みなさん、こんにちは。
前回までのシリーズで、精神科訪問看護場面での大切な心構えや、自分の経験を通じて身に付けた「こう考えたらよいな」と思うことを書いてきました。繰り返しやってみて身につけていくという練習が必要なので、ぜひやってみてくださいね。
管理者の皆さんは、スタッフへの指導や、事業所全体の看護の質の向上、どうすればスタッフがやる気を持ってくれるのか?などは、みなさん悩まれていると思います。私も日々、悩んで迷いながら管理業務を行っています。
今回からは、病院勤務時代に師長も経験してきたなかで取り組んできたことなどをもとに、管理者に向けた「基本のキホン」を取り上げていきたいと思います。
私たちの脳のクセを知っておこう
「ここをもっとこうしたらよいのに」とか、「ここがダメだから直してほしい」など、ついついスタッフに対して思いがちになります。「もっとこうしたら」と考えるのは、管理者であるあなたが「この現場をもっとよくしたい」という熱い気持ちで取り組んでいるからだとも思います。
でも、悪いところや修正しないといけないスタッフの行動のことを考えると、気が重くなることはありませんか? その思いに支配されてしまうと、関係性が悪くなることは否めませんよね。
そもそも、人の脳はネガテイブな方向に傾きやすいといわれています。それは危機管理能力の視点からはとても大切なことです。そうした人間の脳のクセを理解したうえで、上手に切り返していく方法をお伝えします。
相手の良いところへと視点を切り替える
精神科看護にも通じることですが、「人の良いところ(ストレングス)を意識して見ていこう」が、今回いちばん言いたいことです。人の良い部分を見るのは、前述の脳の特徴(クセ)からしても「訓練」だと思います。
たとえば、ゆっくり仕事をして処理が遅いスタッフがいたら、イライラしてしまうこともあるでしょう。そんなときに、「ああ、でもゆっくりなのは丁寧にしっかりと報告書を書いてくれているからかも」と言い換えます。すると、「そういえばあの人はいつも仕事が丁寧だわ」というふうに、丁寧だから信頼できるとその人の良さにつながっていくでしょう。
あなたの目に付く「直してほしいところ」の裏には、良い部分があります。つねに逆に言い換えて考えてみるクセを身につけると、視野が広がりますよ。
それが好循環になる
良いところを見るクセをつけると、管理者としての態度も柔らかくなりますよね。ピリピリした管理者には、怖くてなにも言えません。仕事は関係性が悪いとパフォーマンスが上がらないので、良い仕事のためによい関係性であることを、とくに心掛けています。仲良しこよしになる必要はないですが、「良さをわかっている」ということは、「信頼している」という感覚として伝わると思います。信頼されるとだれでもうれしいので、良い関係づくりの好循環ができてきます。
良いところを見るには自分の余裕も大事
でも、理屈ではこうしたことがわかっても、管理者自身が疲弊していたらそれどころではありません。
ここでも意識的に「気分転換」をすることが大事です。5分でも10分でも1人になってぼーっとする時間をつくってみてください。私はコーヒータイムをつくって目を閉じたりしています。たった数分ですが、ぜんぜん違いますよ。
良い看護チームができると「良い看護」につながり、利用者さんの利益にもなりますよね。
では今日はこのへんで。
訪問看護ステーションふく・ふく代表・管理者/精神科認定看護師
精神科看護に長年魅了されています。地域で水が流れるように精神科看護を浸透させたい!そんな思いで2023年8月に訪問看護事業所を立ち上げました。
訪問看護につながる手前の方にも、よくお話をしに伺います。人生をどのように過ごしたいか、希望はなにか?そんなことを会話のなかから探り、ストレングスの視点でかかわることが大好きです。精神科看護に魅了され、わくわく働ける看護師を多く育成したいと思っています。
時間があると登山をしながら日本中を旅しています。四季折々の日本の山々に包まれて至福のときを過ごしています。