若手看護師からは「看護記録をもっと効率化したい」といった声が聞かれます。そのような業務効率化に積極的な若手看護師は多いのではないでしょうか。その一方で、職場での人間関係には消極的な面が見られます。なぜ、周りから若手看護師はそのように見えてしまうのか、3回に分けて考えていきたいと思います。
若手看護師がICT導入や業務効率化には前向きである一方、人間関係の調整や対話には慎重に見える現象は、しばしば「対人関係が苦手な世代だ」「コミュニケーション能力が低い」といった説明で語られます。
しかし、この理解は、若年層が置かれている社会的・発達的文脈を十分に踏まえたものとは言いにくいです。
まず前提として確認しておきたいのは、現在の若手層にとってデジタル技術は、「信頼できるかどうかを判断する対象」ではなく、生活環境そのものとして存在しているという点です。
彼らは、情報収集、連絡、学習、評価、比較、記録といった行為を、幼少期から一貫してデジタル環境のなかで行ってきた世代です。
プレンスキーが示したように、デジタル技術を後天的に獲得した世代と、最初からデジタル環境のなかで育った世代とでは、情報処理や学習の前提が異なります1)。
若手がICTや効率化に抵抗を示さないのは、変化を好むからでも、新しいものに強いからでもなく、それが「特別な変化」として経験されていないからなのです。
むしろ、若手看護師が働く病院という職場はデジタルネイティブな彼らからすれば、何世代も遅れています。
つまり、日常生活のほうが便利であり、効率や生産性が重要視される職場のほうが技術が遅れているという不均衡の中にいると考えたほうが自然なのです。
この視点に立つと、ICT導入に積極的であることと、人間関係に慎重であることは矛盾しません。
むしろ両者は、同じ適応論理の異なる表れです。
ICTや業務効率化は、ルールや手順が明示されやすく、評価基準も比較的可視化されている領域です。
実際に、厚生労働省も医療現場におけるDXの推進を掲げています2)。
一方、人間関係の調整や対話は、正解が明文化されず、行為の結果が人格評価と結びつきやすい領域です。
若手が前者に積極的で、後者に慎重になるのは、能力や意欲の問題ではなく、予測可能性と回復可能性の差に基づく合理的な行動選択として理解できるのです。
引用・参考文献
1)Marc Prensky. "Digital Natives, Digital Immigrants Part 1", On the Horizon, 9(5),2001, 1-6
2)厚生労働省.医療DXについて.https://www.mhlw.go.jp/stf/iryoudx.html,(2026年5月閲覧).
次回はなぜ若手看護師が人間関係に慎重になるのかについて考えたいと思います。
※本記事は『なぜ、看護師は勤務表を何度も確認するのか』(メディカ出版)の内容を一部抜粋して再構成したものです。
●著者
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