ここは空想病院企画室。

毎回異なるゲストとともに、
当事者性やマイノリティ性の視点から
「こんな病院あったらいいなぁ」を空想します。


ゲスト:新月ゆきさん
コロナ禍時代、くも膜下出血を発症した漫画家。その時の体験を漫画にした「くも膜下出血のラブレター」を執筆する。その後、予防医療に興味を持つ。現在は漫画を描きながら、生活習慣改善と薬膳の日々を過ごす。

企画室室長(著者):喜多一馬
平成医療福祉グループ 介護福祉事業部。急性期・回復期病棟で勤務後、地域にて就労継続支援B型・福祉用具貸与事業所・チョコレートショップ・古着屋・障害者アート事業などに携わり、現職。共編著に『差別のない社会をつくるインクルーシブ教育』など。最近の楽しみは近所の図書館で読みたかった本を取り寄せること。



病院では、
現在入院中の患者たち(A)、
過去退院した元患者たち(B)、
そして、最新の医療と予防医療を持つ医療関係者(C)たちが交流する場がある。

A(現在入院中):
「退院後、自分はどうなるんだろう?」
「以前の生活に戻れるんだろうか?」
「今後どうやって生きていけばいいんだろう?」

B(元患者):
「薬の服用を続けている人はどうしてる?」
「再発を防ぐために、みんなどんな工夫をしているんだろう?」
「同じ病気を経験した人たちと話すと、自分の今がよりクリアになる」

C(医療関係者):
最新の治療・予防医療の知識を提供しつつ、
「医療関係者の希望を叶える箱」で、
自分たちの「言葉にしない希望」を患者・家族から叶えてもらう。

AはBの「その後」のリアルな体験とCの専門知識で、
未来への不安を和らげ、希望を見出す。

BはAに自分の経験を伝え、励ますことで
「自分が乗り越えてきた意味」を再確認。
そして、Cとの交流で予防の最新情報を得て
「これからも生き抜く」力を得る。

Cは患者・家族からの「恩返し」によって、
普段言えない希望が叶い、医療者としての喜びを新たにする。


この病院は、現在と過去と未来が集まる病院です。

患者の「可視化されていない不安を解決する」
医療関係者の「言葉にしない希望を叶える」
そして、元患者が「与えることで得る充足」を生む、
「今後も生きる未来」に希望を持つ病院です。

それが『未来病院』です!

イラスト:いしやま暁子
X:(@chovon_design
instagram:(ishiyama_akiko

特徴その1
~入院者と退院者の交流会~




私(女性40才)は、1週間前くも膜下出血になった。
現在、脳外科病院のICUに入院している。
ベッドに横たわり、窓から見える青空を眺めながら、考える。

『退院後、今まで通りに働ける?』
『以前の生活に戻れる?』
『退院後、他の人はどうしていたんだろう?』

スマホでググっても、病院の医療情報ばかり。
患者の治療中の闘病記はある。
だけど、退院後の情報がない。

『どんなことがあった?』
『退院後、他の患者さんたちはなにを思ったんだろう?』

私がとりとめもなく考えていると、
看護師さんが来て、私に話しかけてきた。
「明日、元患者さんたちとの交流会があります。参加されますか?」

はじめて知ったけれど、この病院では、入院者と退院者の交流会が月1回開催される。
希望者が多く、昨年から開始された。参加は任意。

5年前にくも膜下出血になった西野さん(女性46才)曰く
「退院したばかりの頃は電車が怖かったんです」
「だけど、時間と共に怖くなくなりました」 「時間が薬です」

7年前に脳出血になった南田さん(男性52才)曰く
「私は、半年間、仕事を休みました」
「その間、家族や友人に助けてもらいました」
「今は、元の生活に戻れています」

8年前に脳梗塞になった北野さん(女性35才)曰く
「以前の仕事は退職しました」
「どうせ生きるなら、憧れの仕事に挑戦しようと思って」
「今は洋服を作っています」

そっか。
皆さん、退院後に困惑や葛藤、そして挑戦があったんだ。
そして、乗り越えてきた。

私の未来も
きっと大丈夫。
未来を信じよう!

特徴その2
~予防医療の対策セミナー~



私(男性52才)は、5年前に脳出血になった。
元の職場に復帰し、今まで通りの生活を過ごせている。
だけど、心配なこともあった。

脳出血は再発率が非常に高い疾患であり、10年以内に約半数が再発すると言われている。
…再発率が非常に高い。
…10年以内。
…約半数。

私も再発する可能性がある。
そんなことを考えている時、予防医療があることを知った。

予防医療とは、
生活習慣改善、ワクチン、健康診査を通じて病気を未然に防ぎ、
健康寿命の延伸と医療費削減を目指すもの。

脳出血の再発防止のため、私も予防医療ができるのでは?
この思いを、脳外科の主治医に伝えると
「来月から月1回、予防医療の対策セミナーを始めます。参加されますか?」

それから、私は予防医療の対策セミナーに参加している。
予防医療の対策セミナーでは、最新の予防医療対策。
そして、私と同じ病気になった方々との交流がある。

15年前に脳出血になった北村さん(男性65才)曰く
「私もね、脳出血になったんですよ」
「毎朝歩いています」
「生活習慣改善で、もっと生きますよ。ガハハハハ」

同じ病気の人が元気そうだと、素直に嬉しい。

現在くも膜下出血で入院中の長夏さん(女性40才)から質問される
「退院された後、すぐに社会復帰できましたか?」
「後遺症はありましたか?」

私は言葉を選びながら、正直に伝えた。
彼女は、納得したように目がキラリと光り、「ありがとう」とほほ笑んだ。
最新の予防医療を知ることもでき、人を励まし、励まされる病院。

今月も楽しかった。
来月も楽しみだ。

特徴その3
~医療関係者の希望を叶える箱~



「未来病院」では、
「医療関係者の希望を叶える箱」が設置されている。

医療関係者が、
「医療関係者の希望を叶える箱」に希望を投函すると、
叶えることができる箱。

秘密は守られ、個人情報の流出リスクがない。
安心して投函できるよう、設計されている。

設置場所は、
医療関係者(職員、医師、看護師など)の出入り口。

今回は、3人が「医療関係者の希望を叶える箱」に希望を入れた。
彼らの希望はなんだろう?

特徴その4
~医療関係者の希望を叶える会~



「未来病院」では、
「医療関係者の希望を叶える会」が開催される。

参加者は、現患者、元患者、その家族、そして関係者たち。
多くの人たちは、病院の治療により救われた。
みんな、医療関係者に感謝をしている。
この恩を返したい。

そこで発案されたのが、この「医療関係者の希望を叶える会」
「医療関係者の希望を叶える箱」に集まった、彼らの希望を叶える会。
月1会開催。

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ルールは、
病院内の規則に関与しない。
病院内の人間関係に関与しない。
「医療関係者の希望を叶える箱」の投函内容は、秘密保持が設計されている。
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願いを叶えると、全員が忘れる設計になっている。
覚えているのは、投函した本人だけ。

本日、月1の「医療関係者の希望を叶える会」が開催された。
参加者は、次のメンバーたち。

長夏さん(女性40才)の長女、大学生の長夏真由美さん(21才)
北野さん(女性35才)の父親、資産家の北野誠一郎さん(55才)
西野さん(女性46才)のご親友、会社員の佐藤みきさん(46才)
南田さん(男性52才)の甥、フリーターの南田喜一さん(24才)
北村さん(男性65才)のご友人、政治家の松野文雄さん(64才)

医療関係者たちは、一体どんな希望を挙げたのか?
それは秘密。
参加メンバーたちは、どうやって叶えるのか?
これも秘密。

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ルールは、
病院内の規則に関与しない。
病院内の人間関係に関与しない。
「医療関係者の希望を叶える箱」の投函内容は、秘密保持が設計されている。
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司会者
「皆さん、今から医療関係者の希望を読み上げます」




私たち医療従事者は、患者さんの障害について「その人に障害がある」と考える”個人モデル”で考えがちです。しかし、現代では「社会や環境が障害をつくり出している」と考える”社会モデル”が主流となってきています。本連載では「空想病院」という視点から、病院という社会や環境を見直し、社会モデルの考え方を身に付ける機会を提供します。ぜひ、本連載を読んで働く病院で何が出来るかを考えてみてくださいね。