みなさんこんにちは。
さて今回は患者さんのカテ中の様子についてお話ししていきたいと思います。

病室の患者さんはナースコールを持っています。困ったときにはナースコールでお知らせすることができます。でも、カテ中の患者さんにはナースコールはありません。

カテ中、私たちカテスタッフが忙しそうにしていると、患者さんはもしかしたら気を遣って声をかけるのを控えてしまうこともあるかもしれません。また、「せっかく医師ががんばって治療してくれているので、ちょっとの痛みぐらい我慢しよう」なんて思ってしまうかもしれません。

また、よく見かけるのはおしっこを我慢することです。「いま、おしっこなんて言ったら申し訳ない」とか「恥ずかしい」と思って言い出しにくいこともあるかと思います。

私たちメディカルスタッフが患者さんの様子の変化に早く気づいて、早く対処してあげることが、患者さんの安心につながるのではないでしょうか。今回はカテ中の患者さんの様子について考えてみましょう。

カテ中の患者さんの痛み

カテ中に患者さん痛みを感じることが多いのは次の4つです。順番に見ていきましょう。
①穿刺の時=穿刺部痛
②上腕管攣縮=上腕痛
③上腕部の血管穿孔=上腕痛部
④心筋虚血=胸痛


図1

①穿刺の時=穿刺部痛

誰しもがカテのときには緊張状態で入室されてきます。そして最初に訪れるのが、局所麻酔の痛みです。ただでさえ緊張状態にあるなか、チクッとした痛みであっても余計に痛みを感じることでしょう。また、穿刺針は通常の点滴の針より深く入り、ググッと押されてしまいます。

その次がシースの挿入。グリグリと押されて異物が入っていくのです。そんななで、患者さんは一人で戦うにはとても不安だと思います。

みなさんは穿刺のときどうしていますか? カテ入室の処理に追われて必死に記録したり、物品を揃えたりしていませんか? 患者さんが第一難関をクリアしようとしているときなんです。スタッフの誰かが横にいるだけで安心してもらえるでしょうし、これから行われることを柔らかく伝えることによって患者さんは心構えができます。ぜひ誰かが声をかけるようにしましょう。

②上腕血管攣縮=上腕痛

橈骨動脈穿刺の場合によく起こるのが血管攣縮(スパスム)です。医師が穿刺を何度もしているのを見かけませんか? 例え術前に橈骨動脈の拍動が触れていても、最初の穿刺で血管を刺激してしまいスパスムを起こしてしまうことがあります。こうなると穿刺がうまくいかなくなります。

それと同時に、なんとか針が血管を捉えたとしてもワイヤーやシースを挿入する際は入りづらく、入ったとしても患者さんはとっても痛みを感じることになります。

こんな時もそばにいてあげるだけで、患者さんは安心するのではないでしょうか。

③上腕部の血管穿孔=上腕痛

シースが入り、カテーテルを進めていくとき、ガイドワイヤーを先行させて挿入していきます。上腕にも枝がたくさんあるなか、ガイドワイヤーを進めていきますが、時折このガイドワイヤーがその枝に迷い込む(迷入する)ことがあります。すぐに迷入に気づけばよいのですが、ガイドワイヤーのヌルヌルコーティングのせいもあって、そのまま血管を突き破ってしまうことがあります。そうなれば、そこから出血して上腕が腫れてしまうことがあります。

シースが入った後、少なくともガイドワイヤーが鎖骨のあたりに行くまでは、ガイドワイヤーの挙動について透視画面で確認しておいてください。このあいだはたったの数十秒です。

スムーズに鎖骨下までガイドワイヤーが到達すれば多くの場合は問題ありません。しかし、肘や二の腕あたりでガイドワイヤーの先端が少し横に向いてがピタッと止まったとき、そしてガイドワイヤーをちょっとバックさせて違う道をまた進んでいったときには、横道に入ったサインです。

そんなときには、患者さんのところに行き、ドレープをめくってさりげなくその部分が腫れていないかを確認し、患者さんにここ痛くないですか? なんて声をかけてみてください。このとき、すでに抗凝固薬が入っているかと思います。もし出血していたら、どんどん出血してしまうので早めに気づけるようにしましょう。

④心筋虚血=胸痛

心筋虚血についてはこれまでにもよくお話ししてきましたので、ここでは詳しい内容は控えますね。とにかく患者さんが胸が痛くなるだろうなって思うタイミングで、タイミングよく声をかけられたら患者さんとの信頼関係は絶大となるでしょう。


今回は、心カテ中の痛みについてお話ししました。

よく「痛いときは言ってくださいね」という声かけを聞きます。もちろん、患者さんが感じている痛みを和らげることができればよいのですが、例えば局所麻酔の痛みはなくすことができません……。

私が本当に大切だと思うことは、患者さんが安心してくれることです。痛くなる前に「いまから痛いですよ!」とスタッフから言ってもらえるだけで、この人よくわかってるな、よくわかってる人にいっしょにいてもらえて安心だな、と思ってもらえるのではないでしょうか。

今回はここまで!
ありがとうございました。

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プロフィール:野崎暢仁
新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人

メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。