がんと共に生きる方の「不安」と「悩み」を、担当ナースとの対話を通して解消されるようにサポートするサービス「Tomopiia(トモピィア)」。患者さんが自分らしく生きるためのサポートを考え抜くと、そのサポートを担うナースに対しても真剣に向き合う必要性を感じ、「患者コミュニケーション研修」を実施するに至りました。Tomopiiaのサービスは、SNSを活用したテキストで行うサービスであり、研修でもテキストから患者さんの想いを汲み取るための力を実践的に身につけますが、これが必ず臨床現場でも生きるといいます。今回はTomopiia事業責任者の重村潤一朗さんと、研修管理者の十枝内綾乃さんにお話をうかがいました。〔メディカLIBRARY編集部〕

※現在は特別に「患者コミュニケーション研修」が無料で受講できます。



重村潤一朗
moon creative lab. Tomopiia Project 責任者

1996年三井物産株式会社に入社、以後ヘルスケア関連ビジネスに従事、在宅介護サービス・シニアサービス・ヘルスケアサービスなど数々の新規事業開発に携わり、パートナーとの合弁事業への出向や医療機関の経営など現場経験も豊富。海外医療機関への投資や海外(東南アジア)でのビジネス経験あり。個人が尊重された最適な医療とヘルスケアサービスの追求と、ヘルスケアの現場で働く専門家が輝ける産業を創り出すことを目指している。





十枝内綾乃
moon creative lab. Tomopiia Project エグゼクティブマネージャー

看護師免許取得後、大学病院で精神科、老年病科を経験、企業の健康管理室勤務等を経て1999年に日本鋼管病院に入職。2006年からは看護師長として透析センターの立ち上げ、腎・内分泌内科病棟師長を経験し2017年4月~2021年9月まで同病院で副院長兼看護部長副院長を務める。2019年より当プロジェクトへアドバイザーとして参加し、2021年10月よりエグゼクティブマネージャーに就任。

Tomopiiaはどのようなサービスでしょうか

重村:Tomopiia(トモピィア)は、がんと共に生きる方の不安や悩みの解消を担当ナースが個別にサポートするサービスです。がんに罹患した方々が『ナースとの対話』を通じて『ほっとする』時間を持ち、日々の療養生活の質(QOL)向上の一助となるよう担当ナースがサポートします。

Tomopiiaは医療サービスではありせんが、さまざまな知識や経験を持った担当ナースが、病気の悩みを抱えるユーザー(患者さん)一人ひとりに向き合い、こころに寄り添います。対話はチャット機能を使って、文字(テキスト)を通じた「文通」のようなかたちで実施します。場所や時間を選ばず、どこからでも好きなタイミングで使えるため、ユーザーは移動する手間もなく、ユーザー自身のペースで利用できる点が特徴です。

また、ナースとユーザーはお互いの顔や名前を明かすことなく対話ができるようになっているため、ユーザーは安心して自分の思いを打ち明けられる、プライベートなコミュニケーションを実現できる場になっています。

患者さんであるユーザーが安心して自分自身の思いを打ち明けながら、自分らしい暮らしを取り戻していくために、ナースは伴走者のように付き添うことを目指します。

Tomopiiaを立ち上げたきっかけを教えてください

重村:20年以上日本や海外の医療・介護・ヘルスケアに関するビジネス開発に携わってきた経験から、ずっと感じていた課題感がこのサービスを立ち上げたきっかけになっています。この20年、日本の医療は発展し、多くの病気が治せるようになり、人生100年の時代といわれるようになりました。一方で医療現場の忙しさは増すばかりで、医療従事者は疲弊し、一人ひとりの患者さんと向き合える時間は減少の一途をたどっています。患者さんにとっても、病院と関わる機会や時間が減り、自分自身で病気と向き合う時間が増え、患者さんの不安や孤独は増しています。

あるがんサバイバーの方が、「病院を退院したあと、一人で自宅に戻った途端、突然襲ってきた先の見えない大きな不安感は、まるで暗いトンネルに入ってしまったようでした」とおっしゃっていた言葉はとても印象的でした。ご家族の支えがあったとしても、心配させてはいけない、という思いから身近な人にも不安を伝えられないという方、病院から離れた瞬間に孤独感が始まり、独りで病気と向き合い、病気の自分を受け入れるには数年がかかったという方もいらっしゃいました。

もっと一人ひとりの患者さんが、自分らしく病気と向き合っていけるようなサポートができないか、そうした患者さんのサポートを通じて医療従事者の方々がもっと活躍できる機会を作ることができないか? その想いから、孤独な患者さんと、患者さんに関わりたいナースをつなぐプラットフォームを構築する発想に繋がりました。

すでに病院や地域には、患者さんを支える仕組みやサポート体制は存在しているのですが、増え続ける患者さんを支えるには限度があります。私たちは患者さんの第三の選択肢を整備するとともに、病院以外でもナースが活躍できる場を作り出すことに挑戦したいと考えています。

Tomopiiaで何を実現したいと考えておられますか

重村:私たちは「病気と向き合うあなたが、もっと自分らしく輝く社会へ」をビジョンに掲げています。病気を抱えた方々と医療・介護を提供する方々が、それぞれもっと自分らしく生きていける社会が実現されている世界を目指しています。患者さんが自身の悩みや不安を家族にも話せず我慢をしたり、誰かが声を掛けてくれるのを待っているのではなく、患者さん自らその解消のために行動を起こしやすい、患者さんがより主体的になれる機会をつくり、これからの患者さんが、より自分の医療や健康に主体的に向き合える土壌をつくりたいと考えています。

医療を受け身でとらえるのではなく、自分のために活用できる方々が増え、そのうえで、患者さんが体験をもとに食事や寝具・衣類などライフスタイルに関わる商品の開発に関わったり、患者さんのQOLを高める医療の在り方について発信する機会を作るなど、患者さんがクリエイティブで主役になれるような取組みまで広げていきたいと考えています。ここに関わる医療職の方々も同様に、患者さんと共に自分らしく活躍できる場にしたいと思っています。

Tomopiiaのチームと事業案内のご紹介はコチラ

後編(8月25日配信予定)ではTomopiiaで実施する「患者コミュニケーション研修」の内容を詳しく紹介します。

研修内容は下記からもご覧いただけます。
※現在は特別に無料で受講できます。詳しくはコチラ▼
患者コミュニケーション研修