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看護師クリエイティブプロジェクト「fractale」のみなさんが、毎回テーマに沿ってそれぞれの看護の足跡を残していく本企画。

「学びかたを学ぶことで看護師として生きる選択肢をふやしていく」ことをコンセプトに立ち上げたメディア「メディカLIBRARY」のスタッフが、毎回、フラクタルのみなさんにテーマを伝えています。

今回は「患者さんの自己決定を支援する」を綴っていただきました。

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はじめまして。行政の保健師ですが、最近の知見を得て、アップデートしていくために、いつも興味深く拝読しております。

テーマとして、患者さんの自己決定を支援する、ということについてお伺いしたいです。

それも、成人健常者ではなく知的、精神、身体などに障がいがある方、自己の過大評価をしている方への支援について、よろしくお願いいたします。


今回いただいたテーマです。
テーマのご提案をいただき誠にありがとうございます!
本当にこのテーマは難しいのでドキドキしています……。
わたしでは役不足な気が否めないのですが、わたしなりの考えを書いてみます。

訪問の世界で頻繁に立ち会う場面といえば「利用者さんの能力に合わせて生活を変容させていく場面」です。
「自己の過大評価」といえばその時点ではそうなのですが、少し過去に遡ると、それは「過大評価」ではなかったりするので、これまた指導(誘導)が難しかったりします。

要するに、加齢に伴う諸々の機能低下やある時点から何かしらの理由で障害を負ってしまった、など、不可逆的な変化に認知が追い付いていないことが多くありました。
いろいろと紐解いていくと、現在を受容できていないから過大評価をしてしまう、という答えにいきつきました。
前にできていたからこそ、できる、大丈夫、と思ってしまう。
当然といえば当然ですし、受容すること自体に解決しがたい諸々の理由はあるので本当に難しい。

こちらの見立てにより、提案したものが通らなかった場合。
その場合、今までどおりのやり方でまずやってもらいます。
(もちろん安全にはかなり配慮して、可能な範囲内で)

そのうえで、できたこと、できなかったこと、できた回数、できなかった回数などを、可視化+都度都度フィードバックします。
すごく時間がかかっていることは、時間をはかります。
全員に対して有効なものではないですが、本当にこの繰り返しをしていきます。
そして、ある程度データがたまってきたら、改めて提案をします。
メリットを織り交ぜながら。
ただ、これで受容してくれる方はしてくれますが、正直、通ることのほうが珍しいです。
生活を変えるのは本当に大きな壁です。
なのでわれわれは、安全を守れるように訪問回数を増やすなど、観察強化をするしかないのです。
観察強化をしてるから良いのではないかと言えばそうなのですが、それがすべてかというとそうではないので、そこは日々悩むところです。

保健師さんの場合、恐れていた事象が起こってしまっては手遅れなので、事前に対処しなければならないことがとても多いではないかと思います。
なので、今回のわたしの回答は、ぜんぜん違う方向かもしれません。

今回の質問が出たということは、きっと地域でのサポート体制が整っていないんだな、地域で連携して、点でなく線となるよう、すこしずつサポートしていくしかないんだな、と改めて感じました。
この度は現場の貴重なご意見をいただき、誠にありがとうございました。

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fractale~satomi~
twitter:さとみ(@minisatominy

三度の飯よりお酒が大好きな飲兵衛看護師。仕事終わった瞬間からが本番だと思っている。仕事は真面目な自信あり。大学病院消化器外科3年、民間病院ICU2年、公立病院脳外科夜勤専従、訪問入浴、デイ、老健など1年の派遣生活を経て、メルボルンへ10ヶ月の看護留学。帰国後から訪問看護師として働き3年目。座右の銘は「笑う門には福来たる」。根からの明るい性格を最大限に利用し、日々楽しく訪問中。マルチポテンシャライトだから特技っていう特技はないけど、強いて言えばラポール形成が無駄に得意。今までクレームや担当変更がないのが密かな自慢。ちゃっかり保健師免許所有。 

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