看護師クリエイティブプロジェクト「fractale」のみなさんが、毎回テーマに沿ってそれぞれの看護の足跡を残していく本企画。

「学びかたを学ぶことで看護師として生きる選択肢をふやしていく」ことをコンセプトに立ち上げたメディア「メディカLIBRARY」のスタッフが、毎回、フラクタルのみなさんにテーマを伝えています。

今回のテーマは「はじめての心電図」です。

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『あきよしくみこ……あ(赤)、き(黄)、く(黒)、み(緑)……あ(赤)、き(黄)、み(緑)、ちゃ(茶)んの、ぶら(黒)は、むらさき(紫)……』

心筋梗塞の入院がくる。

カテーテル治療が終了すると、ストレッチャーでカテーテル室へお迎え。
救命救急センターに入室すると、戦いが始まるのだ。
なんの戦い? って、そりゃ、入室時やること奪い合い合戦だ。
ある者はモニターを装着、またある者は記録、ある者はご家族への入院オリエンテーション、そしてある者は、入室時の12誘導心電図を実施する。

今日は事前に『心電図、わたし、やらせてください!』と立候補しておいた。
冬本番間近、これから本格的な心筋梗塞のシーズンが到来するから、早めに自立しておいたほうがいいよ、とアドバイスを受けてのことだった。

電極を貼る順番は、語呂合わせで完璧だ。
国試の勉強していて覚えていたインパクトの大きすぎる語呂合わせを、何度か口の中で反芻させた。

問題は、つける位置だ。
もちろん、手足につける四肢誘導はすぐクリアできるだろう。
第4肋間胸骨右縁。
はたしてすぐに見付けられるだろうか。
先輩からは、鎖骨の下のくぼみを探すといいよ、とアドバイスを受けた。
鎖骨の下のくぼみが第1肋間になるから、指を滑らせていき数えれば第4肋間に到達するものらしい。

が、しかし。

事前に情報収集したところ、患者さんは糖尿病の既往歴がある、BMI30の女性とのことだった。
けっこう難しそうだなぁ、と思った。
やせて肋骨が見えているご高齢の方であれば難易度は下がるかもしれない。

入室してきた。
案の定、臥床した状態でもお肉が邪魔をして肋骨も胸骨もわからない。

うーん、うーん、といいながら胸のあたりをまさぐっていた私に見かねて、心電図、経皮的酸素飽和度のモニターをつけて血圧を測り終えた先輩が一緒に探しながら場所を教えてくれた。

電極をつける位置も、色も正解したが、患者さんの身体から探せない。
こんなトラップもあるとは。

『たぶん、Ⅱ、Ⅲ、aVfでST上がってるよ』
『え? なんでですか? ほんとだ!』

12誘導心電図のトーシロは、先輩の発言がまるで魔法みたいに思えた。

『PCI治療をしてきたのが、#1って言ってたからね。機序はおいおい勉強したらいいよ。のぞみ氏がさっきブツブツ言いながら見てた本に書いてあるけど!』

マジすか。
そんなことまでわかるんだ。

『徐脈に気を付けてね~! それもなんでかその本に載ってるからね~!』

そういって先輩は自分の受け持ち患者の元へ戻っていった。

奥が深すぎる心電図道にはじめて触れた瞬間。

//バックナンバー//

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#002 RED
#003 Dear my lovely memo
#004 BE THERE
#005 憂いのTubing
特別編 Survive
#006 EMERGENCY DAY
#007 Working All Night


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看護師クリエイティブプロジェクトFractaleのエモ担当。なぜか気が付いたら在宅沼に片足突っ込んでいた7年目看護師。外科・脳外科病棟→救命救急センター→集中治療室→2020年2月から在宅。新米訪問看護師。輸液ポンプ、シリンジポンプのコード整理の特技が活かせなくなってしまった。元葬儀屋、病院栄養科勤務経験のある社会人から看護師パターンのやつ。ケアの原点を在宅に感じて、改めて生と死を見つめ直そうとしている。趣味は筋トレと読書とロードバイクと音楽鑑賞。B'zに対する並々ならぬ執着心がチャームポイント。 好きなトレーニングはレッグエクステンション。


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