「オペナーシング」誌をはじめ、メディカのセミナー講師として、手術室看護師の教育に長年携わっておられる“さぬちゃん先生”によるWEB講義『周術期の薬剤と患者状態 これだけ編』がこのたびリリースされました。講師の讃岐美智義 先生(呉医療センター・中国がんセンター 麻酔科)にお話をお伺いいたしました。

――今回のWEB講義『周術期の薬剤と患者状態 これだけ編』ですが、「周術期の薬剤」について勉強するときに、まずどんなことが大切でしょうか?

薬剤の名前を覚えるときは、どんな場面で使うのか、何のために使うのかをその理由とともに勉強することです。やみくもに丸暗記しても役に立ちません。

例えば、鎮痛薬です。鎮痛薬といっても、「麻酔に使うのか」「術後に使うのか」ということですね。

レミフェンタニルは全身麻酔中にしか使えないが、アセトアミノフェンは全身麻酔中には使えずに、術後痛に使いますよね。なぜでしょうか。レミフェンタニルは鎮痛作用が最強であり、投与量や速度を速めると、呼吸が停止し、人工呼吸が必要になるからです。それ以外にも、投与速度の調節が激烈に難しいからです。とても病棟や外来診療で使える代物ではありません。

逆にアセトアミノフェンは、手術侵襲に対しては作用が弱すぎて、役に立ちません。しかし、術後痛に使うには呼吸などには影響を及ぼしにくく、投与法も比較的やさしいのです。

――快適で安全な術後のために「術後3大苦痛」(術後疼痛、シバリング、PONV)の機序、対処法についてもわかりやすくご解説いただいております。手術室ナースの役割も大きいところかと思いますが……、どのようにお考えでしょうか?

どんなに元気な若い患者さんでも、手術後には痛みや寒気やシバリング(ふるえ)、PONV(術後のおう気・おう吐)は起きる可能性がありますし、起きればとても辛いことばかりです。

「いたい、さむい、きもちわるい」は、看護師の皆さんが、術後にもっとも対処しなければならない苦痛だと考えています。これは、術中あるいは術前から対策を取っておくことが必要です。

「痛い」に関しては、術中から術後に痛みが少なくなるような手術や麻酔を提供することはもちろんですが、手術室看護師ができることがたくさんあります。 「シバリング」は痛みを増強しますし、シバリングの原因の大半は体温低下にあります。体温低下を引き起こさないような手術室の空調の調節や術前加温、術中の体温に関するケアが大切です。 「PONV」に関しては、患者さんの素因(4つの因子)を知ることやその対策も術前・術中から準備できるはずです。

術後3大苦痛を、まず認識していただくこと、その対応策や準備に関して知っておくことは手術室看護師だけではなく病棟や外来看護師にも必要だと考えています。ここをしっかり押さえて、“できる看護師”になりましょう。

――春になれば新しい手術室ナースが入職されるかと思います。讃岐先生は新人スタッフに普段どんな声をかけておられますか?

まずは、仕事に慣れることが必要です。はじめてのことばかりで、辛いことも多いですが、ここを乗り越えないと次のステップにはすすめません。わからないことは、わからないと指導者に伝えて指示を仰ぎましょう。また、わからないことを、わからないままにしないように知識をつけていくことも大切です。
報告、連絡、相談(ホウレンソウ)を欠かさず、まずは、どんなことでも相談してください。

――メディカLIBRARYは「学び方を学ぶ、選択肢をふやす」がコンセプトなのですが、私たちのこれからの「学び方」「選択肢」について思うところございましたら、お聴かせください。

 「学び方を学ぶ」というのは、学びの基本だと思います。昔は正しかった知識も、今は正しくないことがあります。知っていることが、正しいと信じていても「正しくなくなっている」ことがあります。それに対して、つねに学ぶことで、知識を正すことができます。大切なのは、「自分の考え方を新しくする」姿勢だと思います。

 「選択肢をふやす」というのは、使える知識を増やすことだと考えています。選択肢となれるのは、“使える知識”だけです。試験の選択肢の正しい答えを選ぶだけの学びではだめで、実際に使うことができるモノとして身につけることが「選択肢をふやす」の意味だと思います。

――最後に受講者へメッセージをお願いします!

WEB講義『周術期の薬剤と患者状態 これだけ編』は、患者状態と薬剤投与の背景を理解しながら周術期薬剤を勉強します。知らなかったことや、初めて聞いた内容もあるかもしれません。

薬剤の勉強は、薬剤名や作用・副作用などを丸暗記するだけでは、実臨床には役立たないのです。薬剤を使うべき背景や患者状態を一緒に学ぶことで、これまで理解できなかったことが理解できるようになると思います。
カープのユニフォーム仕立てのスクラブを着たさぬちゃんが解説します。ぜひ、久しぶりの讃岐節に浸かってください。

讃岐美智義
独立行政法人国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター 中央手術部長・麻酔科科長





『さぬちゃん先生の周術期の薬剤と患者状態 これだけ編』
どんな患者さんに、どういう状況で薬を使うの?

▼プログラム
1)薬は「使うときの状況」を知らないとダメ!
2)全身麻酔とセデーション
3)筋弛緩薬
4)昇圧薬と降圧薬
5)快適で安全な術後のための病棟ナース必須知識


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