みなさん、こんにちは!
9回にわたって取り上げたポータブル吸引器に変わり、今回からのテーマは在宅酸素装置になります。
在宅酸素療法の歴史は長く、もう30年以上になるのではないでしょうか。
在宅酸素装置といえば酸素濃縮器というのが定番でしょう。
そして、在宅酸素装置は外に持ち運べないから、酸素ボンベも一緒に借りるというのも定番になります。
実はあまり在宅では使われていないかと思いますが、液体酸素装置というものもあります。こちらはまた改めて別の回で説明します。
それぞれの装置には、メリットやデメリットがあります。
まず、今回は、酸素濃縮器について説明していきましょう。
酸素濃縮器とはその名の通り、空気中にある酸素を集めて高濃度にするという装置です。
空気には約21%の酸素があり、その他はほとんどが窒素です。
空気が通過するところに酸素だけが通過するフィルターを挿入すれば、酸素のみが集まり高濃度にすることができます。
この方式を酸素富化膜方式と呼びます。
昔はこの方式を用いる酸素濃縮器が多かったのですが、この方式で作れる酸素濃度は30~40%ぐらいなのです。
この装置は割と安価に作れるので、一般の方でも家電量販店等で購入できますし、酸素バーでも使われています。
加湿ボトル(ぼこぼこするお水の中)に、ミントなどの匂いがするアロマ液を入れて、その酸素を吸うとリラックスできるのですね。
……って、筆者は酸素バーに行ったことはありませんので想像ですが(笑)
現在の在宅酸素療法は、100%酸素(純酸素)で行うことが通常なので、この方式の在宅酸素装置はほぼなくなりました。
私の知る限りでは、日本では1機種です。
この装置を使用するメリットを考えてみますと、次の2点となります。
①血液中の二酸化炭素が高くなっているⅡ型呼吸不全の軽症な患者さんで、酸素濃度の低い、40%の酸素を高流量に流して、安定させた酸素療法を行い、CO2ナルコーシスを防ぐ目的で使用してはどうかなと思っています(低流量の酸素投与は呼吸の変化によって吸入される酸素濃度が変化するのです)。
②NICUから退院する乳児で、在宅酸素療法を行うのは、肺の未熟性や人工呼吸によって起こる肺のダメージによって起こる慢性肺疾患(CLD:chronic lung disease)です。
人の肺は、3歳~8歳まで成長するといわれているので、慢性肺疾患で在宅酸素装置を使用して退院する乳児のほとんどは、成長するにつれて在宅酸素療法からウィーニング(離脱、使わなくなる)することができるのです。
肺の成長と共に酸素の流量を下げていくのですが、約100%の酸素濃縮器で下げられる酸素流量は、0.25L/分。
ここまで下げて、安定してきたら、在宅酸素療法からのウィーニングを考えていきますが、その方法として行われるのが、ON/OFF法です。
必要なときだけ酸素を使って様子をみるという方法になります。
でも、なかなかSpO2が安定しなくて、ON/OFF法が難しいという乳児に、低濃度である酸素富化膜方式の酸素濃縮器を使用すれば、低い濃度の酸素を安定的に投与できて、酸素が切れるかどうかを確かめるのに使えるのではと思っています。
今回は、あまり使用されていない酸素富化膜方式の酸素濃縮器について説明しました。
次回は、一番多く使用されている酸素濃縮器の構造などについて説明したいと思います。
KIDS CE ADVISORY代表。小児専門病院で35年間働き、出産から新生児、急性期、 慢性期、在宅、ターミナル期すべての子どもに関わった経験をもつ臨床工学技 士。メディカ出版のセミナー講師も務め『完全版 新生児・小児のME機器サポー トブック』などの著書がある。KIDS CE ADVISORYのHPは▶医療コンサルタント | Kids Ce Advisory
イラスト:八十田美也子 八代映子
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岐阜県総合医療センター 新生児内科 寺澤 大祐 監修
神奈川県立こども医療センター 新生児科(非常勤) 松井 晃 監修
神戸百年記念病院 麻酔集中治療部/尾﨑塾 尾﨑 孝平 監修
刊行:2022年8月
ISBN:978-4-8404-7888-5
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