みなさんこんにちは!

前回は、カテ室で見ることのできるカテ先の圧、観血血圧についてお話ししましたが、カテ室で見ることのできる血圧は、そのほかにもあります。

心カテ室での血圧測定

心カテ室では次の3つで血圧を測定することができると前回もお伝えしました。
①カテ先圧(カテーテルを通じて持続的に測定できる観血血圧)➡#064参照
②NIBP(マンシェットによる非観血血圧)
③シース圧(シースの側枝にトランスデューサーを接続して測る観血血圧)


今回は②NIBPと③シース圧についてのお話です(図1)。

NIBP

NIBP(non-invasive blood pressure:非観血血圧)の役割は、まずは入室時の血圧を知れることでしょう。病棟や救急室では多くの場合、NIBPしか測定することはできません。カテ室入室前の血圧と入室後の血圧に差がないこと。差があればどれくらいの差があるのかを把握しておきましょう。

また、カテ後のNIBPも測定し病棟へ申し送りするようにしましょう。申し送る血圧は病棟でも測定できるNIBPのほうが血圧の変化を見ることができます。測定していた部位も伝えましょう。

入室時の血圧を知ることによって以下がわかります。
1.普段の血圧 高血圧?低血圧?
2.今の緊張状態
3.動脈閉塞


まずは患者さんのふだんの血圧がどのくらいなのかを事前情報として持っておきましょう。ふだんから高血圧であれば、測定した際に高血圧であっても不思議ではありません。血圧を薬でコントロールされている場合には、薬を内服してきたかどうかの確認もしておきましょう。

最初に測定したNIBPから、この症例でのモニタリング・観察ポイントがひとつ決まります。ふだんの血圧よりも高い場合は、緊張されているのかもしれません。声かけを多めに、患者さんに少しでも安心してリラックスしてもらえる環境を作りましょう。過度の緊張の場合、迷走神経反射に充分に注意しなくてはなりません。心拍数の低下を伴う血圧低下を認めれば患者さんの状態を確認し、まずは硫酸アトロピンの投与が必要になるかもしれません。

NIBPの測定ができない場合や、値が異常に低い場合などは、測定している箇所で動脈閉塞が起こっている場合があります。カテーテルを受ける患者さんは冠動脈に動脈硬化があることが疑われている患者さんが多いわけですから、手足の血管に動脈硬化があってもおかしくはありません。

例えば、足にマンシェットを巻く場合、術前検査のABI(ankle brachial index:足関節上腕血圧比)などで動脈閉塞が疑われるような結果であった場合には、マンシェットを巻く場所について検討しましょう。

シース圧

シース圧を測定することは少ないかもしれません。シースには側枝が付いていて、それに三方活栓が付いています。この三方活栓に圧ラインを接続するとシースの先端の観血血圧を見ることができます。

例えば、カテーテル検査・治療が終了して、シースを抜去する前に、抗凝固薬の中和のためにプロタミンを投与する場合があります。プロタミンは稀にプロタミンショックといって、血圧が低下してショック状態に陥ることがあります。そのため、プロタミン投与中は持続の血圧モニタリングをしていることが望ましいです。そんなときにシース圧を出すことがあります。

そのほか、穿刺の際に血管攣縮(スパスム)を起こしてしまったと考えられるときにシース圧を見てみると、拍動が認められず攣縮が起こっていることがわかることもあります。

穿刺のときにスパスムが疑われる場合、シース抜去の際はシース圧を見て、いまもなおスパスムが起こっていないか? ということを確認することによって、血管損傷を防ぐことができるかもしれません。

【注意!こんなインシデントを経験しました】
シース抜去前にプロタミン投与していたときです。プロタミンショックに備えて、プロタミン投与中に足に挿入していたシースを用いてシース圧を出していました。カテ中に使用していた造影ラインを繋げて、シース抜去前のため、ドレープは患者さんの体から膝下まで剥がし、プロタミンを投与し終えるまでモニタリングしつつ待っていました。

そこで、退出準備のため片付けようとしたスタッフが確認を怠り、造影ラインとともにドレープを引っ張った際、シースもいっしょに引っ張られてシースが抜けてしまいました。幸い近くに術者がいたためすぐに圧迫止血を行い、大量出血などの大事には至りませんでした。

まずは、プロタミン投与中もまだ片付けを進めるべきでなく、少なくともシースを抜くまでは片付けをしてはなりません。また、片付ける際には、いかなる場合も患者さんとの接続が外れていることを確認しなくてはなりません。

そして、シース圧をモニタリング中であることをカテメンバーに共有することが大切だということを、チームメンバー全員で改めて情報共有しました。


今回は、カテ中の血圧モニタリングのなかでも、NIBPとシース圧についてお話ししました。次回は血圧モニタリングについてみなさんの具体的な行動について詳しくお話ししていきます。

今回もありがとうございました!

▼バックナンバーを読む

プロフィール:野崎暢仁
新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人

メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。