看護師クリエイティブプロジェクト「fractale」のみなさんが、毎回テーマに沿ってそれぞれの看護の足跡を残していく本企画。

「学びかたを学ぶことで看護師として生きる選択肢をふやしていく」ことをコンセプトに立ち上げたメディア「メディカLIBRARY」のスタッフが、毎回、フラクタルのみなさんにテーマを伝えています。

今回のテーマは「体位変換」です。

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私が1年目で働いていた病棟は、ストーマの患者さんが多い外科病棟。
それに、麻痺や拘縮のある脳神経外科の患者さんもいる病棟でした。

病棟には皮膚・排泄ケア認定看護師さん(以下、WOCさんと呼ばせてもらいます)が2人いました。
なので、体位変換については、かなりしっかりと指導された記憶があります。

とにかく除圧ができていること、それに加えて安楽な体位が保てていること。

重要なポイントはこの2つ。

1年目のときにWOCさんがしてくれた勉強会でとくに印象に残っているのは、血圧計(当時なので、水銀血圧計です……)を自分の腕に巻いて、30mmHgまで自分で加圧するというもの。

ここは脳神経外科の患者さんもいる病棟。
脳梗塞の患者さんなんかは血圧を高めに管理する必要があるので、場合によっては、なんなら昇圧薬を使ってでも180、200mmHg当たり前! みたいな病棟だ。


シュ、シュッ……。


送気球を軽く握っただけですぐに目盛りは40mmHgくらいまで上がった。

すこし緩めて30mmHgになるように調整する。


「はいストップ!」
「どう?」


どうにもこうにも、ほとんど圧は感じずマンシェットを巻いているな……、という感覚しかない。

しばらくキープする。
が、感覚は変わらない。


「じゃあ次は100まで上げて」

シュッシュッシュッ。

100mmHg。


そこそこ圧迫感がある。
しばらくキープするようにいわれて、たまに抜けてくる空気を入れつつ、5分くらいするとすこし痛くなってきた。
我慢はぜんぜんできる。
でも、いつ「空気抜いて良いよ」って言ってくれるかな、と思いつつWOCさんのほうをうかがう。


「はいオッケー! 空気抜いて~」

そう言われて空気を抜き、マンシェットを外すとすこしホッとする感じがする。



さて、これがなにを示しているか、よくおわかりのかたもいらっしゃることと思いますが解説をすると、“32mmHgで毛細血管は閉塞し、70~100mmHgの圧力が2時間以上持続すると褥瘡が発生する”という、その圧力を実際に経験してみようというものでした。


病棟では約2時間ごと(夜勤だともうすこし感覚が空いていました)に体交の時間が決められていて、その時間になるとリーダー以外、基本的には全員で、仕事の手を止めて体交に回っていた。

オムツを確認して、身体を引きずらないように気を付けながら身体の向きを変えて、枕とクッションの位置を調整し、かならず背抜きと腰抜き、頭~耳、踵の圧まで抜く。

マンシェットで加圧した圧を思い出しつつ、患者さんの身体の下に手を入れて、「圧がかかってないかな? この体勢で苦しいところはないかな?」と確認しながら、体交の時間が終わったらまたすぐに体交の時間……そしてまた体交の時間……と、怒濤の日勤を過ごすのでした。

//バックナンバー//

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特別編 Survive
#006 EMERGENCY DAY
#007 Working All Night
#008 たしかなものは肉の下
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看護師クリエイティブプロジェクトFractaleのエモ担当。なぜか気が付いたら在宅沼に片足突っ込んでいた7年目看護師。外科・脳外科病棟→救命救急センター→集中治療室→2020年2月から在宅。新米訪問看護師。輸液ポンプ、シリンジポンプのコード整理の特技が活かせなくなってしまった。元葬儀屋、病院栄養科勤務経験のある社会人から看護師パターンのやつ。ケアの原点を在宅に感じて、改めて生と死を見つめ直そうとしている。趣味は筋トレと読書とロードバイクと音楽鑑賞。B'zに対する並々ならぬ執着心がチャームポイント。 好きなトレーニングはレッグエクステンション。


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