こんにちは!

この何回かは続けて血行動態のお話をしています。
血行動態とは、全身に血液を届けている様子を評価するもので、血圧をモニタリングしています。

私たちは、「血圧」をきちんと評価できているのでしょうか?
状態が悪いとき、血圧が上がればいいのでしょうか?
血圧低下のときに登場する薬剤は万能薬なのでしょうか?

今回もとても大切なお話だと思います。
みなさんも一緒に考えてみてください。

SV×HR=Co
SV:一回拍出量
HR:心拍数
Co:心拍出量


前回の#018「全身に血液を届けるためには? 今、なぜ血圧が下がっている?」では、SV=「前負荷」「収縮力」「後負荷」のうちの「前負荷」のお話をしました。今回は「収縮力」のお話をしますね。

収縮力

収縮力は、心筋本来の筋肉の力を表します。
こう表現すると、筋肉マッチョの力強さを想像してしまいます。
心臓の筋肉が力いっぱいに収縮し、全身に血液を送り出す。もちろんそれもあります。

しかし、大切なところは血液を送り出す前の準備段階。
それが大切なんですね。

砲丸投げを想像してみてください。

重い鉄球を遠くまで飛ばす。しっかりと全身の筋力で重い鉄球を支えて、助走をつける。そして全身の筋力によって勢いよく投げる。もちろん筋肉マッチョな筋肉も必要です。ただそれだけでは重い鉄球を遠くに飛ばすことはできないんですね。投げる前に、いかに重い鉄球を支えながら助走をつけていくのか、ということもキーポイントになるかと思います。

心臓は、この作業を1回1回の拍出ごとに繰り返し行なっています。

左心室は、左心房から受け取った血液を、十分に心筋を伸ばし受け入れられるだけの血液を受け取ります。どれだけ柔軟に心筋を引き伸ばして血液を受け取るか。また、受け取った血液をいかにしっかり支えて溜め込むか。これが一気に血液を拍出させるキーポイントの一つになるのです()。



収縮力は、心臓の収縮期・拡張期がうまくはたらいてこそ、最高のパフォーマンスを生み出します。

心筋梗塞のときに収縮能が低下している!ってよく言いますが、拡張能も低下すると言われています。冠動脈の血流が乏しくなると、まず拡張機能が低下し、その後に収縮機能が低下する。冠動脈の治療後は収縮機能が回復してきたとしても、拡張機能がしつこつ持続すると言われたりしてます。心筋梗塞後になかなか体調がすっきり回復しないのは、拡張能の回復の遅さが関係しているかもしれませんね。

収縮力が上がると

前回のお話で「フランクスターリングの曲線」をご紹介しました。
横軸は前負荷の量と表現しましたが、それを受け入れられるだけの心筋の伸びも関係します。心筋がそれだけの量を受け入れられるか? また、その量を押し出すことはできるか? 今のボリューム(前負荷)を受け入れることができるかどうかが一回拍出量に関係していきます。

心収縮力を上げるためには、強心剤を入れれば収縮力が上がります。ジギタリス製剤は心臓の筋肉に対して作用し、収縮力を増大させます。心収縮力が下がっているときには効果が期待できます。

しかし、心収縮力が上がると心臓は、よりがんばって動かなくてはならない状態となります。弱っている心臓にとってはつらいムチになります。心臓の栄養である酸素の消費量は上がり、もっと血液が必要になります。となると、心臓はよりがんばって血液を拍出しなくてはならない状態になってしまいます。薬剤を使用する場合は状況を見極めて、適正な薬剤量を考えなくてはならないと思います。

今回は、心臓の収縮力についてお話ししました。収縮力といっても収縮するチカラだけでなく、拡張できるチカラも大切だということですね。

また、薬剤によってその状況を打開することも必要になることがありますが、その薬剤の使いかたによっては逆にダメージを与えてしまうことも忘れてはならないと思います。

ここまで血行動態=血圧のお話を続けていますが、引き続き血圧のお話をしたいと思います。次回は、ショックについてと、血圧低下のときに登場する有名なお薬について考えたいと思います。

それではまた!
ありがとうございました。

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プロフィール:野崎暢仁
新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人
メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。