▼バックナンバーを読む

医療現場で当たり前に使っているカタカナやアルファベットの業界用語、「多分英語だからそのままでも外国人患者さんに通じるかも!」と思っていませんか?
じつは、医療現場は通じないカタカナ英語や英語以外の外来語、おかしな造語が飛び交っています。
そんな業界用語に注目し、外国人患者さんに通じる正しい英語の発音やそのポイント、現場で困ったときに使えるフレーズを紹介します。

本日のカタカナ英語:ワゴる/ワゴトミー

「ワゴった」
看護師さんなら「ワゴる=迷走神経反射」という意味で使ったことや聞いたことがあるのではないでしょうか。
施設によっては、「ワゴトミー」と言われています。

迷走神経反射とは、強い痛みや緊張などによる刺激が迷走神経を介して、脳の血管運動中枢を刺激し、血圧低下や徐脈、顔面蒼白、嘔吐、失神などの症状をきたす生理的反応です。
最近遭遇したワゴッた症例は、胸腔ドレーン挿入です。
胸腔ドレーンが右胸腔部に入った途端、患者さんの脈拍は40台に低下し顔面蒼白と悪心が出現しました。この患者さんは数秒で回復しましたが、必要があれば、アトロピン投与など緊急処置が必要です。患者さんに強い痛みやストレスがかかる処置の介助につくときは、救急カートを用意しましょう。

「ワゴる/ワゴトミー」はカタカナだし、そのままでも通じる英語なのでは、とみなさんは思っていませんか?

「ワゴトミー」は、英語で迷走神経の緊張状態を表す「vagotony」のドイツ語読みなので、英語としては通じません。通じる英語にするには、頭文字の「ワ」を「ヴェ」にして、「ヴェガトニー」が英語に近い発音です。

せっかく迷走神経に触れたので、すこし迷走神経に関する英語の紹介をしましょう。
まず、「迷走」という言葉に疑問を思ったことはありませんか?

「迷走神経」は、英語で「vagus nerve」です。
「vagus」は、ラテン語由来で「wandering(さまよう、放浪する)」という意味があります。
迷走神経は、脳神経のなかで唯一腹部まで到達するいちばん長い神経で、もっとも複雑な走行をしていることからこの名がつけられたようです。

「迷走神経反射」は英語で「vagal response or vagal reflex」です。
「vagal」は、「V」の発音を意識して「ヴェイゴル」が英語に近い発音です。
迷走神経反射によって起こるさまざまな症状は、交感神経が抑制され副交感神経が緊張することが原因です。

「交感神経」は英語で「sympathetic nerve」、「副交感神経」は「側」や「副」を意味する接頭語「para-」が付いて「parasympathetic nerve」です。
医療現場で使われる、医師と協同して医療を行う医療専門職種の総称「パラメディカル」の「パラ」は、この接頭語がついたものです。ちなみに、同じ意味で使われている「コメディカル」は和製英語なので通じません。

•Some symptoms during a stressful procedure such as cold sweating, dizziness, or turning pale etc. are caused by vagal response.
(ストレスのかかる処置の最中に起こる冷や汗やめまい・顔面蒼白などの症状は、迷走神経反射が原因です)





30歳を過ぎてからアメリカで看護師をめざした私は、偉人たちの言葉や名言に何度も背中を押してもらい、一歩ずつ前に進む勇気をもらいました。
人はみな、多かれ少なかれ何かに悩んでいます。
そんなときに立ち止まってほしい言葉を紹介します。


前回も紹介したアメリカの作家、ロイ・T・ベネット(Roy T. Bennett)の言葉です。彼の想像力豊かでポジティブな考え方は、多くの人の心に響く言葉を生み出しています。

「great things happen to those who~」は、「~な人には素晴らしいことが起こる」という意味です。30代のころは、正直そこまで心に響く言葉ではなく「すこし周りへの感謝が足りないから気を付けないと……」程度にとどまりました。

40代の今、この言葉を振り返ってみるとちょっとドキッとします。
「自分はもう無理かも……」
「今から新しいことを始めても……」
「勉強してこれから何に生かせるだろう……」
「感謝するよりしてほしい……」など、素晴らしいことが起こる条件から自分が遠ざかっていることに気づきます。

「自分はまだできる!」
「新しいことはすすんで挑戦!」
「人生は生涯勉強!」
「ありがとうの一言は忘れない!」
を、胸に刻んで日々丁寧に歩んでいこうと改めて思います。

------------------------------------------
佐藤まりこ
生まれも育ちも北海道。しかし、寒いのが苦手で大学卒業とともに上京し大学病院に勤務。さらなる暖かさを求めて2009年、米国・ロサンゼルスに留学。2010年、California RN(Registered Nurse) Licenseを取得するが就職先が見つからず無念の帰国。2012年、駐在妻として米国・オレンジカウンティーにカムバック。2013年、Refresher/Reenter-Update Education Programで総合病院の急性期病棟実習を修了。その後、念願のRNとして内視鏡センターに勤務し充実した日々を送るが、2016年、夫が日本に帰りたいと言い出しふたたび無念の帰国。帰国後は、子育てに奮闘しながらも幸せな田舎暮らしを謳歌し大学病院に勤務中。
幸せな時間は、「川の字で寝る休日のお昼寝」。