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医療現場で当たり前に使っているカタカナやアルファベットの業界用語、「多分英語だからそのままでも外国人患者さんに通じるかも!」と思っていませんか?
じつは、医療現場は通じないカタカナ英語や英語以外の外来語、おかしな造語が飛び交っています。
そんな業界用語に注目し、外国人患者さんに通じる正しい英語の発音やそのポイント、現場で困ったときに使えるフレーズを紹介します。
本日のカタカナ英語:アポる
「リハ中にアポったらしい」
看護師さんなら「アポる=脳梗塞」という意味で使ったことや聞いたことがあるのではないでしょうか。
とくに、外科系や心臓・脳血管系の病棟で耳にする機会が多いかもしれません。
「アポ(る)」はカタカナだし、そのままでも通じる英語なのでは、とみなさんは思っていませんか?
「アポる」は、英語で「卒中」を意味する「Apoplexy(アパプレクシィー)」のはじめをローマ字読みし、さいごに「る」をつけて動詞化した造語です。
現在、「Apoplexy」は「脳卒中」という意味では使いません。
英語で「脳卒中」は「stroke」です。
ただし、医療機関で脳梗塞・脳出血・くも膜下出血などの総称は、「脳卒中」ではなく「脳血管障害」が使われています。
みなさん、「卒中ってなに?」と疑問に思ったことはありませんか?
家庭医学大全科によると、「卒中」の語源は「卒然(突然)邪気や邪風に中(あた)って倒れる」だそうです。
古の時代、脳卒中を発症しとつぜん動かなくなっても原因はわからず、経過観察と介護くらいしか手立てがありませんでした。まさに突然倒れる「卒中」が、状態を表す適切な表現だったのでしょう。
現在は、医学の進歩により突然倒れた原因が脳血管障害によるものかを突き止めて、適切な治療が可能となりました。それに合わせて名称も変化しているのですが、「アポる」という業界用語だけはそのまま受け継がれているようです。
•If you suspect a stroke, call 119 immediately and ask for an ambulance.
(脳卒中を疑ったら、すぐに119に電話して救急車を呼んでください)
30歳を過ぎてからアメリカで看護師をめざした私は、偉人たちの言葉や名言に何度も背中を押してもらい、一歩ずつ前に進む勇気をもらいました。
人はみな、多かれ少なかれ何かに悩んでいます。
そんなときに立ち止まってほしい言葉を紹介します。
今日の言葉は、歌や映画のタイトル、パッケージやTシャツのデザインなどさまざまなところで使用されています。
「seize」は「~をつかむ」という意味ですが、たんにつかむのではなく、サッと握ったら力づくでつかみ取るイメージがあります。
「seize the day」の由来は、さかのぼること紀元前1世紀、古代ローマの詩人ホラティウスの詩に登場するラテン語「Carpe diem(カルペ・ディエム)」といわれています。
この詩は、「知らずとよいことを、知ろうとするな」という一節から始まるそうです。
「知らずとよいこと」とは、未来のことです。
「未来を気にせず今を生きろ」というメッセージは、2000年という時を超えて若者の心に響き、生きる道しるべとして未来に受け継がれています。
そして、私もこのメッセージに影響を受けたひとりです。
20代後半、私はこんなことを考えていました。
“なんとなく働いて、なんとなく生活が成り立っている。世間からみると困らない生活かもしれないが、生きるエネルギーや好奇心・直観力は消えかかっている。これで本当にいいのか?”
「seize the day」は、私の生き方を180度変えてくれた言葉です。
今を生きると決めたとき、目線は遠くぼやけた未来からはっきり見える足元に変わり、落ちているチャンスや出会いは雪の結晶のように一瞬で消え去ってしまうことを学びました。
だから、「つかむ」は「grab」でも「catch」でも「hold」でもない。「seize」なんです。
40代の今、今日の言葉は昔ほど心に響くことはありませんが、ずっと心に持ち続け、未来に届けたい言葉として温めています。
やりたいことに一歩足が踏み出せないとき、道が二手に分かれて悩んでいるとき、今日の言葉「seize the day」があなたの背中を押してくれるかもしれません。
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佐藤まりこ
生まれも育ちも北海道。しかし、寒いのが苦手で大学卒業とともに上京し大学病院に勤務。さらなる暖かさを求めて2009年、米国・ロサンゼルスに留学。2010年、California RN(Registered Nurse) Licenseを取得するが就職先が見つからず無念の帰国。2012年、駐在妻として米国・オレンジカウンティーにカムバック。2013年、Refresher/Reenter-Update Education Programで総合病院の急性期病棟実習を修了。その後、念願のRNとして内視鏡センターに勤務し充実した日々を送るが、2016年、夫が日本に帰りたいと言い出しふたたび無念の帰国。帰国後は、子育てに奮闘しながらも幸せな田舎暮らしを謳歌し大学病院に勤務中。
幸せな時間は、「川の字で寝る休日のお昼寝」。