看護師兼ライターの白石弓夏です。

看護師として現場で働いていると、“継続的に学びが必要である”と痛感することがあります。大人になってからの『学び』は、自分のなかに落とし込み、現場で活用できるか、応用できるかが重要になってくると思います。みなさんは実際にどのように『学び』を深めているでしょうか。

この連載では、さまざまな場所で活躍されている看護師にインタビューを行い、自身の『学び方』について、一緒に考えてみようと思います!

今回は看護教員として働く、小浜さつきさんです。


プロフィール:
聖マリア学院大学看護学部基盤臨床看護学領域准教授。脳神経外科と耳鼻咽喉科頭頚部外科の病棟で1年間、その後は回復期リハビリテーション病棟で勤務。現在は脳卒中後のリハビリテーション看護を専門に教育と研究に取り組んでいる。

白石>小浜さんは教員でありながら、研究もされていますが、普段はどのようにして学ばれているのですか?

小浜>私自身、調べることが大好きで、文献で調べ物をしているとすごくのめり込んでしまうタイプなんです。わからないことを調べていると、そのテーマに詳しい人が出てきますよね。その詳しい人は、私がわからないことを突き詰めて研究されていて、さまざまなことを解明してくれています。そのことを知ると、また自分の知識不足がわかり、また疑問が出てきて、さらに調べる……の繰り返しですね。

白石>めちゃくちゃわかります……。はじめはすこし文献などを読むとわかった気にはなるんですけど、それからさらに調べていくと、底がないことに気づく瞬間がありますよね。

小浜>そうなんです! わからないことを追求していく奥深さに、私は魅せられてしまっているのかもしれません。学びに終わりがないところもありますけど、一つひとつ丁寧に、諸先生方が人生をかけて取り組まれていることがすごく伝わってくる文献に出会ったとき、心がときめくのです。素晴らしい学びをいただけたのだと思います。

白石>小浜さんの学びの根本にある大事なものは、「なんでだろう」と思う気持ちに対して素直に向き合っていく姿勢なんですね。最近読んだ本で、なにか思い入れのあるものはありますか?

小浜>最近読んだ本、というわけではないのですが、一番大切にしている本は、『ロイ適応看護モデル』ですね。鳥取大学在学中にロイ適応看護モデルについて学び、シスター・カリスタ・ロイ先生が長年にわたって看護学を追求されていること、看護師の実践が論理的に説明されることに感動しました。ロイ適応看護モデルについて、さらに深く勉強したいと考え、日本でのロイ適応看護モデルの教育の中心、メッカともいえる聖マリア学院大学に就職させていただきました。勤務するなかで、シスター・カリスタ・ロイ先生に直接お会いし質問する機会を得ることができたんです。ロイ適応看護モデルの理解がさらに深まったことを感じています。

原著と日本語訳版。たくさんのふせんとともに、何度も何度もページをめくった跡が。


白石>著者の考えに直接触れる機会があれば、理解が進みそうですね。

小浜>そうなんです! ロイ適応看護モデルで述べられている哲学的な仮説は、聖マリア学院大学の建学の精神と一致しているので、大学で働く毎日の体験がロイ適応看護モデルの理解や実践につながっていると感じています。2018年からは、米国ロサンゼルスで年一回開催されているRoy Adaptation Association(ロイ適応看護協会)の学会に参加して、ロイ適応看護モデルの研究に取り組む世界の看護学研究者とディスカッションを重ねています。世界の研究者の方と看護について討議できるのはとても貴重で感動的な経験です。このような体験をとおして、今よりもっとロイ適応看護モデルを深く理解し、より良い看護実践ができるようになりたいという気持ちが高まっています。

白石>日本にいながらも、生きたロイ適応看護モデルに触れられる環境ということですね。その環境が研究者として教員として、小浜さんの追求心をよりいっそう駆り立てているのだと思いました。ありがとうございました!

後編では、小浜さんが学生に教育するなかで、学ぶためにどのような工夫をされているかについて聞いていきたいと思います。

//バックナンバー//

#001  自分の基盤にどうのせるかで学びを考える|吉岡純希さんと白石弓夏さん(前編)
#002  お互いの領域をリスペクトする|吉岡純希さんと白石弓夏さん(後編)



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白石弓夏
看護師兼ライター。整形外科病棟とクリニック、施設で働きながらライターとして活動中。ポジティブ思考、フットワークの軽さが強み。ライターとして情報収集、発信向けにTwitterをはじめたが、いつのまにか飯テロ垢と化したので、軌道修正中。
Twitter→https://twitter.com/yumika_shi