2023年5月に発売される書籍『「感染ってよくわからない」初心者さんに伝える!感染対策“教え方”ブック』の著者・柴谷涼子先生に、感染対策を現場に浸透させるために必要なことや、新型コロナウイルス対応のためさまざまな施設を訪問されたうえで本書を執筆された思いをうかがいました。

柴谷 涼子
公益社団法人 大阪府看護協会 政策・企画・看護開発部 感染対策担当部長(感染管理特定認定看護師)



「教え方ブック」を執筆しようと思われたきっかけは何ですか?

筆者は約2年以上に渡り、感染管理認定看護師という立場で、感染対策支援のために多くの高齢者施設や中小規模病院を訪問させていただきました。特に高齢者施設では、感染対策の専門家どころか医療職が不在の施設が多いなかで、利用者を感染から守るために、職員の方が試行錯誤しながら頑張っておられました。筆者らの訪問に対して、「安心した」といってくださる職員の方々との出会いを通して、感染対策で困ったり悩んだりされている方々のために、もっと広く何かお役に立つことができたらと思うようになり、執筆を決意しました。

感染対策は難しいというイメージがあります。実際はどうですか?

手洗いや個人防護具の着脱方法などは、さほど難しくありません。練習すればできるようになります。保育所の小さい子どもたちでも手洗いは上手にできます。また、細菌やウイルスがヒトからヒトに移っていく道筋(感染経路)は分かっているので、その道筋を遮ることができれば感染症がうつることはありません。感染対策はとてもシンプルなんです。

しかし、そのシンプルな感染対策を職場で浸透させることがとても難しいと実感しています。実際は目に見えない細菌やウイルスを相手にしているので、忙しい仕事の合間に「どこで手袋を着用して、いつ手洗いをすればよいか」など考え始めると頭が混乱してきます。仕事の流れのなかで、自然にできるようになるまでは、現場指導と訓練が必要です。ひとの命を守る職場にいる方々には、「感染対策を一人でも怠れば、そこから自身が感染したり、ほかの人に感染させたりしてしまうかもしれない」「その感染症は、ひとの命さえ奪うかもしれない」という感染症の怖さをまず理解したうえで、感染対策に取り組んでいただくことが必要だと思っています。

新型コロナウイルス対応で、さまざまな施設を訪問されたと聞きました。初心者の方々は苦労されていましたか?

もともと感染対策の基本的な知識をおもちでない方々が多いなかで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策を強いられたため、何をどうすればよいか分からないのは当然だと思います。基本的な感染対策の知識をおもちでない方に「標準予防策」とか「手指衛生」「感染経路」などを語ってもスッと頭には入って来ないでしょう。そのため、分かりやすい表現を使って、医療従事者でない方でも伝わるよう工夫することが必要でした。そして、COVID-19対策を理解する前に、基本的な標準予防策を根付かせることが何より大事だと実感しました。

この本でこだわったポイントはどこですか?

筆者の訪問での経験を生かし、病院や高齢者施設などで遭遇する日常的な疑問や困りごとなどをQ&A形式にしました。感染対策初心者の方でも分かりやすい表現にし、イラストも多く用いています。ご自身の学習に使っていただきたいのはもちろんですが、初心者の方に指導する立場の方々にもぜひ本書をご活用いただきたいと思います。

書籍紹介



「感染ってよくわからない」初心者さんに伝える!感染対策“教え方”ブック

「感染ってよくわからない」初心者さんに伝える!感染対策“教え方”ブック
すぐダウンロードできるイラストと指導ツールが99点!

感染対策に関わった経験が少ない医療スタッフ、清掃・洗濯担当者、事務スタッフetcの指導・研修に使える!

Q&Aなので指導のポイントがすぐわかる!
コロナ禍を経て、ICT、リンクナース、感染係は、知識の少ない医療スタッフ、事務担当者、清掃担当者などに、すぐに実践できる感染対策をわかりやすく伝える必要がある。本書では、高齢者施設や療養型病院などのスタッフに直接指導している著者が、自らの経験をもとに、「いかにわかりやすく伝えるか?」を中心に解説している。すぐに使えるイラストや指導ツールが揃った現場目線の実践書。

発行:2023年6月
サイズ:B5判168頁
価格:4,180円(税込)
ISBN:978-4-8404-8179-3
▼詳しくはこちらから