みなさん、こんにちは。
第14回目は、液体酸素装置について説明しました。
今回は、装置のことと異なる内容になりますが、在宅酸素療法中の酸素濃度について説明します。
在宅酸素療法における酸素の投与は、経鼻酸素カニューレを用いることがほとんどでしょう。
時に、口呼吸が多い患者さんでは簡易酸素マスクを使用することもあると思いますが。
経鼻酸素カニューレや簡易酸素マスクを使用する酸素療法を「低流量システム」といいます。
低流量システムとは、患者さんが吸う換気量よりも少ない酸素量の投与を行い、大気と一緒に酸素を吸う方法です。
呼吸で吸う量(1回換気量)は毎回違います。
呼吸数が早くなったり、遅くなったり。
深くなったり、浅くなったり。
ですので、低流量システムの酸素療法での吸入酸素濃度は、常に変わり不安定です。
日本には日本呼吸器学会と日本呼吸ケア・リハビリテーション学会で作られた成人の酸素療法ガイドラインしかなく、そのガイドラインにおいて目安の酸素濃度が示されています(図1)
これは、500mL程度の1回換気量に対して1~6L/分の酸素を投与したときの酸素濃度です。
500mLを1秒間で吸うには、30L/分のスピードで空気を吸うと計算できます(図2-左)。
しかし、私たちの呼吸は30L /分を一定に1秒間吸うことはできず、実際には図2-右のような波形になります。
30L/分の空気を一定に1秒間吸ったとして、ここに5L/分の酸素を流したと考えます。
5L/分は100%の酸素、30L/分-5L/分=25L/分は大気中の21%の酸素を吸うことになります。
それぞれを掛け算して合算すると総酸素量が算出でき、その量を1回の換気量(500mL)で割ることで酸素濃度が計算できます(図3)。
しかし、小児の1回換気量は体重によって大きく異なり、それぞれの体重によって酸素濃度を考えなければなりません。
体重あたりの1回換気量はおおよそ10mL/Kgで小児も成人も変わりませんが、呼吸気時間が短いため、吸気の瞬間流速は低体重の患者さんであるほど速くなります。
図3で示した計算方法を計算式として筆者が作成したのが図4(上)になります。
この式での吸入酸素濃度(FIO2)は、100%がFIO2:1、21%がFIO2:0.21となります。
体重3Kgの患者さんが1L/分の酸素を吸ったときの酸素濃度を図4(上)の計算式に当てはめて計算していくと、図4(下)のようになり、酸素濃度は43%です。
このような計算を使って、体重と酸素流量の関係を表にしました(表1)。
低体重になるほど、同じ酸素流量でも急激に酸素濃度が上がっていることがわかります。
ですので、小児の酸素療法は、しっかりと酸素濃度を考えて投与する必要があります。
酸素濃度を知ることで、患者さんのアセスメント(状態が良いのか、悪いのか)をすることができます。
ぜひ、酸素濃度の計算を試みていただければと思います。
今回説明した計算式や表は、『小児のための「酸素療法実践ガイド」第2版』で解説しています。
アトムメディカル株式会社様のホームページより入手できますので、ぜひご覧ください。
●松井晃監修.小児のための酸素療法実践ガイド 第2版.アトムメディカル株式会社.
https://form.k3r.jp/atomed/syouniguide/
今回で、在宅酸素装置の選びかたは終了となります。
次回をお楽しみに。
KIDS CE ADVISORY代表。小児専門病院で35年間働き、出産から新生児、急性期、 慢性期、在宅、ターミナル期すべての子どもに関わった経験をもつ臨床工学技 士。メディカ出版のセミナー講師も務め『完全版 新生児・小児のME機器サポー トブック』などの著書がある。KIDS CE ADVISORYのHPは▶医療コンサルタント | Kids Ce Advisory
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