この書籍の購入・詳細はこちら


渋谷 智恵
公益社団法人 日本看護協会 看護研修学校 認定看護師教育課程 課程長



2024年1月22日に刊行されたインフェクションコントロール2024年春季増刊『写真・イラスト入りチェックシートとQ&A集で分かる!決定版 環境整備ICTマニュアル』(詳しくはこちら)について、編者の渋谷智恵先生にインタビューしました。

Q1.コロナ禍を経て、清掃などの環境整備が注目されています。「コロナ禍前」と「コロナ禍後」で、変わったことは何ですか?

大きな変化として二つあります。一つは、コロナ禍前に比べて介護施設等における感染対策への意識が高まったことです。コロナ禍前はアウトブレイク発生などの理由がない限り、日常的に介護施設に感染管理の専門家が入り助言する機会はありませんでした。施設から求められることも少なかったです。2020年厚生労働省が介護施設と介護事業所の実地研修に感染管理認定看護師など専門家を派遣する事業を開始するなど、当該施設の環境整備をはじめとした感染対策状況について専門家による助言・指導などを行う体制が整い、施設側もそれを利用した改善への意識の高まりを感じます。

もう一つは非接触型環境消毒装置が広く活用されるようになったことです。長期間生存可能な病原体が環境表面に存在することは病原体伝播のリスクとなります。コロナ禍に紫外線照射装置や過酸化水素発生装置など非接触型環境消毒装置よる環境消毒の効果を示す報告が多数されたことから、薬剤耐性菌をはじめとする感染症患者の退院後の病室などで使用する医療機関が増えてきました。

Q2.院内の環境整備において、「よくある間違い」には、どのような例がありますか?教えてください。

環境消毒は環境表面の病原体数を減らすことで、環境からの病原体伝播による感染リスクを低減させます。重要な感染対策ではありますが、なかには環境のあらゆる場所を日常的に消毒するといった、清掃よりも消毒に熱心な施設を見かけます。多数の人が存在する院内環境には常に様々な微生物が存在し、いくら消毒したとしてもゼロにすること不可能です。医療機関における環境整備のポイントは、あらゆる場所を消毒するのではなく、日常的な清掃により水平面に埃をためず、多くの人の手が触れる高頻度接触環境表面を消毒することで清潔な環境を維持することです。

Q3.最後に、医療従事者として、環境整備における注意すべきポイントを教えてください。

免疫不全の患者なども存在する医療機関では、いかに清掃が行き届いた環境を維持するかが重要です。そのためには日ごろからの整理整頓に注意してください。床に色々なものが置かれていたり、コード類が何本も這っているようではモップの拭き残しが起こります。拭き残したところには微生物を含んだ埃がたまっていきます。処置台や机上、棚などの水平面も同様です。ものがあればあるだけ清潔を維持しにくくなります。不要なものや微生物の温床となりやすい段ボールなどを処分して、清掃が行き届く環境づくりに注意してください。

増刊紹介



決定版環境整備ICTマニュアル

インフェクションコントロール2024年春季増刊
隅から隅まで確認しよう!
写真・イラスト入りチェックシートとQ&A集で分かる!

決定版 環境整備ICTマニュアル
指導に使えるチェックシートと写真・イラストがダウンロードできる


見落としがちな環境整備のポイントを解説!
コロナ禍を経て、環境整備を見直す施設が急増している。本書では、すぐに使えるチェックシートやよく遭遇するスタッフからの質問を中心に、ピットフォールにつながるポイントから指導方法までわかりやすく解説!「施設の清掃を見直したい」「効果的な伝え方が知りたい」と考えるICTメンバーをサポートする。

この書籍の購入・詳細はこちら

目次


【第1章】環境整備の最新情報とエッセンス
1 清掃・環境整備の基本と心得
2 どこまで徹底する?ラウンドでの指導(高齢者施設を含む)
3 変化はあった?清掃・環境整備に関わる法改正
4 これからどう活用する?非接触型環境消毒装置
5 コロナ禍で必須になった!空調の管理

【第2章】環境整備のポイント
1 環境消毒のときの消毒薬の使い方
2 清掃・環境整備の手順(嘔吐物の処理を含む)
3 感染性廃棄物や汚染リネンの処理
4 水回りの感染対策
5 清掃委託会社に伝えたい感染対策

【第3章】環境整備のポイントとラウンド時のマニュアル:場所編
1 病室(定期清掃・退室清掃を含む)
2 トイレ
3 浴室・シャワー室
4 更衣室・食堂
5 汚物処理室
6 待合室・廊下
7 洗濯室
8 診察室
9 採血室
10 プレイルーム

【第4章】環境整備のポイントとラウンド時のマニュアル:部門編
1 検査室
2 内視鏡部門
3 栄養給食部門
4 薬剤部門
5 中材滅菌部門
6 リハビリテーション室
7 手術室
8 透析室
9 ICU
10 NICU
11 救急外来

【第5章】急性期病院以外の施設別の環境整備マニュアル
1 高齢者施設
2 精神科病院
3 診療所
コラム 在宅における環境整備の課題と現状

【第6章】アウトブレイクに注意する薬剤耐性菌と感染症の対策
1 クロストリディオイデス・ディフィシル(CD)
2 多剤耐性緑膿菌(MDRP)
3 多剤耐性アシネトバクター(MDRA)
4 バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)
5 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)

発行:2024年1月
サイズ:B5判 280頁
価格:4,400円(税込)
ISBN:978-4-8404-8304-9
▼詳しくはこちらから