みなさんこんにちは!
前回から心カテ手技中に心電図が変化しうるシチュエーションについてお話ししています。今回もその続きをお話ししていきたいと思います。
心電図を変化させるカテの手技
心電図に変化が起こるカテ中の手技には以下のものがあります。前回は①と②についてお話しました。今回は③から⑤について解説します。
①カテーテル挿入による冠動脈解離
②左心室へのカテーテル迷入
③冠動脈へのAir注入
④造影剤投与による血液不足
⑤カテーテルによる血流遮断
⑥ガイドワイヤ先端による血管穿孔
⑦IVUSでも血流途絶
⑧バルーン拡張による血流遮断
⑨薬剤投与による心電図変化
⑩削るデバイスによる心電図変化
⑪痛み・苦痛による心電図変化
③冠動脈へのAir注入
冠動脈へ造影剤を投与するために造影剤ラインを使います。冠動脈に造影剤を投与するためにはインジェクターや三連コックが使われます。それらを接続する際に、カテーテルとの間にAir(空気)が入っていたり、カテーテルに繋がっているYコネクタからAirが混入したり、そもそも準備した造影ラインにAirが残っていたりしたとき、そのAirが冠動脈に注入される場合があります。
血管内は液体であれば血流に乗って流されていきますが、Airは流されずに止まってしまい、気塞栓(Airブロック)となってしまうことがあります。空気塞栓によって血流を堰き止めて心筋が虚血状態になってしまいます。まずは透視や造影画像を見ていればAirが流れていく様子がわかります。造影剤に混じってAirが入った場合には、まん丸く白抜けしたものがコロコロ転がる様子が見えます。それが見えたときには心電図の変化に十分気をつけてください(図1)。
■Air混入に特に気をつけたほうがいいタイミング
〇造影ラインを接続した1~2回目の造影剤投与のとき
➡造影ラインにAirが残っている場合があります
〇太いデバイス(削る系のデバイスなど)の使用後、カテーテルから抜去したとき
➡Yコネを大きく開いてデバイスを抜くときに、Yコネの隙間からAirが引き込まれる
〇デバイスがカテーテル内に入っているときに造影するとき
➡Yコネの締めが緩かったときに、Yコネの隙間からAirが引き込まれる
■Air混入したら
〇すみやかに空気塞栓の状態を解除する必要があります
➡冠動脈内をフラッシュします。できれば粘稠のある造影剤ではなく、サラサラの生食などを何度も注入しAirを末梢まで飛ばします。Airは冠動脈から冠静脈へ流れ、冠静脈洞から右心房、右心室そして肺へと流れていき吸収されていきます。
空気塞栓を解除するあいだも生食など血液じゃないものを冠動脈に流していくので、さらに心筋虚血状態になっていきます。心電図の監視とともに患者さんの様子にも気をつけてください。
④造影剤投与による血液不足
造影剤は血液ではありません。造影剤を連続的に投与すると心筋が虚血状態になって心電図が変化します。冠動脈造影の際に連続して撮影しているときには心電図変化に注意しましょう。もし心電図変化してきたときには、術者に伝えて、可能ならば少し間を開けて造影してもらうようにしましょう。
⑤カテーテルによる血流遮断
冠動脈の入口が狭かったり、太いカテーテルを挿入した場合、カテーテルを冠動脈の中まで挿入した場合に、カテーテルによって冠動脈の血流が滞って心筋が虚血状態になり、心電図が変化する場合があります。また、エクステンションカテーテル(ガイディングカテーテルの中に入れて、カテーテルの先を伸ばすカテーテルのこと)を使うときは、エクステンションカテーテルを冠動脈の中にズイズイと入れていくことがあるので、それによって血流が途絶えることがあります。それによっても心電図が変化することがあるので要注意ですね。
今回もカテ中に突然起こりうる心電図変化についてお話ししました。手技をするのはドクターの仕事。モニタリングするのは私たちの仕事。それはそうなんですが、モニタリングするにしても、何らかの変化をするのは、カテーテルの手技が進んでるからこそバイタルが変化することが多いんですよね。効率良くモニタリングするためにも、カテの手技を見ながら、どういうことが起こりうるのか想像しながらモニタリングすると、逆にガッツリモニタリングしなくても余裕が出てくるのではないでしょうか。
それでは今回はこれまで。
ありがとうございました。
新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人
メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。