2022年7月16日(土)に開催された第3回のテーマは、『パルスオキシメーター製造企業さんと呼吸管理の困りごとを話そう!』でした。

今回の参加お申し込みは、定員マックスの90名になりました。
新型コロナウイルスによって、パルスオキシメーターが個人宅で使用されるようになりましたが、小児の在宅医療においてはまだまだ改善の余地があるとお考えの方が多くおられるのだと思いました。

今回ご参加いただいたパルスオキシメーターの製造企業は、日本光電株式会社さんです。
国産の医療機器製企業の老舗で、パルスオキシメーターを開発した青柳卓雄氏がおられた企業です。のちほどのミニレクチャーで、詳しくお話しいたします。

研究会は下記(図1)のスケジュールで進行しました。



今回の司会は、重症児デイサービスkokoro代表の紺野昌代さん
さすが場慣れした貫禄を感じました。

1.開会の挨拶は、はるたか会あおぞら診療所墨田 院長の戸谷 剛先生です。
「研究会の発足の経緯と、参加されたみなさんと良いアイデアが生まれること期待しています」というお話しがありました。
研修会の発足の経緯は、以前のメディカLIBRARYの記事をお読みください。

2.ミニレクチャーは『正しく使おう! パルスオキシメーターの基本』という題で、岩手病院 臨床工学技士の及川秋沙さんからレクチャーしていただきました。
パルスオキシメーターはさまざまな場所で使用されますが、近年では新型コロナウイルスの蔓延により、在宅療養のために自治体から配布されたり、個人で購入されたりと使用される場面が増え、非常に身近な医療機器となりました。

パルスオキシメーターは、指にセンサーを挟むだけで痛みを伴わずに測定できる医療機器です。
しかし、このような医療機器だからこそしっかりと理解して使用することが大事なので、このレクチャーで復習してもらえればと思います。

パルスオキシメーターは、何と日本で生まれました。
この開発をされたのは、今回ご参加いただいた日本光電株式会社の青柳卓雄氏です。

青柳氏は「患者モニタリングの究極の姿は治療の自動化であり、その理想に近づくためには、無侵襲連続測定の開発が重要である」と唱え、研究に邁進しパルスオキシメーターの開発にいたりました。

その当時、アメリカで多発していた麻酔管理中の医療事故が、パルスオキシメーターを使用することによって減少したことで、その有用性に注目が集まりました。採血をせずに、非侵襲的でかつ連続的に酸素化能を評価ができることから、今も世界中で多くの人を助けています。

パルスオキシメーターの測定原理は、センサーの赤い光が出ている方が発光部であり、660nmの波長の赤色光と940nmの波長の赤外光を発しています。発光部の反対側には、発光部から出された光を受ける受光部があります。

赤色光は、酸素と結合していない脱酸素化ヘモグロビンを多く吸収し、赤外光は酸素と結合している酸素化ヘモグロビンを多く吸収するという特徴から、この光の吸光度を利用しています。

動脈血酸素飽和度を測定するには、皮膚や筋肉、静脈などの脈動のない、変化しない成分を除去し、動脈圧の拍動成分だけを抽出して、その成分の吸光度曲線を描いて動脈血酸素飽和度を算出します。

パルスオキシメーターには心拍数を表示するとともに、拍動の変化を波形化した脈波を表示する機能もありますが、この心拍数や脈波が正常に表示されていない場合には、SpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)は正確ではなくなります。

パルスオキシメーターでは、低酸素血症や酸素が過剰投与されていないかを知ることができます(図2)。



SpO2とPaO2(動脈血酸素分圧)の関係を表す、酸素解離曲線があります。
SpO2が90%のとき、PaO2は60mmHgを示しますが、PaO2が60mmHg未満になるとSpO2が急激に低下していきます。SpO2を90%以上に維持しましょうと言われるのはこのためです。

また、SpO2が100%を示していると、「いいね~」とか「100点満点だね~」と言う声を聞きます。しかし、SpO2が100%ではPaO2が異常に高い状態になっていることがあり、過剰な酸素投与がされていることになります。


酸素の過剰投与は、未熟児網膜症や酸素毒性、吸収性無気肺の原因になるため、病態にもよりますが、SpO2は96%~98%を目安に維持するのが良いでしょう。

その他、リハビリ中の運動療法の指標になったり、人工呼吸管理中では機器や呼吸器回路の異常を早期に見つけるため、パルスオキシメーターの併用が推奨されています。

正しく測定するためのセンサーの装着方法は、以下の通りです。
・センサーの発行部と受光部が向かい合うように平行になること(図3
・受光部は皮膚の柔らかい部分に装着する(外乱光を防ぐ)
・適したセンサーのサイズを選ぶ
・きつく巻きつけない
➡血管の圧迫➡脈波が取れない
 ➡末梢循環障害や皮膚障害を起こす
 ➡センサーの温度上昇で局所的な発赤や低温火傷
・センサーのコードは体に沿わせる
・数時間ごとの装着部の変更



パルスオキシメーターは外乱光の影響を受けると測定ができなくなったり、正確なSpO2が出なくなります。直射日光や蛍光灯などの外乱光の影響を受けないように、タオルなどで遮光することが必要です。

パルスオキシメーターは体動に弱く、静脈血が拍動したようになると動脈血として想定してしまい低い値を示すことになります。
また、手足に冷感がある末梢循環不全では脈波が小さくなるため、手足を温めたりする必要があります。

以上、及川さんのミニレクチャーをまとめました。多くの方々から、「わからずに使ってた~」「ただセンサーをつければいいだけじゃないのね」という声が聞かれました。基本的なレクチャーでしたが、しっかりとまとまっており、多くの方のお役に立つお話しだったと思います。

研究会PART②では、日本光電株式会社さんの『3.パルスオキシメーター製造会社さんからのプレゼン』以降についてご報告いたします。



新型コロナ病棟ナース戦記

松井 晃
KIDS CE ADVISORY代表。小児専門病院で35年間働き、出産から新生児、急性期、 慢性期、在宅、ターミナル期すべての子どもに関わった経験をもつ臨床工学技士。メディカ出版のセミナー講師も務め『完全版 新生児・小児のME機器サポートブック』などの著書がある。KIDS CE ADVISORYのHPは▶医療コンサルタント | Kids Ce Advisory