野村由利夫
NPO法人ミーネット ピアサポーター

急性リンパ性白血病と診断され、骨髄バンクに登録。ドナーが見つかり骨髄移植をする。現在は、骨髄バンクボランティアやピアサポート活動を行っている。

▼NPO法人ミーネットとは
がん体験者やその家族を対象に、身近な相談役として「ピアサポーター」を養成。市民・行政・医療機関の連携のもと、愛知県の地域に根ざしたピアサポートを行う。





全身で伝えてくれた「大丈夫ですよ」

「肺がんの疑いが濃厚」。そう告げられたのは、定年退職後、外資系企業に再就職が決まったばかりのことだった。

ところが「濃厚」なわりには確定診断がつかず、主治医に「診断方法を自分で決めるように」と言い渡されてしまった。決められるわけがない。「もう一度内視鏡検査を行うか、手術を行い術中検査で確定させて手術方針を術中に決めるか」なんて……。

ネットには情報が溢れ、調べれば調べるほど混乱は増す。わらにもすがる思いで、院内の「がん相談支援センター」を訪ねた。対応してくれた相談員のAさんは看護師さんで、そう聞いただけでも心が落ちつく。人を包み込むような微笑みに誘われて、診察時には緊張と混乱で医師にできなかった質問を矢継ぎ早に投げかけた。

Q.気管支内視鏡検査でがん細胞が採取できなかったのはなぜ?
A.非細胞肺がんは肺の抹消にできるので採取しにくいがん種ですが、まだ腫瘍が小さいから採取しにくいわけです。言い換えると早期発見ということですね。手術できるということは早期治療が可能ということで、要は早期発見・早期治療になり期待できますよ。

なんて明確!! 心のなかに重く垂れこめた雲が割れ、春の日差しに包まれたような気がした。そこからすべての疑問や不安が氷解。Aさんは医師にもその場から電話をしてくれ、優秀な通訳さながら、ことごとく明快な回答をくれた。「大丈夫ですよ」と、言葉と笑顔と全身で語りかけてくれるこの人の対応は、おそらくは確かな看護実績によって培われたものだろう。

「早期発見・早期治療」が功を奏して、自分らしい日々を取り戻した私は「ワンステップしゃちほこ」という肺がんの患者会活動を立ち上げた。名称の「ワンステップ」は、まさに私がワンステップを踏み出した「がん相談支援センター」の経験とつながっている。




本記事は『YORi-SOU がんナーシング』2023年2号からの再掲載です。


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