看護師兼ライターの白石弓夏です。

看護師として現場で働いていると、“継続的に学びが必要である”と痛感することがあります。大人になってからの『学び』は、自分のなかに落とし込み、現場で活用できるか、応用できるかが重要になってくると思います。みなさんは実際にどのように『学び』を深めているでしょうか。

この連載では、さまざまな場所で活躍されている看護師にインタビューを行い、自身の『学び方』について、一緒に考えてみようと思います!

今回は訪問看護師、取締役として働く落合実さんです。
※前編はこちら


プロフィール:
訪問看護師、緩和ケア認定看護師。18歳で有床診療所に勤務して以降、大学病院、訪問看護ステーションと勤務する施設を変えながらも一貫して終末期患者の看護に従事。
前職では訪問看護ステーションのサテライト事業所の開設に従事。その後マネージャーの1人として看護業務や組織の管理に関与。
看護業務と平行して、都内WEBデザイン学校、日本政策学校などにて看護以外の知見を深める。
現在はWyL株式会社の創業に参画し、取締役として従事。
個人で看護師のキャリア相談、採用支援、ヘルステックなどの仕事をしている。

白石>前編では、落合さん自身の学び方についてお聞きしました。そもそも、学びって何のためにするのか…極端な質問ですが、落合さんはどう考えますか??

落合>よく看護師が「患者さんのために頑張っているんだ」という言葉を使いますよね。それこそ、呼吸がわからなかったら本を読んで勉強したり、3学会合同呼吸療法認定士の資格を取ったり。ただ、その学びを得たプロセスって、本当に患者さんのためなのかな?と思います。例えば、前の職場では若いスタッフが僕たち先輩ではなく、副社長とかに「飲みに連れて行ってください」「話聞いてください」と言っている光景を見て、よくあそこまで積極的にいけるな…と思うことがありました。だけど、その部署では利用者さんのために達成すべきミッションがあって、当時は未熟な僕がまとめていると、間に合わないこともあるんです。本当に患者さんのためを思うのであれば、早く対応してもらえるところに声をかけるということは、ありなんじゃないかなと思いました。

がむしゃらに働いていたという昔のエピソードも交えて話してくれました。


白石>「患者さんのために頑張っている」は大義名分みたいなところ、ありますもんね。

落合>そうなんです。よく若いころは「すぐ聞くのは良くない」って先輩に怒られて、自分で調べたりするじゃないですか。けれど、本当に患者さんのためであれば、すぐに答えてあげてケアに生かしたほうがいいですよね。それを勉強してこいっていうのは、患者さんのことを考えればワンテンポ遅くなりますよね。すべての質問に答えてあげると先輩の負担が大きくなってしまうので、バランスは大事ですけれど…。僕が緩和ケア認定看護師を取得したのは、キャリア上有利になるのと、当時の仕事から離れたいためっていう理由がありました。「患者さんのために」という理由は劣後じゃないかなと思ったんです。

白石>なるほど。無意識に「患者さんのため」って言ってしまいそうですが、本当にバランスは大事ですね。

落合>まぁ、先輩からは「勉強しておいで」と言われるし、教える側もそれが当たり前だと思っていますよね。それがダメなわけじゃない。病棟なら、それでもまわる環境になっていると思うんです。だけど、僕がいる訪問看護のように、看護師1人の売り上げが経営に直結してしまうような環境では、「聞くことが恥」という次元の話ではないんです。「なりふりかまわず、最短距離で対応する」という考え方が顧客、患者ファーストなのかなって、僕は思います。そして、足りないことに気づいて、患者さんのために考え、まわりの力とかいろんなものを使って、早く届けることも必要。だから、「なんのための勉強なのか」ってまず考えることが大事ですね。それによって、やりようが変わってくるので。

白石>なんのための勉強…って、単純に患者さんのケアに生かすためという考え方をしていましたが、「そもそも本当にそうなのだろうか?」と、はたと気づかされました。私も自分自身が楽になるために勉強している側面は、すごく大きいと思います。落合さんの学び方は、とても合理的だと思いました。落合さん、ありがとうございました!

//バックナンバー//

#001  自分の基盤にどうのせるかで学びを考える|吉岡純希さんと白石弓夏さん(前編)
#002  お互いの領域をリスペクトする|吉岡純希さんと白石弓夏さん(後編)
#003  わからないことを追求する奥深さ|小浜さつきさんと白石弓夏さん(前編)
#004  学生教育から学びを考える|小浜さつきさんと白石弓夏さん(後編)
#005  生きた話を聞く、学び方|落合実さんと白石弓夏さん(前編)




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白石弓夏
看護師兼ライター。整形外科病棟とクリニック、施設で働きながらライターとして活動中。ポジティブ思考、フットワークの軽さが強み。ライターとして情報収集、発信向けにTwitterをはじめたが、いつのまにか飯テロ垢と化したので、軌道修正中。
Twitter→https://twitter.com/yumika_shi