みなさん、こんにちは。
今回は造影剤腎症について考えてみたいと思います。

造影剤は造影検査には欠かせないものです。ただ、作用もあれば副作用もある。前回の「造影剤アレルギーのとき」でお話しした造影剤アレルギーに引き続き、造影剤の悪影響についてのお話です。

造影剤腎症のリスクファクター

造影剤を投与した場合、腎機能が低下してしまうことがあります。一般的には可逆的で、造影剤投与後3~5日後にピークになり、7~14日後に改善するといわれていますが、もともと腎機能が悪い患者さんなどの場合には、さらに腎機能を悪くしてしまうこともあり、人工透析を行わなければならない状態になってしまうこともあります。これらを造影剤腎症(contrast induced nephropathy:CIN)といいます。

造影剤腎症は、造影剤投与後に血清クレアチニン(SCr)値が72 時間以内に前値より0.5 mg/dL 以上、または25%以上増加した場合に診断されます。

造影剤腎症には、なりやすいとされるリスクファクターがいくつかあります(図1)。



図に示しているものは、当てはまる項目のスコアを足して、その合計ポイントにより急性腎障害(acute kidney injury:AKI)がどれくらい起こりやすいかを示したものです。

ST上昇型心筋梗塞や心原性ショック・心停止、PCI前のIABP(大動脈内バルーンパンピング)の導入の場合は、造影剤をどうしても使用しなくてはならないということで、それぞれスコアが高くなります。

このスコアからわかる、心カテを受ける患者さんにおいて造影剤腎症に特に注意しなくてはならないファクターは次の通りです。造影検査を受ける患者さんで、もともとこれらの項目に当てはまる方は要注意です。

①高齢
②eGFR<60以下
③糖尿病
④貧血

造影剤腎症の予防

造影剤腎症に対する最大の予防は、造影剤使用量を少なくすることです。また、0.9%生理食塩液を造影検査の前後に経静脈投与をすることも重要です。例えば、緊急的に造影検査が必要なために造影剤投与前の時間がなく、事前に生理食塩液の補液ができない場合は、重炭酸ナトリウム(重曹)液が投与される場合があります。


今回は、造影剤腎症について考えてみました。

情報収集として、年齢はもちろん、腎機能(クレアチニン・eGFR)、糖尿病や貧血の有無などを事前に確認しておき、チームメンバーでその情報を共有することにより、造影剤腎症の発症を一人でも防げるといいですね。

今回はここまで。
お付き合いありがとうございました。

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プロフィール:野崎暢仁
新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人

メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。