「カンファレンスや話し合いをよりよくするために、「ファシリテーション」を学ぶ方が増えてきています。しかし、本を読んではみたけれど、なかなかうまくいかない…と感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回の講座に、そうした日頃の具体的なお困りごとをお持ち寄りください。「ナーシングビジネス」2022年夏季増刊『ファシリテーション再入門』を読まれている方もそうでない方も、何かしらの解決の糸口をお持ち帰りいただけるよう準備しています」(浦山)

このたびメディカのセミナーリアルタイム配信『ファシリテーション、何はともあれはじめてみよう!』をリリースいたしました。

今回はセミナーリリースを記念して、「ナーシングビジネス」2022年夏季増刊『ファシリテーション再入門』の一部を特別に公開いたします。

意外と多い? 「ファシリテーター」という役割に対する思い込み

あなたはどんなところにファシリテーションを活用したいですか?
ファシリテーションとはコミュニケーションスキルのひとつです。みなさんはこのコミュニケーションスキルを使って、どんな組織やチームを作りたいと思っていますか?

ときどき、ファシリテーションを使うとなんでも早く思い通りに物事が決められると思っていたのに案外難航する、決まってもそれがなかなか長続きしない…なぜですか? という声をお聞きします。まずお伝えしておきたいのは、ファシリテーションは話し合いを企画者の思うように進めることができる魔法のスキルではないということです。全員の声を聞き合う、小さな声も大切に扱うという意味では、ときに丁寧にプロセスを紡ぐために時間がかかったりすることもあります。また一回の話し合いを効果的にするための道具というだけではなく、組織内のネゴシエーションも図りながら組織開発に向かっていくような場面や、チーム内の業務改善といったよりよいプロジェクトを進めていくというようなコーディネーションとよばれる広義の部分までを含めた幅広い要素も含んでいます。


コミュニケーションで大切なこと――「伝える」と「聴く」
さて、みなさんの現場では、定期的に目標管理面接を実施されていると思います。その場面を思い出してみてください。実際に面談を受けた体験も思い出してもらえるといいかもしれません。面接にはどのくらいの時間をかけていて、面談の主役であるスタッフはどのくらい話せていましたか? 話を聴かせてもらう立場のみなさん方はどのくらい話をしましたか? どんな流れで話をしましたか? そもそもその面接の目的はなんだったのでしょうか?

まずコミュニケーションは、バランスが大切です。「よく話す」と「よく聴く」は大事な要素だと言われますが、誰かがたくさん話すと誰かが話せなくなると言う側面を持っています。時間は誰にも平等なので、自分の話をしっかりとするということは、相手には黙って聴いてもらう時間が必要になるということです。互いに聴きあうためには、「よく聴きあい、短く話す」ことが大切なルールになります。

先ほどの目標管理面接で言えば、ここでの主役はスタッフです。つまり管理者がたくさん話す時間ではなく、スタッフがたくさん話せるように場を作ることがポイントになります。スタッフがここまでの状況を思い出し、対話の中で思考を深めていき、自分がやりたいと思うことが言語化されたり、ふりかえることでこれからの計画を再度見直したりするための時間なのです。ときどき、これが管理者の思いを話す場になっていたり、管理者からアドバイスをしたり、スタッフをチェックしたりするような場になっていることがあります。自律したスタッフを育てたいと言いつつ、アドバイスや指示を重ねてしまうことで、相手が自分で考えて判断し、選択をする機会を奪っていないかよく考えてみてください

アドバイスがいらないと言っているのではなく、自分のことをしっかりと認識するための対話の時間がないと、せっかくのアドバイスも受け取ることができないからです。そして面談の場では、まずこの場の目的が何なのか? 自分がどういう役割としてここにいるのかを相手にわかりやすい言葉で伝えておくことが重要です。

この伝えるということを、丁寧に相手に手渡せるようにしておきましょう。よく「スタッフには何回も同じことを伝えているのに、なかなかわかってくれないんですよ」という声を聞きます。たしかに何回も言っているのかもしれません。でも、相手に伝わるような言葉や手渡し方になっていないのではないでしょうか?

相手に伝えるというのは行為であり、伝わるというのがその成果になります(図 1)。成果のない行為は意味がないので、しっかり伝わるように伝える側が “伝え方”を相手に合わせる必要があります。また、伝える側がどういう立ち位置で伝えているのかということも意識します。「相手がわかっているはず」ではなく、立ち位置に自覚的になりましょう。師長という立ち位置なのか、同 じ看護師という立ち位置なのか、あるいは家族という目線なのかと言った感じです。主語をはっきりとさせるということで、相手だけではなく自分自身の伝え方も変わります。よく、より伝わりやすくするために心がけることとしてお伝えするのは、小学校6年生か中学校1年生にわかるような言葉を使ってくださいということです。



抽象的な言葉や、自分しかわからないような表現をしていることはないですか? 自分の中では言葉と認識がつながっているため気づきにくいところです。「伝える」「指示する」ことを、インストラクションと表現します。このインストラクションが、相手にわかりやすい言葉や言い方になっていると、指示や意図が正確に伝わります。

うまく伝わるようにするためのコミュニケーションのポイントは、次の3つです(表 1)。

1.シンプルに伝える
伝えたいことは、相手にはっきりと伝わる言葉で余計な修飾をつけずにシンプルにするのが大切です。内容を盛り込みすぎず、筋立ててはっきりと伝えます。伝えるスピードは相手に合わせます。

2.短く話す
言葉の中にたくさんの言葉を入れ込まないで「短く話す」ことを心がけます。よく結論から先に伝えましょうと言われることもありますが、これはなかなか難しいことです。話しながら考えることもありますし、結論から話すことが伝わりやすいことばかりとも限りません。そもそも話が長い人が短くするというのは、案外難しいのです。「私の話は長いな」と思う方は、そのことに自覚的でいてください。話が長くなる人は、話しているうちに話の落としどころに迷ったり、そもそも自分が何を話しているのかがわからなくなってしまうこともあります。そんなとき、「ちょっと長く話しているな」という自覚があれば、自分の話を止めることができます。「…とここまで少し長く話してしまいました」と伝え、少し間を空けます。考える時間を取った上で、「ここでお伝えしたかったことは…」というように、3 項目程度の短文でまとめて伝えると、自分自身でも話したいことを整理できます。何よりも、聞いている人にわかりやすく、印象に残りやすくなります

3.強弱(緩急)をつける
一本調子で話していると、どこが大切なのかが伝わりにくいものです。声に強弱(緩急)をつけると、話にメリハリが出ます。早口にならず安定した話し方を心がけつつ、伝えたい内容について話す際は、声を大きめにしたり、間をおくことで強弱(緩急)がついて伝えたい部分を強調することができます。




申し込み受付は2023年1月27日(金)昼12時まで!

▼プログラム
本編 9:30~12:00(予定)
・オリエンテーション/書いて知り合う時間
・「現場あるある」「お悩み」を共有しませんか?
・ファシリテーションの意味
・押さえておきたいファシリテーション4つのスキル
  場作り/グループサイズ/問いとワークなどの指示の伝え方/可視化の工夫
・質問コーナー
・講義のまとめと振り返り

◆本編開始前 9:00~9:20「オンライン講座に参加しやすくするコツ」(自由参加)
※先生に質問したいことがある方はZoom参加登録時のアンケートにご記入ください。

受講料:1,000円(税込)

受講申し込みはコチラから


▼講師
浦山 絵里
ひとづくり工房esuco(ゑすこ)代表/看護師/ナースファシリテーター
大枝 奈美
アトリエウェイブ代表/Be-Nature School ファシリテーション講座 講師

////// 書籍案内 //////

ファシリに自信がもてない看護管理者のためのファシリテーション再入門
ファシリに自信がもてない看護管理者のためのファシリテーション再入門

効率的に進行するためのコツがつかめる!
ファシリテーションがうまくいかない背景にある「失敗しがちな部分」「わかりにくい箇所」に焦点を当て、スムーズに実施するためのコツとノウハウを紹介する。会議が活発になる板書のテクニックも解説。ファシリテーションに対する苦手意識を払拭できる一冊。

定価:3,080円(税込)
刊行:2022年7月
ISBN:978-4-8404-7768-0

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