みなさんこんにちは!
今回は少しいままでになかった感じでお話をしたいと思います。

先日、私たちチームが経験した症例を簡単にまとめてみました。みなさんも、もし自分ならどうする? どんな準備をする? 何を考える? といったことを思い描きながらお付き合いください。

みなさんにもいっしょに考えてほしい症例

患者さんは80歳以上の女性です。普段はとてもお元気で入院歴もなく、自立された生活を夫とともに過ごされていました。

ある日の朝、左胸が締めつけられるような痛みを感じていましたが、ゆっくりしたら治るだろうと休んでいました。しばらく休んでいたところ痛みは少し軽減したと感じたので、違和感は残っていたものの夜になったということもあり、布団に入りその日は就寝されました。

次の日、朝になってもまだ左胸の違和感は残っていたため、かかりつけ医である当院の内科を受診をするべく来院されました。

症状を聞いてすぐに処置室に入り、12誘導心電図をとったところ、V1-4誘導でST上昇を認め、緊急カテ決定となりました。

その時のバイタルは次の通りでした。
ECG:V1-4誘導でST上昇(不整脈はなし)
HR:130台
NIBP:160/110
SpO2:98%
症状:ほとんど消失


緊急カテを行ったところ、左冠動脈 前下行枝 #7で閉塞。側副血行路は大きいものは見当たりませんでした。そのほかの冠動脈に有意な狭窄は見当たりませんでした。

責任病変を#7として、この部位に対してPCIを行うことになりました。

ガイドカテーテルを挿入し、ガイドワイヤーを病変部まで運び、閉塞している病変をガイドワイヤーで突きましたが、なかなかガイドワイヤーは通過することができていませんでした。

このとき、血圧が100を切りそうになったので、施行医からノルアドレナリン投与の指示が出て、ノルアドレナリンを右鼠蹊に挿入された6Frシースより持続点滴が開始されました。

それ以降は収縮期血圧を100程度に保つべく、ノルアドレナリンの滴下がコントロールされました。このときの血圧は100/85程度でした。患者さんには症状が出てきて「まだ終わらないのか、しんどい」といった声が聞かれていました。

その後、ガイドワイヤーはなんとか通過しましたが、ガイドワイヤーの挿入が困難だったということもあり、病変部はそんなに柔らかい血栓ではないと判断され、当院では緊急カテではまずは血栓吸引をすることが多いのですが、その場合は1.5mmのバルーンで病変部を拡張します。

しかし、何回か、広範囲に渡り拡張したものの、冠動脈の血流は戻りませんでした。

続いてニコランジルをガイドカテーテルから冠動脈に注入しましたが、まだ冠動脈の血流は戻りません。

そのため、今度はニトロプルシドをマイクロカテーテルを通じて冠動脈末梢に直接投与。それでも冠動脈の血流は戻りません。

このときのバイタルは、心電図は変わりなくST上昇のまま、心拍数も高い130のまま(不整脈はなし)、血圧はノルアドレナリンコントロール下で100/85付近を推移しているというような状況でした。

IVUS(intravascular ultrasound:血管内超音波)を施行しました。病変部はしっかりとした、ちょっと硬めの血栓が確認されました。そのためスコアリングバルーンを用いて、また病変部を拡張しにいきました。

少しだけ血流が流れて末梢がうっすら見えました。でも、流れた!とまではいかない状況でした。しつこくスコアリングバルーンの拡張を試みました。また、ニトロプルシドも追加投与しています。

あまり改善が見られないなか、病変部にステントを入れましたが、末梢がうっすら見える程度でした。

これ以上PCIではすることがないということで、この状態でPCIを終了しました。

終了時のバイタルは次の通りです。
ECG:V1-4誘導でST上昇(不整脈はなし)
HR:130台
NIBP:100/85
SpO2:95%
症状:しんどい。。。


患者さんは集中治療室に移動されました。

が、、、その10分後、、、
施行医から電話があり「患者さんカテ室に戻ります」とのことでした。いったい何があったのでしょうか?


この続きは次回にお話しすることにしましょう。

この患者さんの持つリスクは何なのか? 何が起こったのか? 何をするためにカテ室に戻るのか? みなさんも下記のkeywordを見ながら考えてみてください。

“絵本のように読める”本のお知らせ

この度、これまでメディカLIBRARYで配信してきた記事を、一冊の本にしていただきました! 出版に導いてくださった読者のみなさま、記事の編集にお付き合いいただいている敏腕プロデューサーに心より感謝申し上げます。

この「心臓のはなしをしましょうか」は2020年から配信を開始し、もうかれこれ3年、配信数は70回を越えました。こんなに長く継続させていただけているのは、本当に皆々さまのおかげと感謝感謝です。

こんなに記事を配信させていただきながら……じつはね、私、本を読めない人なんですよ(笑)

本当はたくさんの本を読み、たくさんの論文を読み、活字からたくさん勉強しなくてはならないことがいっぱいあるのはわかっているんですが……なんせ、字を読むことができないんです!

そのため、私の勉強方法は2つ。まずは周りのみなさんに教えていただくこと。たくさんの人のお話を聞いて「なるほどー」ってことから学ばせていただいています。

もう1つは視覚的にイメージすることです。実物や写真、動画、イラストなどでじっくり見て、例えば、どんな動きをするのだろう? どんな構造なのだろう? といったことを想像・イメージして、そのものを理解する、といった学びかたをしています。

つまり、私の勉強方法は、人のお話を聞いて、目でイラストを見てイメージして、といったように、まるで小さな子どもがおやすみ前に絵本を読んでもらう感じで勉強しているわけです。

メディカLIBRARYでは、いつも文章とともにイラストを添えていますが、このイラストは、私の頭の中の具体的なイメージをもとに描かせていただいているつもりです。

今回、出版させていただいた『心カテのはなしをしましょうか』は、まさに絵本のような感じで、みなさまに優しくスゥ〜と入っていけるように作っていただきました。

ぜひ一度手に取っていただけると幸いです。


それでは今回はここまで。
ありがとうございました。

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プロフィール:野崎暢仁
新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人

メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。