//この連載シリーズ・バックナンバーを読む//
//そのほかの新型コロナウイルス感染症/感染対策関連記事を読む//

環境表面に付着しているSARS-CoV-2*がどのように人間に伝播するか、考えてみましょう。まず、COVID-19の患者がウイルスで汚染した手指でドアノブなどの高頻度接触面に触れ、その部分にウイルスを付着させます。その後別の人が触れることで、手指にウイルスが移動し、そのまま眼や鼻の粘膜に触れることによって感染します。したがって、「ウイルスが環境表面で生存できる期間」を知ることはきわめて重要です。

SARS-CoV-2が環境表面にどれだけ生存することができるかの研究結果があります1)。この報告によれば、「銅の上では4時間以内、ボール紙の上では24時間以内、ステンレスやプラスティックの上では最大3日生存できる」そうです。

したがって、ウイルスが付着してから数時間以内の環境表面に触れると、生きたウイルスが手指に付着する可能性があります。逆に、ウイルスは環境表面に3日以上生息できないであろうと推測されることから、患者の退院時は3日ほど部屋を放置しておき、ウイルスが死に絶えたところで清掃に入れば、清掃スタッフが感染する危険性はなくなります。

*:COVID-19の原因ウイルス

≪参考文献≫
1)Doremalen,NW.et al.Aerosol and surface stability of HCoV-19 (SARS-CoV-2) compared to SARS-CoV-1.
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.03.09.20033217v2.full.pdf

-----------------------------
矢野邦夫

浜松医療センター 副院長 兼 感染症内科部長
医学博士、浜松医科大学 臨床教授、産業医

1981年に名古屋大学医学部卒業。名古屋掖済会病院、名古屋第二赤十字病院、名古屋大学第一内科、米国フレッドハッチンソン癌研究所、浜松医療センターを経て米国ワシントン州立大学感染症科エイズ臨床短期留学。米国エイズトレーニングセンター臨床研修終了後、1997年に浜松医療センター感染症内科長、衛生管理室長に着任。2008年7月より同副院長(現職)。

インフェクションコントロールドクター、感染症専門医・指導医、抗菌化学療法指導医、血液専門医、日本輸血学会認定医、日本内科学会認定医、日本エイズ学会認定医・指導医、日本感染症学会、日本環境感染学会 評議員。

著書に、ねころんで読めるCDCガイドラインシリーズねころんで読める抗菌薬シリーズ(メディカ出版)、エビデンスに基づいた抗菌薬適正使用マニュアル(メディカ出版)など多数。



▼ 指導ツール集 公開中 ▼



提供:INFECTION CONTROL
https://www.medica.co.jp/m/infectioncontrol/




FitNs.