みなさんこんにちは!
さてさて、今回からPCIの話をしていきますね。
PCIはさまざまな道具(デバイス)を使って進められていきます。そのデバイスを使うことによって患者さんに侵襲を与えていくことになります。侵襲は治療効果が得られるもので、良いことがほとんどですが、良くないことを起こしてしまうこともしばしばあります。
私たちカテスタッフが、その良くない影響を最低限に留めなくてはなりません。そのためには、そのデバイスを知り、どのようなことが起こりうるのかを知っておかなくてはなりません。デバイスのことを知っておかなくてはならないのは、医師や臨床工学技士だけではないんですね。
ここでは、あまりマニアックにはならないように、デバイスにはどのような効果があり、どのような良くないことが起こるのか、それを見極める方法や見ておかなくてはならないポイントなどについてお話ししていきます。
カテ後の患者さんを看る病棟看護師さんにも役立つお話しをしていきますので、お付き合いのほどお願いいたします。
造影カテーテルとガイディングカテーテル、その違いは?
さて、PCIのときにまず登場するのはガイディングカテーテルというものです。カテーテルには、造影カテーテルとガイディングカテーテルの2種類があるのです。
太さの違い
造影カテーテルは4Fr(よんフレンチ=よんフレ)が使われることが多いですが、ガイディングカテーテルは6Frや7Fr、場合によっては5Frや8Frなどの太さが使われます。
この太さの選択は、PCIで使われるデバイスによってまず変わってきます。現在のPCIでは、ほとんどの症例は6Frで用が足ります。しかし、特殊なデバイス(削ったりするデバイスなど)を使う予定のときには太くして7Frや8Frを選択することがあります。逆に、風船やステントしか使わない予定の場合は、5Frを使う場合もあります。
構造の違いは?
ガイディングカテーテルは造影カテーテルに比べてしっかりとした構造をしています。分解してみると、ガイディングカテーテルは3層構造になっており、風船などのデバイスが中を通ってもしっかりと冠動脈まで通過させることができます。
サイドホール?!
ほとんどの造影カテーテルには、カテーテルの途中に穴が開いています。これは細いカテーテルを通じて造影剤を注入する際に、圧がかかりすぎて注入できないことを防ぐためです。しかし、ガイディングカテーテルには、通常は穴が開いていません。これは造影カテーテルより太いからです。
ガイディングカテーテルにも穴が開いているカテーテルがあり、形状の名前に「SH(=サイドホール)」って付いています(図1)。
これは、例えば冠動脈の入口に病変がある場合、カテーテルの太さによってスッポリとカテーテルがはまり、血流がなくなってしまうのを防ぐためのもので、そのサイドホールから血流を取り入れ、冠動脈内に血流を流すために用いられます。
必要性がある場合にのみサイドホール付きのカテーテルが用いられます。出し間違いに注意ですね。サイドホール付きのカテーテルは、その穴から造影剤が漏れるため、造影剤投与量が増えてしまうデメリットがあります。
Yコネがいる!
ガイディングカテーテルのお尻には、Yコネというものを付ける必要があります。このYコネには弁が付いていて、スイッチを押すと口がパックリと開いて、治療デバイスを入れることができます。そのほかのときには口を閉じてカテーテルからの出血を防ぐことができます(図2)。
ガイディングカテーテルの役割は次の3つです。
①造影剤を注入する
②カテーテル先の圧(観血血圧)を伝える
③デバイスを挿入する
ガイディングカテーテルがしっかりと冠動脈に向かって入っているということがとても大切で、PCI成功の要因の8割はガイディングカテーテルの選択であるとよく聞きます。みなさんの施設にもたくさんのガイディングカテーテルがあると思いますが、患者さんに合わせた(大動脈のカタチ・冠動脈のカタチ・病変の硬さなど)カテーテルを選択する必要があります。これによって、デバイスが病変まで挿入できる、できないが決まってくる場合があります。デバイスが病変部に入っていかないとPCIはできないですからね。
最後に大切なこと
ガイディングカテーテルは、以下のようにカテーテル先の状況を私たちに伝えてくれます。
①患者さんの血圧は大丈夫?
カテ中は血圧のモニタリングを欠かさないようにしましょう。
②カテーテルはスッポリと冠動脈に入っていませんか?
観血血圧が低く表示されたりします。また、それによって冠動脈に血流がなくなり心電図のST変化とともに胸部症状が出てくることがあります。
③カテ先が血管や動脈硬化に当たってませんか?
観血血圧が低く表示されたりします。造影剤を入れたり、デバイスを無理に入れていくと、血管が裂けてしまうかもしれません。
④Yコネが開いたままで出血はしてませんか?
観血血圧が低く表示されます。観血血圧をモニタリングしていて圧が出ない理由が思い当たらない場合は、必ず術者に声かけしましょう。
カテ中、観血血圧のモニタリングを欠かしてはなりません。
血圧が変動したとき、なぜ下がったのか? なぜ上がったのか? その理由を考えることが大切です。特に血圧の変動の理由が見当たらないときは術者に一声かけましょう。術者とコミュニケーションを取って合併症予防に努めなくてはなりませんね。
ということで、今回はここまで。
また、次回もよろしくお願いします!
新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人
メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。