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2023年12月刊行の書籍『無痛分娩 症状アセスメントポケットマニュアル』(詳しくはこちら)の著者である東京マザーズクリニックの院長・産婦人科医の林聡先生(写真右)と麻酔科医の柏木邦友先生(写真左)に、本の魅力について紹介していただきました。

『無痛分娩 症状アセスメントポケットマニュアル』



書籍を出版しようと思ったきっかけは何ですか?

【林先生】近年、無痛分娩は急速に普及し、産婦からのニーズも高まっていますが、日本の周産期医療における無痛分娩に関する教育は十分とは言えません。東京マザーズクリニック(以下、当院)を受診した妊婦の98%が無痛分娩を選択していますが、『令和2年医療施設調査・病院報告の概況(厚生労働省)』によると、日本全体での無痛分娩の割合はわずか8.6%です。このような背景からも、現場でスタッフ(助産師、看護師、若手研修医)が無痛分娩を実践する中で、「産婦の何を診て、どのように対処すればよいのか?」「わからないことは誰に聞いたらよいのか?」「どうやって調べたらよいのか?」など わからないことが多いというのが現状だったと思います。

【柏木先生】産婦人科医の林先生と麻酔科医である私が当院で培った豊富な無痛分娩の経験を元に、「臨床の場ですぐに判断、対応できるように実践に即した初めてのマニュアルを作りたい」という思いで企画し、書籍にまとめました。

無痛分娩の教科書的なテキストとの違いを教えてください

【柏木先生】麻酔科医は、無痛分娩の診療で異常が起こった際に、経験と知識から鑑別疾患を列挙し、検査や診察を行い、診断をつけていきます。本書では、これらの経験を活かして、無痛分娩をベッドサイドで実践しているスタッフがわかりやすいように、「発熱」「脚が動かない」などの無痛分娩中の具体的な異常(症状や状態)から診断・治療の流れを見ていく構成とし、症状ごとにフローチャートで確認しながらその対処法へと導いています。とくにドクターコールのタイミングを見逃さないように、フローチャート上にアイコンで入れました。

【林先生】本書は無痛分娩開始前から分娩後に起こるトラブルまでを網羅し、日本の産科医療にも即した内容となっています。麻酔科医が不在の施設において無痛分娩を行っている場合などでは、とくに助産師や看護師が異常に気づき、最初に動くケースも多いでしょう。ぜひ知識や経験を本書で補い、すぐに行動に移せるように、いつもポケットの中や手元において活用してほしいと思います。

【柏木先生】さらに、本書を活用して、重篤な病態を早めに鑑別しつつ、状況によっては確認や対応の順番を変えたりするのもよいと思います。施設ごとに考え方や対応は異なることもあるでしょうから、皆さんの施設に合った方法があれば、それでも構わないですし、より現場に即したオリジナルのチャートを作成するのもいいと思います。ぜひ本書をベースに改良を重ねてみてください。

『無痛分娩 症状アセスメントポケットマニュアル』
持ち運びやすいポケットサイズで、サッと知りたいことが確認できる!


無痛分娩を実践している産科スタッフの皆さまへのメッセージをお願いします

【柏木先生】ほぼすべての合併症は、早期発見・早期治療により予後が改善します。気づきが遅れれば予後は悪化し、不可逆的な合併症を残すことさえあります。医療行為である以上、合併症をゼロにすることはできませんが、限りなくゼロに近づける努力はできます。安全な無痛分娩の広がりを願っております。

【林先生】本書が無痛分娩のスキル向上に少しでもお役に立てれば幸いです。そして、医療事故を起こさないように安全に医療を行うことはもちろんですが、産婦が高い満足を得られる理想的な無痛分娩を行えるように、わが国の周産期医療が発展することを願っております。

書籍の案内




無痛分娩_症状アセスメントポケットマニュアル


無痛分娩 症状アセスメントポケットマニュアル
麻酔導入~分娩中・翌日以降のトラブルの「原因と対処法」がわかる
フローチャートで《ドクターコール》のタイミングを見逃さない!


秒でひけるトラブル対応の「虎の巻」
臨床現場で頻繁に遭遇する無痛分娩に関するトラブルや症状の原因と対処法をベッドサイドですぐに確認できる。フローチャートで対応の流れがわかり、ドクターコールの適切なタイミングを見逃さない!後に発生するトラブルについても網羅した。

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目次


【1章 無痛分娩導入前(外来でチェックしておくこと)】
ⅰ 採血結果と内服薬の確認
ⅱ 挿管困難例や注意すべき既往歴
ⅲ 無痛分娩の同意書と患者説明のポイント
Q&A「無痛分娩導入前」によく聞かれる質問

【2章 無痛分娩中の症状&トラブルへの対応】
ⅰ 硬膜外穿刺時に介助者がやるべきこと
ⅱ 無痛分娩開始時に行うこと
ⅲ 帝王切開が決まったらどうすればいいか

■症状
1 痛みを訴えている
2 吐き気がある
3 体が震える
4 発熱したら
5 脚が動かない場合 ・動画(p.70のQRコードから動画が再生できます)
6 いきめない、いきみづらい
7 頭が痛い
8 息が苦しい
9 SpO2が低い
10 麻酔が片側にだけしか効かない
11 かゆみがある
12 皮膚が赤い
13 意識が混濁している、意識がない、不穏
14 回旋異常がある
15 会陰部のむくみ・腫れ
16 分娩が進まない
17 頻脈/徐脈がある
18 心電図異常
19 血圧が低い/高い
20 尿量が少ない
21 めまい、耳鳴りなど
22 刺入部からの液漏れ、血液流出
Q&A「無痛分娩中」によく聞かれる質問


【3章 分娩翌日以降の症状&トラブルへの対応】
■症状
1 後陣痛、会陰部痛
2 カテーテル刺入部の痛み
3 排尿障害
4 脚のしびれ、運動障害(脚が動かない)
Q&A「分娩翌日以降」によく聞かれる質問

■資料
NRS(numerical rating scale)
デルマトーム

発行:2023年12月
サイズ:新書判 160頁
価格:2,750円(税込)
ISBN:978-4-8404-8448-0
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