忙しい医療現場で、つい患者さんの「痛い」「しんどい」に「仕方がない」と妥協してしまう──そんな経験はありませんか?
この連載では、日々の看護業務で出遭う難しいニーズに対して、すぐに使える緩和ケアの引き出しを紹介します。患者さんに自信を持って「次の一手」を示せる看護──そのヒントをお届けします。


フェンタニルテープを貼る場所は、胸・腹・上腕・太ももの4部位と決まっています。剥がれ防止の「上から全面テープ」や、自己抜去対策の「背中に貼る」は、工夫がかえって裏目に出ることも。何度も剥がしてしまう患者さんを、抑制やミトンに頼る前に「貼る場所」で守る方法を考えます。

フェンタニルテープを剥がす患者さんに、もう抑制しかないの?

ナースちゃん:
かんわエモン、聞いてくださいよ。うちの受け持ちの患者さん、フェンタニルテープ貼ってるんですけど、せん妄で何回も剥がしちゃうんです。昨日も剥がれたフェンタニルテープを、ナース3人がかりで大捜索。結局シーツの裏側にはりついてました。なぜ!?

先生:
麻薬だから、剥がれたやつを捜索しなきゃいけないの、毎度大変だよね! そして毎回、なんでこんな所に?ってとこから発見されるよね。

ナースちゃん:
でも、よくよく考えたら、剥がれてる間は薬入ってないわけでしょ? 痛かったはずですよね。なんか可哀想で。

先生:
ナースちゃん、優しいね。それで、今はどうしてるの?

ナースちゃん:
とりあえず上からフィルムドレッシング材で全面ぺたーっと。ついでに、手が届かない背中に貼ってます! ミトンも師長に相談しようかと思ってるとこです。抑制はほんとはしたくないんですけど……もう打つ手がなくて。

先生:
なるほどね、抑制はしたくない、でも剥がされるのも困る、と。……ただね、実はその「上から全面テープ」と「背中」、どっちも良かれと思ってやると裏目に出ることがあるんだよ。

ナースちゃん:
えっ。ダメなんですか? みんなやってますよ!

先生:
うん。でも安心して、貼る場所をちょっと工夫するだけで、ミトンや抑制まで行かずに済むことも結構あるんだよ。ちょうどいい機会だから、今日はフェンタニルテープの貼り場所を一緒におさらいしてみようか。

ナースちゃん:
……先に言ってくださいよそういうのは。もう師長に相談する文面までチャッピーに考えてもらったのに。

フェンタニルテープの貼付場所は、実は4か所だけ

ナースちゃん:
そもそもフェンタニルテープって、どこに貼ってもいいわけじゃないんですか? 薬が皮膚から入るなら、傷とかないならどこでも一緒でしょ。

先生:
それがね、フェンタニルテープは貼っていい場所がちゃんと決まっているんだよ。ちょうど図にまとめてみたから、これを見ながら話そうか。


フェンタニルテープを貼っていい4部位 (タップして拡大↑)

ナースちゃん:
胸、お腹、上腕、太もも……って、あれ。背中ないじゃないですか。

先生:
そうなんだよ、実は背中は貼付可能部位に入ってないんだよ。そして全部、自分の手が届くところなんだよね。

ナースちゃん:
じゃあ、またすぐに剥がされちゃうじゃないですか。振り出しですよ。

先生:
普通はそう思うよね。でも実は、患者さんが自分で剥がせるっていうのは、悪いことばかりじゃないんだよ。

「剥がせること」が、患者さんを守る非常ボタンになる

先生:
フェンタニルテープを使ってる患者さんが、せん妄になることってあるよね。

ナースちゃん:
ありまくりですよ! 急にそわそわしだして、点滴抜いたり、起き上がろうとしたり。あれ、見てるとこっちも冷や冷やするんですよ。

先生:
実はあのせん妄、フェンタニルテープみたいなオピオイド自体が原因のひとつになっていることがあるんだよ。

ナースちゃん:
確かに、オピオイドってせん妄のリスクですよね! フェンタニルテープでせん妄になってるなら、せん妄でフェンタニルテープを自分で剥がしちゃうと……。あれ?

先生:
いいところに気づいたね! そう、フェンタニルテープのせいでせん妄になっているなら、せん妄を治す方法はフェンタニルテープを剥がすことなんだよね。もちろん体内に既に蓄積した分はあるんだけど、少なくとも「これから吸収される分」は止まるからね。患者さんが自分で剥がせるっていうのは、いざというときに薬を止める非常ボタンを患者さん自身が握っている、ということでもあるんだよ。

ナースちゃん:
……私、その非常ボタンを、剥がされたくない一心で潰そうとしてたんですね。背中に貼って。

先生:
まあ、患者さんを守ろうと思ったら背中が浮かぶのは自然なことだよ。だからこそ、僕たち処方する側がもっと早くこういう話をしておかないといけないんだよね。

ナースちゃん:
なんか私、今日調子いいですよ! どんどん次の情報、カモン!

「上から全面テープ」も、実はやめておいたほうがいい

ナースちゃん:
っていうか、じゃあ、上から全面フィルムぺたーは? あれは剥がれ防止なんだから、いいでしょ。せこいこと言わないでくださいよ。

先生:
それがね、フェンタニルテープには「温めちゃいけない」っていう、わりと大事な約束事があってね。

ナースちゃん:
温める? カイロとか湯たんぽってことですか。冬場、患者さん寒がるからつい貼っちゃいそうですけど。

先生:
そうそう、まさにそれ。フェンタニルテープは貼っている場所が温まると、薬剤の吸収量が増えて、効きすぎてしまうことがあるんだよ。だから貼った場所にカイロや湯たんぽを当てるのは御法度でね。全面をテープで覆ってしまうのも、そこが蒸れて熱がこもりやすくなるから、あんまりおすすめできないんだ。

ナースちゃん:
あー……。ぺたーっと密封したら、蒸れますもんね。あれ、それならお風呂のあとは?

先生:
そうなんだ! 意外な盲点なんだけど、お風呂に入った直後に貼るのも避けた方がいいんだよ。温まった体が落ち着いてきてから貼るようにしてね。

ナースちゃん:
それは分かりましたけど、ならフェンタニルテープが微妙に剥がれてきたときは、どうすればいいんですか? 放っておくわけにもいかないでしょ。

先生:
もちろん放っておかなくて大丈夫だよ。剥がれかけてきたら、フィルムドレッシング材を薄く切ったりして、縁のところだけをセロハンテープで止めるように保護するんだよ。全面じゃなくて、縁だけね。それで完全に剥がれてしまったときは、新しいものに貼り替えよう。


剥がれてきたときの対処 (タップして拡大↑)

ナースちゃん:
縁だけ。……私、良かれと思って全面べったり補強してたの、完全に裏目だったってことですか。手厚くしたつもりが。

先生:
補強したくなる気持ちはよく分かるよ。良かれと思ってやっている工夫ほど、案外見直す機会がないものだからね。

「もう抑制しかない」の前に、できることがまだあった

ナースちゃん:
なんか今日、自分のやってたこと全否定された気分だったんですけど。よく考えたら、否定じゃなくて、抑制しなくて済む道を教えてもらってたんですね。

先生:
そういうこと。フェンタニルテープを剥がしちゃうのは、患者さんからのメッセージかもしれないんだよね。フェンタニルテープが合わなくてせん妄になっているのなら、主治医と情報共有して薬剤変更してもらうきっかけにしよう! 

ナースちゃん:
抑制やミトンは本来、薬剤調整とか色々やったあとの、いちばん最後の砦なんですよね。私、ついナースにできることで解決しようと思って、早めに抑制に手を出しがちになってました。

先生:
ミトンの相談の前に、まだできることが残っていて良かったよ。師長さんへの文面は、また今度の機会にとっておこうか。

ナースちゃん:
縁起でもないこと言わないでください。……例の患者さん、剥がしたフェンタニルテープをこっそりティッシュに包んで枕の下に隠す癖があるんですよ。宝物みたいに。私も親に買ってもらったりした宝物、よく枕の下に入れて寝てたなって思い出しちゃいました。

先生:
さすがにビール瓶は枕の下に入らないけどね。

ナースちゃん:
ちっちゃい頃の話だわ! ビール瓶はちゃんと抱えて寝てます!

【参考文献】
1)フェントス®テープ 電子添文(アクセス日 2026-07-10). 久光製薬株式会社/協和キリン株式会社.
2)フェントス®テープ 適正使用ガイド. 協和キリン株式会社/PMDA RMP資材.
3)フェントス®テープの使い方(患者向け資材). 協和キリン株式会社/PMDA.
4)Shomaker TS, Zhang J, Ashburn MA. Assessing the impact of heat on the systemic delivery of fentanyl through the transdermal fentanyl delivery system. Pain Med. 2000;1(3):225-230.




光齋久人
悠翔会くらしケアクリニック練馬
東北大学大学院医学系研究科保健学専攻緩和ケア看護学分野
University of Technology Sydney

緩和ケア内科医。自分を見つめなおし、本当は「優しいお医者さん」になりたかったことに気づいて、緩和ケアの世界に飛び込みました。東京で在宅緩和ケアをしながら、研究にも励んでいます。医療現場の「当たり前」を越えて、皆さんがもう一歩患者さんやご家族に寄り添うためのお手伝いができればと思っています。
X:しくじり緩和ケア医@シドニー (@StumblePall
note:つまづき緩和ケア医 (https://note.com/stumblepall

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