持ち運びに便利なこと。そして、センサーが小児に装着しやすく壊れないこと、継続コストが安価なこと、さらに、本体が安価なパルスオキシメータということになるでしょうか。お風呂でも使えることを考えたら、防水であることを望むこともあるのではないでしょうか。

筆者は、「KIDS Home Care Device研究会」という会を立ち上げて、医療機器製造企業さんを招き、未来の在宅医療機器として望まれていることを医療従事者やご家族からお伝えする機会をつくっています。
研究会の第3回のテーマで、パルスオキシメータを取り上げています。 この研究会の報告を、このメディカLIBRARYにも掲載していますので、ぜひお読みください
※第3回 KIDS Home Care Device研究会が開催されました! PART①PART②PART③

臨床工学技士という立場からでは、小児在宅医療で使用できるパルスオキシメータはと聞かれると、どうしても高額の機種を選んでしまうのです。
きっと皆さんは、高額の機種の紹介を望んではいないのだろうと思いながら、葛藤して連載を続けてきました。
そして、一番伝えたいことは何かというと、「パルスオキシメータは低温やけどを起こす」ということです。
長期間、パルスオキシメータを使用する医療的ケア児が低温やけどを起こさないでほしいという思いが強く、いかにセンサーをゆったりと装着して、血流を妨げないことが大事であることを伝えてきました。
体温コントロールが難しく、循環不良を起こしやすく、手足が冷たくなりやすい医療的ケア児は、低温やけどを起こしやすいです。
センサーをきつく巻きつけることで、人為的に循環不良を起こさせ、低温やけどが起こることもあります。

脈波(指先の動脈波)が小さいと、パルスオキシメータは強い光を出し、脈波を探すことで皮膚温が上昇し低温やけどに繋がることも説明しました
※パルスオキシメータの選びかた その④

また、PI(Perfusion Index:灌流指標)は、表示される値の正確度だけでなく、センサーの装着によって循環不良が起こっていることを示唆できる1つのチェック方法としてお伝えしました
※パルスオキシメータの選びかた その⑥

パルスオキシメータが発する警報は、患者さんが、「早く助けて!」と伝えるための叫びです。
ですから、この叫びを受け止めて、いかに早く対処できるようにするか。パルスオキシメータは在宅医療を安心して継続するための、ただ1つのモニタリング装置なのです。

医療機器に100%のものはありません。
とても役に立つパルスオキシメータですが、使用する者が望むような働きをしてくれないこともあります。
でも、パルスオキシメータの欠点を知り、その欠点を減らしてあげることで、役立つ割合は上がっていきます。
この連載では、欠点ばかりを伝えてきたかもしれませんが、「うまく使いこなす」、これはとても重要なのです。
パルスオキシメータは簡単・便利とばかり考えていると、落とし穴(ピットホール)に落ちることになります。
ぜひ、パルスオキシメータの欠点をしっかりと理解し、使いこなしてほしいと思います。



筆者は、2024年の夏に、日本医療教授システム学会AHA国際トレーニングセンターの講習で、BLS(一次救命処置)のコースを2回開催しました。また、新生児蘇生法のコースにも参加させていただきました。
インストラクターという立場ですが、「この立場をどうやって活かしていったらいいんだろう」といつも考えています。

「おうちに帰ろう」
この言葉を、みんなで共有し、在宅医療を目指します。
「おうちに帰って後悔しないようにしよう」
この言葉も、私はいつも心に思って行動しています。

ご家族が、パルスオキシメータの警報で、心停止していることを発見したとき、うまくできることはないかもしれませんが、一時救命処置を覚えれば、救急車が駆けつけるまで胸骨圧迫を続けられるでしょう。
こんなことを思って、インストラクターの経験を活かしてご家族に一時救命処置の方法を伝えています。
「蘇生の方法を教わっていたら、何かできたのかもしれない」と、ご家族が後から後悔しないように。

「蘇生をしてほしい!」って伝えてくれるのがパルスオキシメータではないかと思います。
繰り返しますが、こんな大事な医療機器ですから、しっかりと欠点を知って、使いこなしてください。

メディカLIBRARYでは、
“小児在宅医療が少しでも良くなるように”
“医療的ケア児がもっと元気にいられるように”
“ご家族がもっともっと楽しくなれるように”
と想いながら、書いています。


今回は、パルスオキシメータの選びかたの最終回として、伝えたいことをまとめてみました。

次回から、新しい在宅医療機器に移りたいと思います。



新型コロナ病棟ナース戦記

松井 晃
KIDS CE ADVISORY代表。小児専門病院で35年間働き、出産から新生児、急性期、 慢性期、在宅、ターミナル期すべての子どもに関わった経験をもつ臨床工学技 士。メディカ出版のセミナー講師も務め『完全版 新生児・小児のME機器サポー トブック』などの著書がある。KIDS CE ADVISORYのHPは▶医療コンサルタント | Kids Ce Advisory

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イラスト:八十田美也子  みや よしえ 浜野史子

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新人・1年生が知っておきたい
新生児・小児の呼吸管理のきほん


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「赤ちゃんの肺の中で酸素がどんなふうに動いているのだろう」「動脈血酸素分圧90mmHgってどういう意味だろう」といった素朴な疑問から、むずかしく思われがちな換気モードやグラフィックモニタまでもカンタンに知ってもらおうというセミナーです。

▼プログラム 【収録時間:約130分】
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#02 なぜ小さな赤ちゃんにとってPEEPが重要なのか?
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#04 換気モードのお話〈後半〉 CPAP・PSV・HFO
#05 フロー波形を見て同調性を極めよう!
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小児在宅人工呼吸療法マニュアル 第2版


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一般社団法人日本呼吸療法医学会 小児在宅人工呼吸検討委員会 編著
岐阜県総合医療センター 新生児内科 寺澤 大祐 監修
神奈川県立こども医療センター 新生児科(非常勤) 松井 晃 監修
神戸百年記念病院 麻酔集中治療部/尾﨑塾 尾﨑 孝平 監修

定価:5,500円(税込)
刊行:2022年8月
ISBN:978-4-8404-7888-5

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