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医療現場で当たり前に使っているカタカナやアルファベットの業界用語、「多分英語だからそのままでも外国人患者さんに通じるかも!」と思っていませんか?
じつは、医療現場は通じないカタカナ英語や英語以外の外来語、おかしな造語が飛び交っています。
そんな業界用語に注目し、外国人患者さんに通じる正しい英語の発音やそのポイント、現場で困ったときに使えるフレーズを紹介します。

本日のカタカナ英語:プラセボ

「プラセボつかいます」
看護師さんなら「プラセボ=偽薬」という意味で使ったことや聞いたことがあるのではないでしょうか。
「プラセボ」は、見た目は本物の薬ですが、有効成分が入っていないダミーの薬です。
治験の薬効評価の対照としても用いられます。

「プラセボ」はカタカナだし、そのままでも通じる英語なのでは、とみなさんは思っていませんか?

「プラセボ」は、英語で「placebo」ですが、ローマ字読みでは通じません。

「placebo」の「ce」は、「セ」ではなく「スィー」と発音します。さらに、この「スィー」にアクセントを置いて、「プラスィーボ」が英語に近い発音です。
「placebo」の語源は、「満足させる・喜ばせる」という意味を持つラテン語です。

現在の「偽薬」という意味で使われるようになったのはかなり前からですが、偽薬によるプラセボ効果が論文として報告されたのは、1955年のことです。
以後、治験はプラセボを対照とする「二重盲検法」によって実施されることになりました。

私が経験した慢性期の病棟や介護施設では、プラセボがよく使われていました。
「睡眠薬がないと眠れない」「薬がないと頭痛で目が覚める」「薬がないと気分が落ち着かない」など薬物依存傾向にある高齢の患者さんに投与するケースが多くありました。

一方で、「患者さんをだましている」という医の倫理も問題となり、プラセボの使用を中止する施設も出るなど混乱した時期もありました。

現在は、プラセボ効果が立証されており、薬物依存防止の観点から患者さんへのプラセボの使用は、それほど抵抗がなくなりつつあると思います。
事実、精神疾患患者のプラセボ効果は絶大で、治験で新薬がプラセボに勝てず、もう新しい精神病薬はできないのではなかと危惧されるほどです。

A placebo is an inactive drug used in a clinical trial.
(プラセボは治験で使われる治療効果のないお薬です)





30歳を過ぎてからアメリカで看護師をめざした私は、偉人たちの言葉や名言に何度も背中を押してもらい、一歩ずつ前に進む勇気をもらいました。
人はみな、多かれ少なかれ何かに悩んでいます。
そんなときに立ち止まってほしい言葉を紹介します。


イギリスの童話作家、ファンタジー作家で「くまのプーさん」の原作者アラン・アレクサンダー・ミルン(Alan Alexander Milne)の言葉です。
今日の言葉は、くまのプーさんに登場する悲観的なロバのぬいぐるみイーヨーの言葉です。物語の中でイーヨーはマイナス思考の持ち主ですが、とてもやさしい心を持っており、さらっと名言を残しています。
「consideration」は「心遣い、気遣い」という意味で、日本人になじみ深い言葉ですよね。
次の「thought for others」は「他人を思うこと=思いやり」です。
アメリカで働いていたとき、同僚の話す英語のスピードについていけず落ち込む日が続きました。そんなある日、1人の同僚が1枚の紙きれを私のポケットに入れていきました。そこには「You're gonna be all right!(大丈夫だよ)」と書かれていました。
みんなに迷惑ばかりかけていると思って働いていたので、この心遣いがとてもうれしくて、どれだけ救われたかわかりません。
ちょっとした同僚の気遣いが、私に大きな勇気とやる気を与えてくれました。
今日の言葉は、自分の体験を通していつまでも大切にし、心にとどめておきたい言葉です。
イーヨーがさらっと発言したように、私もさらっと気遣いのある行動ができるよう意識して働こうと改めて思いました。

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佐藤まりこ
生まれも育ちも北海道。しかし、寒いのが苦手で大学卒業とともに上京し大学病院に勤務。さらなる暖かさを求めて2009年、米国・ロサンゼルスに留学。2010年、California RN(Registered Nurse) Licenseを取得するが就職先が見つからず無念の帰国。2012年、駐在妻として米国・オレンジカウンティーにカムバック。2013年、Refresher/Reenter-Update Education Programで総合病院の急性期病棟実習を修了。その後、念願のRNとして内視鏡センターに勤務し充実した日々を送るが、2016年、夫が日本に帰りたいと言い出しふたたび無念の帰国。帰国後は、子育てに奮闘しながらも幸せな田舎暮らしを謳歌し大学病院に勤務中。
幸せな時間は、「川の字で寝る休日のお昼寝」。