看護師クリエイティブプロジェクト「fractale」のみなさんが、毎回テーマに沿ってそれぞれの看護の足跡を残していく本企画。

「学びかたを学ぶことで看護師として生きる選択肢をふやしていく」ことをコンセプトに立ち上げたメディア「メディカLIBRARY」のスタッフが、毎回、フラクタルのみなさんにテーマを伝えています。

今回は特別編として「今」を綴っていただきました。

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「今日、もう帰って良いよ。血圧大丈夫でしょ?」

週に一度の訪問日。

「えっ……」

思わず「えっえっ、体調悪いですか?」って聞いてしまった。
バイタルを測り終わってから言う台詞ではなかったと若干反省したものの、いや、バイタルはまったく異常なかったから聞いたんだけども。

毎週状態確認で訪問している利用者さん。
ADLは自立。
身体的ケアはとくに行わない。
いつも1時間、時間いっぱいおしゃべりして帰っていた。
その勢いたるや、看護師にしゃべらせる隙を与えないこともしばしば。
いつもそうやって1時間まるっとおしゃべりしているのに。

まさかの、15分。15分……!?
この1週間の生活状況を聞いて、バイタルを測っただけなのに。
「伝染病、大丈夫? 看護師さんの間でも流行ってるでしょ」
そういえば毎週、リビングに入ったときにテレビを消してくれたけど、見ているのはワイドショーだった。
不安を煽るような内容。

それに加えて、1週目はマスク着用、2週目はマスクが仰々しくなる(N95)、3週目は事前連絡をして発熱や体調不良がないか確認、N95マスクに手袋も追加になる、4週目は事前連絡、N95マスク、手袋、それにバッグカバーが追加される。
ちなみにマスクはアルコールスプレーで消毒をして再利用。

利用者さんへの感染伝播の予防なのか、看護師の感染予防なのか正直よくわからない。
着脱の仕方の指導もないまま、その防護具を使う根拠もわからない。
どんどん装備が追加されていく看護師の姿に、戸惑いを感じるのもすごくよくわかる。

戸惑うよね、これだけ医療従事者が院内感染をしているってニュースで報道されたら、ナーバスになるのもわかる。

あからさまな拒絶をされないだけでもありがたいと思わなければいけないとすこし思う。

結局「帰って良いよ」と言われてしまったらどうすることもできず、管理者とケアマネさんに「1時間の訪問のところ、こういう理由で15分で訪問終了しました」と報告するに至りました。


最前線の病院ならまだしも、地域で生活してる利用者さんに対していたずらに不安を助長していないか?

マスク・手袋・バッグカバーまでしてチャイムを鳴らす訪問看護師の姿をご近所の方に見られて、嫌な顔をされないか?

だって私も正直戸惑ってる。
はたして本当にこの装備は必要なのか。
今現在発熱がない利用者さんに、数が足りなくて再利用しながら使っているN95マスクを使用して、本当に新型コロナウイルス感染利用者さんへの訪問に行くことになったときに、必要な個人防護具を装着して行くことができるのか。

とはいえ、会社からの指示なのでやらないわけにもいかず。
そんなジレンマを抱えながら、今このコロナ禍を生きています。

2020年4月26日

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看護師クリエイティブプロジェクトFractaleのエモ担当。なぜか気が付いたら在宅沼に片足突っ込んでいた7年目看護師。外科・脳外科病棟→救命救急センター→集中治療室→2020年2月から在宅。新米訪問看護師。輸液ポンプ、シリンジポンプのコード整理の特技が活かせなくなってしまった。元葬儀屋、病院栄養科勤務経験のある社会人から看護師パターンのやつ。ケアの原点を在宅に感じて、改めて生と死を見つめ直そうとしている。趣味は筋トレと読書とロードバイクと音楽鑑賞。B'zに対する並々ならぬ執着心がチャームポイント。 好きなトレーニングはレッグエクステンション。


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