こんにちは。
カテ室ではいろんなことが起こりますね。マニュアルには載っていないようなことがいろいろ起こるので、そのときどきの臨機応変な対応が必要になってきます。ただ、そのためには準備も必要ですね。あらゆることを予測して、何かあっても臨機応変な対応ができる準備をしておくことが大切です。
さてさて今回は、造影剤について考えてみましょう。
造影剤は、造影検査にはなくてはならないのはもちろんのことですが、薬にも医療にも、作用があれば副作用もあるのです。
造影剤による副作用としては、
・造影剤アレルギー
・造影剤腎症
について考えておかなくてはいけません。
造影剤アレルギーについては#027でもチラッと触れましたが、今回もう一度、造影剤アレルギーについて少し詳しく考えてみましょう。
造影剤アレルギーのポイント
造影剤の量に比例してアレルギーのリスクが増すわけでなく、少量でもアレルギー症状は起こります。また、造影剤の種類を変えたからといって安心できるわけではありません。症状は人によって異なり、必ず起こる症状というものもありません。
実際の造影剤アレルギーの症状としては、皮膚症状、急激な血圧低下、呼吸器症状が挙げられます(図1)。順番にお話ししていきます。
皮膚症状
造影剤アレルギーでよくみられる症状の一つとして皮膚症状があります。全身が真っ赤になる場合もあれば、一部分が赤くなる場合(発赤)や、蕁麻疹が出る場合があります。また、そのときに痒み(掻痒感)なども併せて出てくる場合があります。
経験的には、そのような症状は首や脇などにまず出てくる印象です。カテ中は患者さんにはドレープがかかっていますので、ドレープをめくって首筋や脇などに発赤などが出ていないか観察しましょう。
急激な血圧低下
造影剤アレルギーの症状のなかで怖い症状の一つが血圧低下です。
造影剤が入っているということは、観血的血圧測定がされている状況だと思います。まずは、つねにしっかりとモニタリングを続けることが大切です。
ただし、カテーテルの中に造影剤が入っていると圧波形が鈍ったり(なまったり)、実際の血圧より低く表示されたり、造影中は圧波形が消えたりします。そのため、そのほかのバイタルサインでも血圧を監視することが必要です。
もちろんNIBP(マンシェットの血圧)も有効ですが、患者さんの様子も立派なバイタルサインです。生あくびや顔面蒼白、冷汗、急な便意なども急激な血圧低下のサインである場合があります。数字や波形だけでなく、患者さんの症状などを併せて監視してください。
逆に、観血的血圧が急激に下がっていっても、患者さんがケロッとしていればその表示されている血圧は患者さん本来の血圧ではない可能性もあります。急激な血圧低下をモニタリングだけでなく、患者さんの状態を把握するなど、全身から発せられるバイタルサインで判断するようにしましょう。
▼この後に起こり得る心停止に備えましょう
また、この後には心停止もあり得ますので、そのことも念頭に置いた備えも必要です。血圧低下が認められた場合、=(イコール)造影剤アレルギーと決めつけず、心拍数を確認しましょう。そのとき徐脈であった場合には迷走神経反射が疑われます。
呼吸器症状
咳き込みや喉の痒み、喘鳴、くしゃみなども造影剤アレルギーの症状であることがあります。喉頭浮腫による呼吸抑制も起こり得るので十分注意しましょう。いずれの症状であっても呼吸の確認、処置は患者さんの頭元にいないと早期対応はできないので、必ず1人は頭元にスタッフがいるようにしましょう。
▼この後に起こりうる呼吸停止に備えましょう
造影剤アレルギー=アナフィラキシーショックの対処
一般的にアナフィラキシーショックが起こった場合、アドレナリン筋注が推奨されています。初期症状からさらに症状が出てこないように、二相性反応に対しては予防的にステロイドが投与(静注)されます。
今回は造影剤アレルギーについてお話ししました。カテ室での危険予知として造影剤アレルギーはどのような症例も考えておかなくてはならない合併症の一つです。いざというときのために備えましょう。
今回はここまで。ありがとうございました。
新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人
メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。