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医療現場で当たり前に使っているカタカナやアルファベットの業界用語、「多分英語だからそのままでも外国人患者さんに通じるかも!」と思っていませんか?
じつは、医療現場は通じないカタカナ英語や英語以外の外来語、おかしな造語が飛び交っています。
そんな業界用語に注目し、外国人患者さんに通じる正しい英語の発音やそのポイント、現場で困ったときに使えるフレーズを紹介します。

本日のカタカナ英語:ディーエム

「ディーエムの既往があります」
看護師さんなら「ディーエム=糖尿病」という意味で使ったことや聞いたことがあるのではないでしょうか。
糖尿病は、血糖値(BS)やヘモグロビンA1c(HbA1c)値が基準値よりも高い状態が慢性的に続く疾患です。
記録には「DM」と記載します。

「ディーエム(DM)」は英語だし、そのままでも通じるのでは、とみなさんは思っていませんか?

「ディーエム(DM)」は、英語で「糖尿病」を意味する「Diabetes Mellitus(ダイアビーティス メライタス)」の略語です。「Mellitus」は、「メリタス」とも発音します。
「ディーエム」は、糖尿病の略語として通じません。
記録に「DM」を使っても、会話では「Diabetes」です。
真ん中の「ビ」にアクセントを置いて「ダイアビーティス(dàiəbíːtiːz)」が英語に近い発音です。

さて、せっかくなので「Diabetes Mellitus」の語源と「糖尿病」の歴史に少し触れてみましょう。

「Diabetes Mellitus」の名称は、紀元前2世紀までさかのぼります。
飲んだ水が水道の蛇口をひねったかのように尿として絶え間なく流れ出す様子を、ギリシャ語で「水が流れる・通り過ぎる」という意味の「サイフォン」と呼んでいました。このラテン語が「Diabetes」です。そして、「蜜のように甘い」という意味の「Mellitus」とくっつきます。
西洋では、糖尿病の代表的な症状である「頻尿」が名称の由来です。

一方、紀元前の中国では、糖尿病を「消渇」と呼ばれていました。
これは、糖尿病の代表的な症状である「のどの渇き」が由来です。
西洋と東洋で、名称の由来が異なるっておもしろいですよね。

まず日本に中国の名称が伝わり、糖尿病は「消渇」と呼ばれていました。
その後、西洋の名称が伝わり、「Mellitus」に由来して「蜜尿病」と呼ばれるようになりました。

明治期まで「蜜尿病」が一般的な名称でしたが、1907年の日本内科学会以降、現在の「糖尿病」に統一されました。
「糖尿病」が、「消渇」や「蜜尿病」と呼ばれていた時期があるなんて不思議ですよね。

そのうち、「糖尿病」も新しい名称に変わる日が来るかもしれませんね。

Do you have a family history of diabetes ?
(家族に糖尿病の方はいらっしゃいますか?)





30歳を過ぎてからアメリカで看護師をめざした私は、偉人たちの言葉や名言に何度も背中を押してもらい、一歩ずつ前に進む勇気をもらいました。
人はみな、多かれ少なかれ何かに悩んでいます。
そんなときに立ち止まってほしい言葉を紹介します。


貧困や病に苦しむ人々の救済に生涯をささげ、ノーベル平和賞を受賞したマザー・テレサ(Mother Teresa)の言葉です。
「kind words」とは、「Hello」「Thank you」「That's nice」「I like it」「I'm happy for you」「You are welcome」などです。どれも笑顔で手短に気持ちを伝えられる言葉ですよね。
優しい言葉をかけられるとうれしいものです。
そして、今度は自分がその言葉をだれかにかけたくなりませんか? 

それが今日の言葉の意味です。

「their echoes are truly endless」は「その響きは永遠である」と訳しました。
こだまのように優しい言葉が遠くまで響き渡る様子を想像してみてください。
人から人へ優しい言葉が、さざ波のように伝わっていきます。
マザー・テレサは、長ったらしい親切なことばなど必要ない、シンプルな言葉こそ相手の記憶に残り続けると語っています。

反対に、不親切な言葉だとどうでしょうか?
どの言葉にも波紋をつくる重さがあります。
不親切な言葉の近くにいる人は、その波紋の影響を受けます。だから、悪口や陰口ばかりいう人のそばにいることは、害なのです。

そうはいっても、たまにグチりたくなる気持ちはわかります。
一瞬スカッとしますからね。
でも、言葉には重さがあり自分のなかに蓄積することは覚えておきましょう。
紙のように軽くても、ちりも積もれば山となりますから、グチり過ぎは禁物です。
自分の言葉が、そのまま相手からの評価になります。

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佐藤まりこ
生まれも育ちも北海道。しかし、寒いのが苦手で大学卒業とともに上京し大学病院に勤務。さらなる暖かさを求めて2009年、米国・ロサンゼルスに留学。2010年、California RN(Registered Nurse) Licenseを取得するが就職先が見つからず無念の帰国。2012年、駐在妻として米国・オレンジカウンティーにカムバック。2013年、Refresher/Reenter-Update Education Programで総合病院の急性期病棟実習を修了。その後、念願のRNとして内視鏡センターに勤務し充実した日々を送るが、2016年、夫が日本に帰りたいと言い出しふたたび無念の帰国。帰国後は、子育てに奮闘しながらも幸せな田舎暮らしを謳歌し大学病院に勤務中。
幸せな時間は、「川の字で寝る休日のお昼寝」。