看護師クリエイティブプロジェクト「fractale」のみなさんが、毎回テーマに沿ってそれぞれの看護の足跡を残していく本企画。

「学びかたを学ぶことで看護師として生きる選択肢をふやしていく」ことをコンセプトに立ち上げたメディア「メディカLIBRARY」のスタッフが、毎回、フラクタルのみなさんにテーマを伝えています。

今回のテーマは「体位変換」です。

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病棟時代は褥瘡を作らないことだけを目標として、何も考えずに行っていた体位変換(ポジショニング)。

でもその考えは、ICUを経験してから一気に変わった。
ポジショニングって、じつはすごい大事。

ポジショニングだけで、大きく変わる呼吸状態。
1年生のころ、主任に「褥瘡と呼吸は看護師にかかってるからね。腕の見せどころだよ」って言われたけど、まさにそれ。

“呼吸のためのポジショニング”を学んだ場、それがICUだった。

看護師の聴診、触診、視診などの五感、そしてX線やCTの結果などなど知識をフル活用してアセスメントさえできれば、ポジショニングだけで呼吸機能の改善が期待できる。

簡単な例をあげると、左肺に肺炎像がある方を左側臥位にすると、酸素化はされにくくなる。
右側臥位にすると酸素化はされやすくなる。

理由としては、良いほうの肺が下側になることで血流が増える(ガス交換の効率が良くなる)し、悪いほうの肺が上側になることで体位ドレナージ効果も加わり、気道クリアランスの改善につながる。
これはほんの一例だけど、ほかにも多くの方法がある。

側臥位っていっても、前傾側臥位や完全側臥位もあるし、あえての座位をすることもある。
体位により、肺炎も無気肺も改善が期待できる。
ものすごく、奥が深いのです、呼吸のためのポジショニング。



実際、呼吸に強い先輩が夜勤だと、翌朝のX線もデータも呼吸状態もまるで違っていた。まさに、1年生のときに言われた「看護師の腕の見せどころ」だと感じたし、「自分もできるようにならなきゃ」と、すごくあせった。

自分が患者さんや患者さんの家族ならば、もちろん技術のある看護師にみてもらいたい。

ICUを離れ訪問にいる今も、このときの経験は活かされている。
呼吸困難は死を連想するので、呼吸状態を良くすることは利用者さんのQOLにつながる。

訪問では、呼吸状態が不安定な利用者さんに対して、ゆっくりと時間をかけて呼吸ケア(ポジショニング)を行うことができる。正直、ICUと違ってモニターがないから不安になることがないといったら嘘になる。頼れるのは、自分の手の感覚と、耳と、目と、SpO2値、呼吸数。
でも、実際にやってきた経験から、これだけの情報があれば対応できる。

訪問なので安楽が一番の、無理のない範囲での介入とはなるけれど、それだけでもだいぶ違ってくる。
ICUだと数字として、訪問だと本人の表情と家族の安心感に顕著に表れる。


看護師が、薬を使わなくても症状を緩和させることができる。
これって、とても素敵なことですよね。

//バックナンバー//

#001 はじめての尿道カテーテル
#002 なにがなんだかわからないケンサチ
#003 大きいからポケットには到底入らない
#004 家族じゃないからこそできること
#005 経管栄養とは
特別編 在宅は1人の感染が命取り
#006 自分にできることをやろう
#007 戦いは前日から
#008 波形だけじゃないよ、心電図モニター
#009 大切な人


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fractale~satomi~
twitter:自由人ナースさとみ(@minisatominy

三度の飯よりお酒が大好きな飲兵衛看護師。仕事終わった瞬間からが本番だと思っている。仕事は真面目な自信あり。大学病院消化器外科3年、民間病院ICU2年、公立病院脳外科夜勤専従、訪問入浴、デイ、老健など1年の派遣生活を経て、メルボルンへ10ヶ月の看護留学。帰国後から訪問看護師として働き3年目。座右の銘は「笑う門には福来たる」。根からの明るい性格を最大限に利用し、日々楽しく訪問中。マルチポテンシャライトだから特技っていう特技はないけど、強いて言えばラポール形成が無駄に得意。今までクレームや担当変更がないのが密かな自慢。ちゃっかり保健師免許所有。 

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