みなさん、こんにちは。
今回から、在宅医療における呼吸管理には必須のパルスオキシメータをテーマに進めていきます。
私は以前より、「パルスオキシメータは各家庭に1台という時代が来る」と考えていました。
体温計や血圧計と同じように、パルスオキシメータは日々の健康管理に必要な家庭用医療機器の1つになると考えていたのです。
そして、2020年から始まった新型コロナウイルス感染症の蔓延により、パルスオキシメータが一般家庭でも使われるようになったのです。
公的機関から貸し出されたパルスオキシメータもありますし、個人で購入された方も多かったのではないかと思います。
インターネットの通信販売で検索すると、多くのパルスオキシメータが販売されており、なんと1万円もしない金額で購入できるようになったのです。
また、Apple Watchには販売された2015年から、「パルスオキシメータが内蔵されている」という噂があり、内部構造を掲載したウェブサイトまでありました。実際にその時点ではパルスオキシメータのアプリケーションは内臓されておらず、2020年の秋に発売されたApple Watch Series 6より、パルスオキシメータの機能を有するApple Watchが発売されたという経緯があります。
また、スマートフォンのカメラ部分に指を当てることで、パルスオキシメータの機能が作動するアプリもダウンロードできるようになりました。その名も「パルスオキシメーター」というアプリですが、こちらはGalaxyでしか使用できないようです。
スマートフォンを使うものでは、2013年には、すでにマシモジャパン株式会社がiPhoneやiPadの30ピンポートに測定用センサーが繋がるケーブルを接続することで、パルスオキシメータとして使用できる「iSpO2®パーソナル」という名称で販売を始めています。
新型コロナウイルス感染症のニュースが毎日流れていたときには、パルスオキシメータを使用して呼吸不全の評価をすることの重要性が多く報道されていました。
医療者ではない方の多くがパルスオキシメータという医療機器を知り、「自分の家にもあったらいいな……」とか、「パルスオキシメータの数字が90を切ると危険なんだ……」ということを耳にするようになりました。
そして、多くの人がパルスオキシメータを使用するようになったことで、安価なパルスオキシメータが世の中に広まっていくとともに、測定値が変化しないなどが起こり、まったく役に立たないといった声が聞こえてくるようになりました。
ある公的機関(県や市)が多量に購入し、新型コロナウイルス肺炎に罹った方の家に配布したパルスオキシメータが、全然使えなかったということもあったようです。
そんな状況から、厚生労働省は、「承認・認証されたパルスオキシメータを購入したほうが良いですよ」というメッセージを伝えるため、ホームページに「承認・認証されたパルスオキシメータ」を掲示しています。
一覧の最後には、「ここに掲載された製品については、承認・認証されたパルスオキシメータのうち、独立行政法人医薬品医療機器総合機構のホームページにおいて添付文書が公開されている品目になります。なお、同機構ホームページにおいて添付文書が公開されていない品目もあるため、承認・認証されたパルスオキシメータは、ここに掲載されている品目に限るものではありません」という文章があります。
「承認・認証されたパルスオキシメータは他にもあるし、これを買ったらちゃんと測定できるよ」といった文章は書かれておらず、曖昧な掲載だな、と感じました。
あくまでも、購入するときの検討材料の1つとして使ってね、という位置づけなのでしょう。
ここで考えないといけないのが、パルスオキシメータをどの視点で使うのか、ということです。たとえば、日々の健康管理として使用するのか、それとも原疾患があって、いろいろな医療的ケアを行っている人が、正常値の範囲の維持を評価するために使用するものなのかというところから、パルスオキシメータを選択しなければいけないことです。
Apple Watchやスマートフォンのアプリなどは、日々の健康管理の評価に使用できるとされており、医療に使用できるというような記載はありません。
日々の健康管理であれば、安価なパルスオキシメータでも役に立つことはあるのではと考えます。
しかし、医療的ケアを必要とする患者さんの評価や、ケアを行う家族や介助者が安心して生活するためには、正しく測定ができ、その数値に信頼性があることや、たとえば、家族が寝ていても気が付ける警報を発してくれるような機能をしっかりと有している必要があるのです。
誰もがインターネットの通信販売のサイトに表示される、大量のパルスオキシメータのなかから選択して購入してしまうと、「失敗した~!」となり、お金を捨てることもなりかねないので慎重に選んでほしいと思います。
今回は、パルスオキシメータの初回として、誰もが簡単に入手できるパルスオキシメータの現状について説明しました。次回より、パルスオキシメータで何が測定できるのか、その数値の意味やパルスオキシメータの落とし穴などについて、説明していきたいと思っています。
KIDS CE ADVISORY代表。小児専門病院で35年間働き、出産から新生児、急性期、 慢性期、在宅、ターミナル期すべての子どもに関わった経験をもつ臨床工学技 士。メディカ出版のセミナー講師も務め『完全版 新生児・小児のME機器サポー トブック』などの著書がある。KIDS CE ADVISORYのHPは▶医療コンサルタント | Kids Ce Advisory
イラスト:八十田美也子
呼吸生理/換気モード/グラフィックー 3大苦手ポイントをコンパクト解説!
「赤ちゃんの肺の中で酸素がどんなふうに動いているのだろう」「動脈血酸素分圧90mmHgってどういう意味だろう」といった素朴な疑問から、むずかしく思われがちな換気モードやグラフィックモニタまでもカンタンに知ってもらおうというセミナーです。
▼プログラム 【収録時間:約130分】
#01 酸素と二酸化炭素 〜肺胞の中でどのように移動しているか?
#02 なぜ小さな赤ちゃんにとってPEEPが重要なのか?
#03 換気モードのお話〈前半〉 IMVとCMV・SIMV・A/C
#04 換気モードのお話〈後半〉 CPAP・PSV・HFO
#05 フロー波形を見て同調性を極めよう!
#06 グラフィックモニタとトラブル対応
#07 ファイナルテスト 〜この波形、どう考える?
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著者:
一般社団法人日本呼吸療法医学会 小児在宅人工呼吸検討委員会 編著
岐阜県総合医療センター 新生児内科 寺澤 大祐 監修
神奈川県立こども医療センター 新生児科(非常勤) 松井 晃 監修
神戸百年記念病院 麻酔集中治療部/尾﨑塾 尾﨑 孝平 監修
定価:5,500円(税込)
刊行:2022年8月
ISBN:978-4-8404-7888-5
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