荒川 弘之 あらかわ・ひろゆき
エルムスユナイテッド未来医療研究所
代表取締役所長・社長/
エルムスユナイテッド動物病院グループ


藤間 裕子 ふじま・ゆうこ
エルムスユナイテッド未来医療研究所
取締役・事業統括部門長/
エルムスユナイテッド動物病院グループ


宮﨑 徹 みやざき・とおる
一般社団法人AIM医学研究所 代表理事・所長


ネコの慢性腎臓病(CKD)で起こる病理学的変化


 慢性腎臓病(CKD)の特徴
ネコの慢性腎臓病(chronic kidney disease;CKD)にもっとも多い病理学的変化は、慢性尿細管間質性腎炎(chronic tubulointer stitial nephritis;CTIN)です。おもにネフロンの近位尿細管上皮細胞の障害に伴う細胞死の結果、細胞の死骸や炎症性のダメージ関連分子パターン(danger—associated molecular patterns;DAMPs)などのデブリが尿細管を閉塞し、原尿の排泄障害や細胞ストレスが高ま ることで尿細管機能のさらなる障害、ひいては慢性炎症や間質の線維化をひき起こします。

そうした病態が波及するかたちで糸球体の機能異常が生じ、糸球体濾過量(glomerular filtration rate;GFR)の低下を招きます。こう した慢性炎症は別のネフロンにも波及し、あたかもゆっくりと燃え続ける山火事のごとく、腎臓全体が破壊されていきます。これが、CKDの特徴といえます。


 CKDでは症状がゆっくりと進行する
こうした変化が多くのネフロンで一斉に生じる急性腎障害(acute kidney injury;AKI)と異なり、CKDでは個々のネフロンが一個、ま た一個と徐々に死滅してゆくため、腎臓全体では症状が緩徐に進行します。初期には臨床症状が認められにくく、飼い主が気づいたときには病態が末期に近い状態まで進行している場合も多いです。

ネコのCKDの症状と生存期間


 比較的早期からみられる症状
比較的早期からみられる症状として、腎機能が低下することによる代償反応としての多飲・多尿があります。ただし、この変化は日常生活のなかでは見過ごされやすく、食欲にも変化がない場合が多いため、飼い主が異常として認識しにくい症状といえます。病期が進行すると、食べむらや活動性の低下、毛艶の悪化がみられるようになりますが、全身状態はほぼ良好のままです。

 CKDが進行するとみられる症状
ところが、International Renal Interest Society(IRIS)のステージ4(第1回参照)まで進行すると、食欲低下や嘔吐、便秘、口臭、 口内炎、筋力低下、けいれんといった尿毒症症状が急激に現れ、ネコの全身状態は急速に悪化し、半年から1年以内に死亡するケースが多くなります。Boydらの報告によると、ステージ4のネコの生存期間の中央値は104日です1)。

引用・参考文献
1)Boyd, LM. et al. Survival in cats with naturally occurring chronic kidney disease(2000—2002). J. Vet. Intern. Med. 22(5), 2008, 1111—7.

今日のがんばる家族



名前 ▶ あんじぇ
性別 ▶ オス
年齢 ▶ 18歳
種類 ▶ ソマリ
腎臓病歴 ▶ ステージ3の診断から1年

ペットショップでひとめぼれし、生後3か月でわが家へ。人生ではじめてお迎えした猫で、ゴロゴロも知らず、「ぜんそく!?」とあわてて病院に電話したことも(笑)。

お迎え当初は、「なんでわかってくれないの?」と思うこともたびたびでしたが、それはお互いさま。いつのまにか、いろいろなことをあるがままに受け入れることができるようになっていました。お世話しているようでお世話させてくれているのかな……と思ってしまう、わが家の殿です。

18歳でてんかん発作が出て、筋力が弱ってよろめくことが増えても、自力でごはんを食べ、トイレに行き、しっかりと甘え、今日も家族に笑顔と癒やしを届けてくれています。(青森県/しぶ)



「透析ケア」2026年32巻10号より再掲


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*2025年6月当社調査