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みなさんこんにちは!
前回(#074)と前々回(#073)は、私が経験した心室中隔穿孔の症例についてお話ししました。心室中隔穿孔は急性心筋梗塞の代表的な合併症の一つです。
このほかにも急性心筋梗塞ならではの合併症がありますので、今回はそのお話をさせていただきます。今回は特に循環器病棟のスタッフの方に知っておいてほしい話になります。
急性心筋梗塞直後の3つの合併症
左室自由壁破裂、心室中隔穿孔、乳頭筋断裂、この3つをまとめて機械的合併症といいます。
機械的合併症は、PCIなど治療法の進歩により発生率は減少しているといわれています。ということは、裏を返せば現代においても機械的合併症を防ぐためには、いかに早くPCIなどの治療を急ぐかということになりますね。
機械的合併症が起きやすい患者さんは前回(#074)の患者さんのリスクファクターと同じで次の4つです。
・高齢
・女性
・発症から24時間
・初回急性心筋梗塞発症
この4つに当てはまる急性心筋梗塞の患者さんの場合は要注意です。
また、急性心筋梗塞発症後1週間は要注意です。1週間ということは、集中治療室からも出られて一般病棟におられるときかもしれませんね。
続いて3つの機械的合併症をちょっとだけ詳しく見ていきましょう。
左室自由壁破裂
左室自由壁破裂(LVラプチャー:LVFWR:left ventricular free wall rupture)は左室の表面が裂けてしまうことをいいます。急性心筋梗塞の1%以下の発生率です。
タイプが2つあり、1つは突然左心室表面が裂けて一気に心臓の周りに血液が漏れ出てしまうブローアウト(blow out)タイプです。これは一瞬にして生命を脅かす状態に陥ってしまいます。
もう1つはウージング(oozing)タイプです。これは心筋梗塞が起こっている心筋が薄っぺらくなってしまっていて、その部分からじわじわじわじわ血液が漏れ出る状態のことをいいます。
ブローアウトタイプは一気に、ウージングタイプはじわじわと、いずれにせよ心臓の周りに血液が溜まって心臓が押しつぶされそうになります。この状態を心タンポナーデといいます(図1)。当然、心臓からは全身に血液を送り出すことができず、血行動態破綻ということになります。
緊急手術なしでは極端に生存率が低くなってしまいます。ただし、緊急手術ができた場合でも死亡率はブローアウトタイプで66%、ウージングタイプで20%、全体では35%になってしまいます。
図1
心室中隔穿孔
心室中隔穿孔(VSR:ventricular septal rupture)については、前回(#074)、前々回(#073)で解説しているのでこちらを読んでくださいね。
では今回はここまで。
もうひとつの機械的合併症である乳頭筋断裂については次回にお話しさせていただきます。
今回もお付き合いありがとうございました!
新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人
メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。
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