1.自己紹介をします
私の看護師歴は10年、精神科歴は3年が経とうとしています。精神科に行こうと決めたのは看護学生のときでした。精神科病棟で実習していたときに、前日までたくさんいろんな話をしてくれていた患者さんが、ある日、朝、病棟にいくと「西田さん、来ないで!」って言ってきたんです。
なにが悪かったのかわからず、そのときは悲しい気持ちになりました。そこからかかわり方をたくさん考えて介入してみて、最終日には「来てくれてありがとう」と言ってもらえました。このかかわりから私のなかで「精神科のことをもっと知りたい!」って思えたのがきっかけでした。
2.私が思う依存症患者さんへの印象
精神科で働いていると、さまざまな依存症患者さんが入院してきます。アルコールやギャンブル、薬物……。こんな依存症があるんだ~! なんて思うこともあります。私自身、アルコールにも興味がなく、ギャンブルの経験もありません。
「アルコールを飲みすぎて家族や友人、職場にも迷惑をかけているし借金つくっていろんなもの失って生活破綻して……それでも辞められないのってどうしてなんだろう。依存症患者さんの気持ちって、よくわからないなあ……」と思うのが本音です。正直どうやってかかわっていいのか、どんな話をしたらいいのかわからないし…って思ってしました。
3.依存症患者さんとのかかわり
そんななかでギャンブル依存症の男性患者さんを受け持つことになりました。パチンコを辞められず、生活が破綻。母親とともに来院されました。「パチンコを辞めて普通の人間の生活がしたいです」と強く語っていたのが印象的でした。他患者さんとも交流みられ、OTで作成したビーズのストラップをプレゼントしてくれたり、散歩中には退院後の生活などについても語ってくれていました。
入院生活も2か月を過ぎたころ、退院後は依存症回復施設へ入るという方向性になったのですが、本人は「あんなところにいる人はなにもかも失った人。僕は大切なものがたくさんある。行く必要がない」と、施設入所によい返事は得られませんでした。それまでは私を見つけると笑顔で話しかけてくれていたのですが、施設入所が決まったころからは話かけることもなければ、挨拶をしても「話すことないんで!」といった冷たい返事。
私自身、きっと本人にとって必要な過程なんだって思う反面、実際に回復施設を見たことがない私が、偉そうに「行ったほうがよいよ」と伝えることは間違っていると感じましたし、彼自身が望んでいない道を、「必要な過程だよ」と伝えるのは押しつけのように感じて伝えることはできませんでした。
親御さんも悩んでいることを聞いて、私にもできることのヒントがあるかもしれない、と考え、親御さんが参加している家族会にもいっしょに参加しました。家族同士が悩みを抱え込まずに吐き出して支えあっている姿には多くの発見がありました。それでも私が看護師としてできることがなになのか、その答えは見つかりませんでした。
4.私にできることって?
私の病棟には依存症を得意にしている先輩(#8、#23の塚越さん)がいたので、「私にはなにができますか」と相談しました。すると「とにかく話を聞いてあげて。そして回復できることを信じてあげて」と教えてくれました。
そこから私はどんなに無視されても挨拶は欠かさず行い、勤務のときは少しでも座って話がしたいことを伝えました。「もうなにを話しても施設に行くことは決まってるんですよね」という返答が多かったですが、あなたは回復できるということを伝え続けました。
施設へ退院の日、回復応援メッセージカードをプレゼントしました。「あ、どうも。今までありがとうございました」と言い、受け取ってくれました。久しぶりに少し笑顔がみれたように感じました。最後まで、施設入所には納得してくれませんでしたが、入院中の仲間に見送られ、笑顔で退院しました。
5.あきらめずに回復できることを信じ続ける
短い入院期間のなかで、看護師としてできることは本当に限られていると感じます。そんななかで私にできること? と考えたとき、あきらめずに回復を信じ続けることはすごく大切なことだなと感じました。
依存症は「孤独の病」といわれています。多くの人から「どうせダメだろう」「自分のせいじゃないか」と責められます。本人自身も「自己責任だ」「自分がダメだからだ」と自分を落ち詰めます。そんなとき、誰かが応援してくれたり見守ってくれていたり「うまくいく」と信じてくれていたら……。それが患者さんの「なんかがんばってみようかな」につながったらすごくうれしいですね。
まだまだ精神科初心者な私ですが、それでもできることがあると気づかされました。一人でも多くの患者さんの回復につながると信じてがんばります!