みなさんこんにちは!
ここまでお話してきた
#033「心カテ室で使われるME機器~テンポラリーペースメーカー①~」
、
#034「心カテ室で使われるME機器~テンポラリーペースメーカー②~」
に引き続きテンポラリーペースメーカーのお話です。
今回はテンポラリーペースメーカーに関する合併症についてお話しします。特に病棟スタッフの方々必読です! お付き合いよろしくお願いします。
病棟で起こりうる合併症
テンポラリーペースメーカーを留置して病棟で管理する場合があります。このときの合併症を考えておきましょう!
起こりうる合併症は次の4つです。
①心室穿孔
②カテーテルの脱落・位置が変わった
③閾値が悪くなった
④感染症
①心室穿孔
ペーシングカテーテルの先端によって心室に穴が開いてしまう(=穿孔:パーフォレーション)可能性があります。穿孔が起きないようにペーシングカテーテル先端の場所や心筋への当たり具合(カテーテルの押し込み具合)などを考えて留置されますが、当たっている部分が心筋梗塞の部位であったり、心筋が薄かったりすることも引き金となり、ペーシングカテーテルの当たる力によって心筋穿孔が起きてしまうことがあります。
《看護ポイント》
・患者さんの状態が悪くなった=心タンポナーデが起こっていることが予測される
・ペーシングが乗らなくなった=出力を上げても乗らない
➡モニタ心電図に注意
《対処》
・まずは心エコー
②カテーテルの脱落・位置が変わった
ペーシングカテーテルの挿入部(体外)はナート固定されていますが、ペーシングカテーテルの先端はしっかり固定されているわけではありません。ペーシングカテーテルを引っ張ったりするとカテーテルは容易に抜けてしまいます。また、心臓の拍動によって位置がズレてしまうこともあります(図1)。
《看護ポイント》
・ペーシングが乗らなくなった=出力を上げても乗らない
➡モニター心電図に注意
《対処》
・まずは胸部X線
③閾値が悪くなった
ペーシングカテーテルの位置が変わっていなくても、心筋の状態の変化などによってペーシングが乗らなくなる場合もあります。出力を上げるかペーシングカテーテルの位置変更が必要になります(図2)。
《看護ポイント》
・ペーシングが乗らなくなった
➡モニタ心電図に注意
《対処》
・まずは出力を上げる
・出力を上げても乗らなければペーシングカテーテルの位置変更
➡カテ室に移動か?
④感染症
長期間(おおよそ1週間)留置するペーシングカテーテルは、右首または鼠蹊部から挿入されます。挿入部はシース(5Frまたは6Fr)越しにペーシングカテが入っているか、またはペーシングカテーテルそのものだけが挿入されています。
通常ではドレッシングテープが上から貼られているかと思います。ドレッシングテープがしっかり貼られているかどうかしっかり確認してください。
パーマネントペースメーカー(植え込み体内ペースメーカー)の植え込み術を控えているとき、テンポラリーペースメーカーで感染を起こすと植え込み術が行えなくなります。万が一、感染に気づかず植え込み術を行なった場合、体内に留置されたペーシングリードやペースメーカー本体・創部などで感染が問題となり、再手術や最悪の場合では心臓弁(三尖弁)の置換術などを行わなければならないっていうことになりかねません。
テンポラリーペースメーカーの感染防御とても大切です!死守してください!
患者さん 5つのカクニン!
ここまでお話ししてきたように、テンポラリーペーシングの管理は病棟看護師さんの管理がとても大切になります。ぜひ合併症を意識して、次の5つのカクニンをこまめにしてください!
②固定のテープが剥がれていないか? カクニン
③挿入部を触っていないか? 痒がっていないか? カクニン
④しんどそうでないか? 血圧下がってないか? カクニン
⑤感染防御できているか? カクニン
では今回はここまで。
ありがとうございました。
新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人
メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。