みなさんこんにちは!
今回は血管内診断についてお話ししていきます。詳しいお話は置いてといて、もっとも基礎の基礎的なお話だけをしていきます。詳しい方にとっては物足りない内容になるかと思いますが、少しだけお付き合いお願いします。

血管内診断は何を観察しているか

冠動脈の診断には、4つの「視点」があります。
①心臓全体を観察して冠動脈の評価をする=心電図や心エコー
②冠動脈を外の見た目から評価する=冠動脈CTや冠動脈造影
③冠動脈の中から心筋への血液供給状態を評価する=FFRなど
④冠動脈の中から血管の内側の見た目を評価する=血管内診断→IVUS・OCTなど


今回は④についてお話をしていきます。

まずは#005「動脈硬化ってこうやってできるんだ!その① ~サバ缶と豆腐~」と#006「動脈硬化ってこうやってできるんだ!その②~正義の味方?! マクロファージの登場!かと思いきや~」を読み返してみてください。

上記の2回では動脈硬化(=プラーク)の作られ方をお話しさせていただいています。動脈硬化はさまざまな過程で作られていきます。その過程ではさまざまな組織が作られていくのです。コレステロールの塊があったり、カルシウムの塊があったり、それを覆う線維組織があったりと、動脈硬化は一つの塊ではなく、さまざまな組織から作られます。

血管内診断は、そのプラークがどのようなものから形成されているのか?というのを観察するものなのです。

IVUS(intravascular ultrasound:血管内超音波アイバス)は、超音波を使って血管内の様子を観察するものです。超音波は組織の硬さから色が変わります。柔らかいものは黒、硬いものは白く見えるのです。例えば、水は黒、骨は白という具合です。動脈硬化でいうと、コレステロールの塊(=リピット)は油の塊なので黒く見えます。カルシウムの塊(=石灰化)は石のような塊なので白く、時には白く輝いて見えます。

ちなみに、OCT(=optical coherence tomography:光干渉断層撮影法)の色は、IVUSの逆に見えてくるかと思います。

IVUSでの観察ポイント

では、IVUSでどのようなことについて観察しているのか?をお話ししていきます。IVUSで動脈硬化を観察するポイント4つ(PCI前)は次の通りです(図1)。順に見ていきましょう。

①血管の3層構造(内膜・中膜・外膜)の観察 (#005
②動脈硬化がどのような組織なのか?
③動脈硬化はどのような位置にあるのか?
④血管径と内腔径そして動脈硬化の長さ

①血管の3層構造(内膜・中膜・外膜)の観察

まずは血管の内膜・中膜・外膜の3層構造を観察します。とはいえIVUSでは内膜は薄すぎて観察することはできません。中膜は黒く抜けたように見えます。これを目印に血管構造を観察します。その中膜がIVUSの中心から外側にあることが、IVUSが血管内にあることを証明します。また、外膜の外側には心外膜や静脈が見えてくることがあります。これらも合わせて観察して全体のオリエンテーションを捉えます。

②動脈硬化がどのような組織なのか?

前述しましたが、IVUSでは組織ごとに色を変えて観察することができます。リピット(コレステロールの塊)が多めなのか? 石灰化が多めなのか? 線維性組織は分厚め? 血栓があるのか? などを観察します。それによって、最初に風船で拡張するのか? ステントをいきなり入れるのか(ダイレクトステント)? スコアリングバルーンで拡張するのか? 削るのか? などの治療の方法が検討されます。

③動脈硬化はどのような位置にあるのか?

IVUSによって動脈硬化がどのような位置にあるのか? というのを観察します。これは主に冠動脈造影とコラボして観察していきます。動脈硬化は血管の側枝がある分岐部に多く存在します。IVUSを見る前にまずは冠動脈造影をよく観察します。血管の外側からどこが細くなっているのか? そこに側枝があるのか? 側枝があれば、それは太いのか? その側枝と動脈硬化の位置関係は? 動脈硬化は側枝側か? それとも反対側か? などを観察しておきます。その情報を基にIVUSを観察すると側枝を目印に、いまどこを観察しているのかがわかってきます。
血管の外側と内側で動脈硬化の形・位置を十分に観察した上でPCIを行います。

④血管径と内腔径そして動脈硬化の長さ

血管径と内腔径・病変長の計測をします。血管径と内腔径の計測は病変の末梢側(奥)・イチバン細いところ(病変部)・中枢側(手前)の少なくともこの3点を計測します。このなかでも大切なのは末梢側の血管径の計測です。通常、血管径は奥に行けば行くほど細くなっていきます。もし、末梢側の血管径を超えるサイズの風船やステントを選択してしまうと冠動脈が破裂する可能性があるので、特に末梢の血管径を計測し、それ以上のサイズのデバイス選択にならないようにします。

病変長に関しては、まずは治療対象となる動脈硬化の最短の長さを計測します。そしてその末梢側と中枢側をみてどれくらいの余裕があるのかを確認します。余裕っていうのは、新たな動脈硬化がもしある場合どのくらい先にあるのか? 側枝がある場合そこからどのくらい先にあるのか? もし以前にステントを入れていた場合そのステントまではどれくらいの長さなのか? などを計測しておきます。


今回は、IVUSの基本的にみるところについてお話ししました。
いろいろあっちこっち見るのではなく、まずは基本を抑えましょう!
難しいことはそれからね!

今回はここまで!
ありがとうございました。

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プロフィール:野崎暢仁
新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人

メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。