●執筆
衣笠真紀
兵庫県立こども病院整形外科 医長

病態

先天性内反足は、生まれてくる赤ちゃんの約1,000人に1人の頻度で認める先天的な疾患です。男女比は2:1で、男児に多い傾向です1)。生まれつきの病気(多発性関節拘縮や二分脊椎など)をともなう症候性や麻痺性内反足と、ほかに関連する病気がない特発性内反足は区別されます。

足部の変形は尖足、内転、内反、凹足の4つの要素を含んでいるのが特徴で【図1】、距骨と踵骨、舟状骨の位置関係に異常を認めます。


【図1】両内反足の症例
正面から見ると内反と内転(a)、横から見ると尖足と凹足変形(b)を認める。

診断・検査方法

診断は、視診に加え触診が重要です。一見、内反足のように見える足が、大人の指1本で簡単に矯正できて中間位までもってくることができれば、それは子宮内肢位による内反足様変形であり、先天性内反足とは異なります2)

子宮内肢位由来の内反足様変形は、お母さんのお腹の中で、長い間その姿勢で過ごしていたために残っている変形であり、治療せずに自然に改善します。

一方、先天性内反足は拘縮が強く、容易には中間位まで整復できないため治療をしなければ改善しません。検査はX 線撮影で評価を行い、距骨や踵骨の位置関係などを確認します。

治療

初期治療(Ponseti法)


まずはギプス治療を行います。矯正位を得やすい生後1~2週以内で開始することが望ましいですが、ある程度大きくなってからでもギプスによる矯正は期待できます。

ギプス治療はPonseti法3)に基づき、外来で週1回のギプス矯正を約6週間継続します。ギプス治療中は、週1回の巻き直しの日のみ入浴可能です。ギプス矯正は痛くない範囲で行いますが、赤ちゃんがリラックスした状態で矯正することで効果を最大に引き出せます。そのため、患児には空腹状態で来院してもらい、哺乳瓶でミルクを飲ませながらギプスを巻くようにします【図2】


【図2】Ponseti 法によるギプス加療
哺乳しながらギプスを巻くことで、矯正位を得やすくなる。


その後、残存する尖足に対してはアキレス腱の皮下切腱を行います【図3】 。術後は3週間のギプス固定を行います。


【図3】アキレス腱皮下切腱の術前後
術前は尖足を認めるが(a)、術後は足関節背屈が容易となる(b)。


ギプス除去後は、足部を外転させた状態を保持できるデニスブラウン装具【図4】を装着します。装具開始後の3カ月間は、入浴時以外の終日装着しますが、その後は夜間装具として就寝時のみ装着します。装具の装着は変形の再発予防目的であり、3~4歳まで継続する必要があります。


【図4】デニスブラウン装具
右内反足用の装具だが、バー付きの装具であり両足に装着する必要がある。



内反足の再発や遺残変形に対する手術治療


内反足の再発を認めた場合はPonseti法に基づき、再びギプス治療を行うことは有用です。しかしながら、それでも変形が遺残している場合は手術を要します。

歩行時に足裏全体で荷重ができていない足底接地困難例では、手術が必要です。

手術方法は、尖足に対するアキレス腱延長、足部の内旋位歩行に対する前脛骨筋腱の外側移行術などがあります。また、内反変形には後内方解離術や距骨下解離術を行います4)。さらに、凹足や複数回に及ぶ術後の遺残変形に対しては、骨切り術や創外固定器を使用して矯正を行うこともあります。

予後のポイント

内反足は、適切な治療を受ければ歩行やスポーツも可能となる疾患です。不安を抱えて来院した保護者には、それを明確に伝えることが治療開始の第一歩です。

予後を左右する要因の1つは、デニスブラウン装具をきっちりと装着できているかどうかです。装具をきちんと装着できていないと再発率が高いといわれていますが5)、とくに夜間は泣いて起きるため外してしまう保護者も少なくありません。

しかし、子どもに「泣けば外してもらえる」という癖がつくと装着はますます困難になるため、装具の重要性を繰り返し説明し、理解してもらうことが重要です。装具での対応が不十分な場合は、保護者による足関節の背屈ストレッチ【図5】を指導する必要があります。

さらに、子どもの足は成長とともに変化するため、成長終了までは変形の再発が起こらないか観察を続けていく、つまり外来通院を続けてもらうことが大切です。


【図5】足関節背屈ストレッチ
足関節を可能な範囲で背屈させて保持するストレッチを保護者に指導する。

<引用・参考文献>
1) Herring,JA.et al.Congenital talipes equinovarus(Clubfoot).Tachdjian’s pediatricorthopaedics.Kim Murphy,ed.Philadelphia,Saunders,2008,1070-114.
2) 藤井敏男ほか.“先天性内反足”.小児整形外科の実際.東京,南山堂,2008,112-6.
3) Lynn,S.et al.先天性内反足:Ponseti 法.Ponseti のギプス矯正.Seattle,Global Help,2009,9-18.
4) 薩摩眞一ほか.“先天性内反足に対する全距骨下関節解離術”.小児の四肢手術これだけは知っておきたい.中村茂編.東京,メジカルビュー社,2018,184-93.
5) Thacker,M.et.al.Use of the foot abduction orthosis following Ponseti cast:is it essential?.J Pediatr Orthop.25(2),2005,225-8.



本記事は『整形外科看護』2022年8月号からの再掲載です。


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