みなさんこんにちは。

さて、「安全・安心な医療を」といつも言うけれど、安全・安心な医療ってなんでしょうか?

私たちは心カテ室の中で、患者さんやチームの仲間の近くにいて、患者さん・チームの仲間の安全・安心を守っています。

では、イチバン安全に治療を提供するには? イチバン安心して治療を受けていただくには?

今回からはこんなことをみなさんとともに考えてみたいと思います。

まずは、患者さんの入室前から考えてみましょう。

イチバン安全に、イチバン安心して:患者さん入室前

環境を整える~薬編~

まずは救急処置薬剤の在庫確認と点検、準備をやっておくこと。何より器材・薬剤がなければ始まりません。定数通りありますか? 期限は大丈夫? 確認しておきましょう。イチバン大切なこと、それはあなたがその薬剤を使うことはできますか? ということ。

この薬剤はどんなときに? この薬剤を使ったらどうなるのか? この薬剤はショット? 点滴? どれくらい? 知っておかないとバタバタしているときに困りますね。

いざというときのための薬剤は、当然のことながら薬剤の調剤方法や投与方法などはルールがあって、そのルールが、すべての医師が納得の方法であること。バタバタしているときに事細かな投与方法を初めて聞くのではなく、あらかじめカンファレンス等で医師・カテスタッフのあいだで話し合われていることが大切ですね。

環境を整える~器材編~

そして救急処置器材の在庫確認と点検、準備もやっておくこと。器材を使うことはできますか? 器材を使うために必要なものは揃っていますか? 例えば喉頭鏡の豆電球・電池は切れていませんか? 除細動器のジェルはありますか? 備品を確認することも大切です。

器材は日ごろから使い方をシミュレーションしておき、いざ使うときにはその器材に慣れていることが大切です。「慣れてないから仕方がないね」ではダメなんです。

例えば、除細動器を使うタイミングは突然やってきます。緊急カテのときだけじゃありません。心カテではどの症例でも除細動を使うシチュエーションはあります。最初は先輩といっしょに入っているときに……なんていうことは期待しないほうがいいでしょう。毎日、除細動器は点検しているかと思います。せっかく点検するなら、実際に使っているときをシミュレーションしながら点検すると一石二鳥です。

これは除細動器だけではありません。ペースメーカー・呼吸器・PCPS・IABPなど、ふだんの症例では使わないけど、稀に使うことになったときのために、絶対に必要になるときのために。

こうして毎日の点検で触っていると、きっと慣れて自信が湧いてくるのではないでしょうか。

情報をもつ~患者さんを知る~

迎え入れる患者さんのことは知っておくべきです。例えば腎機能。心カテで造影剤から腎機能を守るのはまさにチーム力です。それは、チームのみんなが同じ情報を持つことが大切ということです。

この患者さんの術前の腎機能はどれくらいなのか? 考えられる影響は? それを知ったうえ、術中の造影剤投与量のみならず、輸液量や尿量を確認します。

造影剤はもちろん必要以上の投与をしてはなりませんが、安全に治療を完結するためには、そのための必要量は投与しなくてはなりません。カテ中は、いま現在の投与量はどれくらいなのか? 輸液量と尿量を合わせてチーム全体に伝えることによって、術者やアシスタントは撮影回数や造影剤投与設定のコントロール、外回りは輸液速度のコントロール、ときには利尿薬の投与(尿バルーンが入ってるとき)が行われます。

終了時の結果だけではなく、特に長時間に渡る心カテでは1時間毎などにin-outを確認しましょう。これを病棟スタッフに申し伝えることも大切です。

カテスタッフ全員が同じ情報を持ち、その情報をもとにそれぞれの視点から患者さんが安全・安心して治療を受けてもらえるようにしておくことが大切です。どのような情報を持っておくべきなのかは、またゆっくりとお話ししたいと思います。



イチバン安全に・イチバン安心な治療を提供するために、次回以降、患者さんの入室からカテーテルが進んでいく順に、それぞれのシチュエーションごとに考えておきたいことについてお話しを続けていきたいと思います。

それでは、今回はここまで。
ありがとうございました。

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プロフィール:野崎暢仁
新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人

メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。